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zoom RSS 『藤田嗣治 本のしごと』

<<   作成日時 : 2011/07/08 00:03   >>

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 一昨年の12月に『藤田嗣治 手しごとの家』を紹介したが、それにつながる藤田嗣治(ふじた つぐはる)の“本に関わる仕事”をまとめた本が出た。
 『藤田嗣治 本のしごと』である。著者は、前の本と同じで、林 洋子さんである。
 紹介してみようと思う。

 カバー裏に、この本の内容を簡略にまとめてあるので、引用してみる。

<この本では、画家・藤田嗣治が八十年を超える生涯のなかで、母国日本や第二の祖国となったフランスなどで関わった「本のしごと」― 書籍や雑誌を対象とした表紙絵や挿絵 ― から約九十冊を、新たに公開された彼の旧蔵書を核として、国内の公共図書館、美術館や個人のコレクションを交えて紹介します。藤田にとって本のしごとは、著者、編集者、デザイナーらとの協働という点で、絵画制作とは一線を画すものですが、それゆえにかえってくつろいだ柔軟性といまなお新鮮な独創性を見せる作例が生まれたのでしょう。
 パリ時代のオリジナル版画入り豪華本から、日本でのモダンな女性誌や戦時下の出版まで、そして愛妻のために見返しに少女像を描いた一冊など、貴重な図版を二〇〇点以上収録。画家が遺した美しい本の世界をめぐります。>

 目次は次のようになっている。

はじめに
序曲――藤田の装幀観と、ある奇書
第一幕 美しい本――愛書都市パリ、挿絵本との出会い
 パリでの挿絵本、「豪華版(エディション・デュ・リュクス)」との出会い/はじめての「本のしごと」/東方的(オリエンタル)な物語の演出――木版画の魅力/パリの新世代書き手との接点――銅版画の習得/愛(エロス)の表現
 間奏曲T 前奏としての絵手紙
第二幕 記憶のなかの日本―― 一九二〇年代パリの寵児
 パリでの日本美術展という始まり/日本の昔噺に取り組む/「駐日フランス大使」ポール・クローデルの三冊/ジャポニスム小説――ピエール・ロティ、トマ・ローカ/キク・ヤマタ――「巴里文壇に於ける日本の花形」/日本の詩歌(ハイカイ)への関心にこたえて/「ジャン・コクトーの日本訪問」への追憶
 間奏曲U 「画家にして版画家(パントル・グラヴール)」としての藤田
幕 間 洋行のエクゾティスム―― 一九三〇年代初頭の中南米の記憶
 「新世界」への旅/エクゾティックなまなざし
 間奏曲V 画家の本棚――旧蔵書を解剖する
第三幕 記憶のなかのフランス―― 一九三〇年代日本のニーズ
 「巴里の横顔」という始まり/東京でのパリ――巴里会、『婦人画法』、石黒敬七/婦人雑誌から高級グラフ雑誌へ/『腕(ブラ)一本』という頂点/日中戦争勃発という転換点――「対外文化宣伝」への関与
 間奏曲W やっぱり、猫!
第四幕 洋行文士と藤田――戦時下の日本での協働、そして
 小山内薫の従弟として/日中戦争取材での接点――吉屋信子、菊池寛、林芙美子/太平洋戦争下の出版――『随筆集 地を泳ぐ』と『藤田嗣治画集』/終戦から離日まで――回想するパリ/紙の上でのテキストとイメージの「たたかい」
終 曲――本という小さな展示空間で
おわりに
藤田嗣治略年譜
主要参考文献
本書で触れた<本のしごと>書誌データ

 藤田嗣治は独特の乳白色の色使いの絵画で有名だが、本の装幀に関しては専門教育を受けたわけでもなく、職業として装幀に携わったわけでもない。
 しかし、その才能を本作りの専門家は放ってはおかなかったのだろう。
 戦前のパリでの「本のしごと」を中心に、戦中・戦後の時代の流れに翻弄されながらも続けていた「本のしごと」を、埋もれていた貴重な資料も含めて、わかりやすく興味深くまとめてある。

 「終曲」で著者は、藤田嗣治の本に関わる仕事と本書について、こんなふうに書いている。

<前書『藤田嗣治 手しごとの家』(集英社新書)では、アトリエで本業としての絵画制作に取り組むと同時に、自分や妻のための裁縫や大工仕事など、さまざまな手しごとに没入していた画家の姿を描きだしました。こうした「手しごと」は基本的に私的な用途のための、アマチュアリズムに徹したものでした。その意味では、本書で取りあげた藤田の「本のしごと」は、職業としての絵画と、私的で無償の「手しごと」のあいだに位置する、あいまいなものに思えるかもしれません。確かに、彼一人の発想や手わざで完結したものではなく、著書や出版社などとの協働作業であり、そこには相応の責任と制約、そして報酬が伴っていたはずです。
 これまで、藤田のブック・ワークといえば、二〇年代と戦後のパリでの挿絵本で語られがちでした。それは「それ以外」が知られなかったわけではなく、「それ以外」=三〇年代から四〇年代の日本での「本のしごと」が、絵画の売れない時期の小金稼ぎと、一部に否定的にとらえられ、その後、その存在すら忘却されてしまったためかもしれません。
(中略)
 移動する、持ち運び可能な本という「展示空間」のなかに納まる、小さな美術品としての「本のしごと」。美術作品が、美術館や画廊という「展示空間」=媒体(メディア)を介することで鑑賞者に対面するのと等しく、「テキスト」も「挿絵」も「本」というメディアを通じて読者に伝わるものです。ゆえに、画家が描いたイメージも、本という形態をとることで、無色透明ではない、色というか、ニュアンスがついてしまう。藤田はそのコラボレーションの妙を、パリであれ、日本であれ心から楽しみ、そしてその成果たる本を大切にしていたのです。日仏二国の愛書文化に通じ、装幀を実践した稀有(けう)なる存在といえるでしょう。
 「本のしごと」は、「絵画」と「手しごと」とならぶ、藤田という創作者の重要な構成要素でした。「画家」を天命と信じた彼にとって、「絵画」が主旋律だったことは確かであれ、それを豊饒(ほうじょう)にしたのは「本のしごと」も含めた「手しごと」だったのです。>


<今日のお薦め本>
『藤田嗣治 本のしごと』 林 洋子 著、集英社新書ビジュアル版、1260円、1106.22. 第一刷発行

<後記>藤田さんは数々の挿絵や表紙絵などを描いていますが、本全体の装幀にも関わったものがあるようです。
 でも今では、どの本でどの程度関わったのかはわからないものが多いということです。
 とはいえ、パリでも日本でも彼の絵を本に載せたいという要望は多かったようで、多種多様な絵や版画などはやはりみごとなものです。
 藤田さんの絵画とはひと味違った“本のしごと”が楽しめる本です。


藤田嗣治 本のしごと (集英社新書<ヴィジュアル版>)
集英社
2011-06-17
林 洋子

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
どんな絵を描かれるのでしょう!
とっても、興味深いです。
早速、読んでみたくなりました。
本当に本がお好きですね^^
いつも、勉強になる本の紹介をして頂いて
有難うごさいます。
梶芽衣子さんのCDですけど、
買っちゃいました^^ププ
ケイ*
2011/07/08 01:05
藤田嗣治???誰??でしたが、レオナルド藤田のことでしたね。
長いあいだ謎だったあの独特の乳白色の原料が最近わかったのをご存知ですか?
シッカーロールだそうです。ベビーパウダー。赤ちゃんのオムツかぶれ防止にはたくあの白い粉です。
油絵絵具でもないし水彩でもない、日本画の材料でも・・・・まさかベビーパウダーとは!
絵具のそばにシッカーロールの容器がおいてある写真がでてきたそうです。
ねこのひげ
2011/07/08 05:04
☆ ケイ*さん、本に描かれた絵はもちろんいいですが、版画が意外と面白かったです。本屋で立ち読みでもいいから、一度この本を見てください(^^ゞ。
 本は大好きです。活字中毒だと思います(~_~)。紹介した本が、何かの参考になれば嬉しいです(^^ゞ。
 梶芽依子さんのCD、買っちゃいましたか。お気に召したかどうかわかりませんが、楽しんでください(~_~)。
遊哉
2011/07/08 09:16
☆ ねこのひげ さん、はい、戦後フランスに再度渡ってフランス国籍を取得してからは、レオナルド藤田を名乗ってたんですね。
 そのシッカロールの話、新聞で読みました。シッカロールの容器の置いてある写真は、乳白色の絵を描く以前のものらしいですが、材料として使っていたようですね。
 油絵具に練りこんだものか、振りつけたものかまだ不明のようですが、面白いですね。いろいろ工夫して、シッカロールを使うことにたどり着いたんだと思います。
 芸術家の情熱に頭が下がります(~_~)。
遊哉
2011/07/08 09:25
もう戻ってきました(笑)
またちょくちょく遊びにきますね。
keiko
2011/07/08 22:26
☆ keikoさん、戻ってきてくれただけで嬉しいです(~_~)。
 いろいろあるでしょうが、ブログはストレス解消にもなりますから、無理せずにアップしていってください(^^ゞ。
 はい、ちょくちょく遊びに来てくださいね(~_~)。
遊哉
2011/07/08 23:50

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