団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『鳥肌が』

<<   作成日時 : 2016/08/02 22:02   >>

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            〔昨日の夕方の上に伸びていく積乱雲〕


 歌人でエッセイスト、評論や絵本などでも活躍している穂村 弘(ほむら ひろし)さんのエッセイ集『鳥肌が』を紹介してみる。

 穂村さんのこれまでの人生は苦しみはなかったが、“幻に怯えて”いて“びくびく”だったという。そんなちょっとコワい“鳥肌が立つ”ような話を綴ったエッセイ集である。
 コワいのだが切なく面白みもある妄想系のショート・ショート、と言ってもいいかもしれない(^^ゞ。

 どんな“びくびく”のあれこれが載っているのか? 目次から紹介してみる。

 次の瞬間/「母」なるもの/自分フラグ/他人に声をかける/運命の分岐点/子役/「あなた」がこわい/原材料という不安/現実の素顔/夢の中、部屋の中、部屋の外、車の中/死の恐怖の増減/ヤゴと電卓/そっくりさん/隣人たち/自分以外の全員が実は/鹿の上半分/二つの原稿/落ちている/子供がこわいもの、大人がこわいもの/怒りのツボ/やってみるまでわからない/京都こわい/現実曲視/しまった、しまった、しまった/変身/小さな異変/裏/似ている/異常な猫/後からぞっとする/記憶の欠落/生首電車/お見舞いの失敗/人生後半の壁/世界が入れ替わる瞬間/出てくる話/謎の二人連れ/危機一髪/鮨屋にて/見えない敵/よそんち/ケジャン/小さな砂時計/仔猫と自転車


 4か所ほど引用・紹介してみる。


 「母」なるもの

<(前略)
 以前、友人のFさんという女性が母親との関係に悩んでいたことがあった。あまりにも強い愛情を受け過ぎて過保護というか、母子の一体感が強すぎたのだ。三十代、四十代になってもお母さんと同じ部屋で眠っている、というのをきいて驚いたこともある。恋人ができても、どうしても結婚まではいけない。お母さんと彼とどっちをとるの? という無言のオーラに引き戻されるのだ。
 彼女が五十代になった或る日のこと。何かの拍子に、八十代のお母さんが独り言のようにこう呟いたという。

  「Fちゃんが死ぬのを見届けてからじゃないと、私も死ねない」

 鳥肌が立った。Fさん本人はどう思ったのだろう。そんなの可笑しいよねえ、と笑っていたけれど。
 一般的には、親にとっての最大の不幸は、子供が自分よりも先に死んでしまうこと、とされている。だが、これはその常識を超越する発言だ。究極の母性愛が生んだ言葉がこれか、と思いつつ、でも、でも、でも、と考える。
 どう考えてもおそろしい。だって、本当にそんなことになったら、おかしな云い方かもしれないが、〈私〉はお母さんのお腹から出てこなかったのとおんなじになってしまわないだろうか。
「死んだ後」に「生まれる前」の世界に還るとしても、この世に生まれた時の道を再び戻ってゆくことだけは避けたい。同じ門を再び潜(くぐ)りたくはない。
(後略)>


 自分以外の全員が実は

<(前略)

   嫁として帰省をすれば待ってゐる西瓜に塩をふらぬ一族
                        本多真弓

〈私〉は夏休みに「嫁」という立場で夫の郷里に「帰省」した。よく来たと歓迎されて、ほっとひと安心。だが、おやつの時間にそれは起こった。その「一族」は誰一人として「西瓜に塩」を振らなかったのだ。夫も、なんの躊躇いもなく、真っ赤な果肉にかぶりついている。その光景が何故かおそろしい。あの、塩はどこですか、という言葉を口から出してはいけない。そう決意する。
「帰省」するまでは「西瓜に塩」を振らないのは夫の個性だと思っていた。しかし、実は個人の嗜好ではなかった。その背後に風土とか血とかDNAが隠されていたのだ。そのことがおそろしい。また、自分は「嫁」とは云いつつも、みんながにこにこ笑っていても、「一族」の中で所詮はよそ者だということを思い知らされる。
 或る日、我慢できなくなってこっそり、「西瓜に塩」を振っているところをたまたま幼い甥っ子に見つかってしまう。彼は目を見開いて驚いている。「西瓜に塩」を振る人間を初めて見たのだ。身を翻して駆け出した甥っ子の後を慌てて追いかける。待って、ちがうの、きいて、あなたは知らないかもしれないけど、「西瓜に塩」をかけるのは普通のことなのよ、この村の外ではみんなしてるの、と語りかけながら、夢中で襟首を摑んで、その口を塞ぐ。気づいた時、〈私〉の腕の中で小さな体がぐんにゃりと揺れていた。>


 出てくる話

<(前略)
 また別の友人は、外出から帰宅して鞄を開けたら、中から蛇口が出てきた、と云っていた。

 ほ「蛇口ってどんなの」
 友「金属の……」
 ほ「だいたい金属だよね」
 友「うん」
 ほ「どうして鞄にそんなものが?」
 友「デパートのトイレで手を洗った時に入っちゃったのかなあ」
 ほ「……」

 いやいやいや。「デパートのトイレで手を洗う」から「鞄の中に蛇口が入る」の間が、だいぶ飛んでるんじゃないか。

 友「妙に鞄が重いなあ、と思ってたんだよね」

 しかも、その現象が起こったのは二回目だという。前世で蛇口と何かあったのだろうか。友だちのことを、こわい、と思ってしまった。
 最後は自分の話。
 数日前、異音に悩まされていたことがあった。がさがさがさがさ、変な音が右の耳から聞こえてくる。いくら耳かきをしても治らない。覗いてもらったけど、特に異常は見当たらないようだ。でも、音は止まらない。やはり耳自体の問題か。病院に行くしかないか。と思いつつ、ぐずぐずしていた。
 そんな或る日、なんとなく耳に指を入れたら、するすると髪の毛が出てきた。しかも長い。えっ、と思う。私のよりも妻のよりも、ずっと長いのだ。>


 危機一髪

<大学に入った年に、ガールフレンドらしき人ができた。私にとっては、小学校三年生以来のことである。事実上、初めての恋人だ。
 初めての恋人が初めて私の部屋に遊びにきた日のことである。
 二人で床に座ってお茶を飲みながら、あれこれと話をした。ふっと会話が途切れた一瞬に、何を思ったのか、彼女はきょろきょろと辺りを見回した。
 と、突然、ベッドの下に手を入れるではないか。
 私は心の中で、ぎゃー、と叫んだ。そこは、そこには、見られたくない雑誌がたくさん隠してあるのだ。
 だが、止める間もなく、彼女の手がずるすると一冊の雑誌を引っ張り出した。一瞬のことであり過ぎて、逆にスローモーションみたいだった。私は呆然としたまま、息を呑んで、それを見ているしかなかった。
 内心は大パニック。

   「居住空間学……」

 彼女が摑み出したのは、或る雑誌のインテリア特集号だった。ふーん、という感じでそれを捲っている。
 私は、ほっとして涙ぐみそうだった。
 なんという幸運だろう。ベッドの下にあるのは、ほとんどエッチな雑誌なのに、彼女は数十分の一の確率で非エッチな雑誌を引き当てたのだ。
 私は、慌てて冗談っぽく云った。

  「あ、そこはもう触らない方がいいよ。よくない雑誌が出てくるから」
  「え、ああ、そうか」

 彼女はくすっと笑った。私も笑った。
 そうなのだ。言葉で云うのはぜんぜんOKなのだ。でも、だからといて、現物も許されるというわけではない。このタイミングで、裸の女性がぎっしり詰まった本が出てきたら、やっぱりまずいよ。
 彼女はそれきりベッドの下に手を伸ばすことはなかった。その後、私たちは長くつき合うことになった。
 これまでの人生において、ビンゴとか福引きとか抽選とかいうものに、私は当たった記憶がない。それはあの時、運を使ったせいだと思っている。
 ビンゴなんて当たらなくても全くかまわない。絶体絶命の危機にこそ、幸運のカードを引きたいと思うからだ。神様、これからも、あんな時には非エッチな雑誌の方を彼女の手に握らせてください。いや、もう、ベッドの下にそんなものないけど。
 非エッチな雑誌とエッチな雑誌では人生に与えるダメージが全く違う。

 非エッチな雑誌……無傷
 エッチな雑誌……致命傷

 どうしても無傷では済まない場合も、致命傷だけは避けたいと思う。

 エッチなグラビアのある漫画雑誌……全治二週間

 こんな感じだ。
 致命傷を避けたいといえば、一昨年の或る日のこと。私はおねしょをしてしまった。ショックだった。五十歳でおねしょなんて、恥ずかしいというよりもこわい。何かの病気とか呆けの兆候ではないか。
 しかし、前向きに考えることにした。昨日じゃなくて、よかった。その前の日、私は旅先にいた。そして、ちょっとした事情から、知り合いのそのまた知り合いの方の家に泊めてもらっていたのだ。もしも、このおねしょがそこで起こっていたら……。初対面の人の家でおねしょ。おそろしすぎる。
 おねしょはしないのが望ましい。でも、どうしても私にそれをさせたいのなら、神様、致命傷にならない時と所でお願いします。>


 こんな話がたくさん入った奇妙なエッセイ集である(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『鳥肌が』 穂村 弘 著、PHP研究所 刊、1620円、16.07.14. 第1版第1刷発行

鳥肌が
PHP研究所
穂村 弘

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<後記>今までに穂村さんのエッセイは『整形前夜』『絶叫委員会』『もうおうちへかえりましょう』などを紹介してきました。どれもみな妄想系で面白いです。
 この本は鳥肌が立つ? ようなコワい話を集めたものですが、どこまでが本当の話で、どこからが嘘? なのかよくわかりません。まあ、虚実入り混じっているんでしょうね、というか、本当にあった話に尾ひれと妄想がついて膨らんでいるのかもしれません(^^ゞ。

 実はこの本自体にも、ちょっとした鳥肌ものが3つほどありました。
 ひとつは、本屋でこの本の背表紙を見て棚から取り出したのですが、手に取った瞬間に取り落としそうになりました。表紙に女性のイラストがあるんですが、その絵柄に小さな点々がたくさんあるんです。
 なんだかよくないものを触ってしまったという感じでした。
 あとで考えてみると、どうも鳥肌を再現しているようです(^^ゞ。
 二つ目は「目次」です。表紙をめくり、扉を開いても目次がありません。あれっ、これ乱丁か落丁かと思ってその辺りを何度めくってもありません。
 もしかしてと嫌な予感がして、巻末を見たらありました。してやられたようです(^^ゞ。
 最後は、栞紐です。普通の栞紐は細い帯状だと思いますが、この本についているのはショッキングピンクの縫い糸のようなものが3本で、それもちょっと長めです。
 ページに挟むのにバラツキがちだし、その3本を指先でまとめてから挟まなきゃならない。
 それに、なんだか女性パンク・ロッカーの派手なショッキングピングの髪の毛3本みたいで、ちょっと気持ちが悪い(^^)/。

 ちょっとコワくて(なかには、とてもコワいのもありますが)、ちょっと笑えて、ちょっと切なくなるような話が詰まったエッセイ集です。

 今日(2日)は晴れたり曇ったりの一日で、蒸し暑かったです。

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 これは午後3時半ころで、チビりんもSORAも寝ています。
 チビりんは朝から食欲がなかったんですが、どうも風邪のようで熱が出てしまいました。

 カミさんは着付けの仲間との会食で夕方出かけました。
 テレビを観ているチビりんを置いて、夕方の散歩に行きました。

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 夕日は雲に隠れたり、ちょっと顔を覗かせたりしていました。

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 SORAは大トイレを済ませて原っぱに行きましたが……

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 直前でUターンしました(^^ゞ。
 公園を半周して、原っぱの反対側に行きました。

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 そのままウロウロすることもなく斜面を下りていきました。

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 スリスリだけは、しっかりとやりました(^^ゞ。

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 うちのタカサゴユリが咲き始めました。

 チビりんは38℃台の熱が続いています。夕食はスープとクラッカーで済ませました。
 あとは水分を充分摂らせて、熱を下げたいです。
 明日(3日)帰る予定ですが、はたしてどうなりますことやら。
 天気は晴れたり曇ったりの一日で、蒸し暑くなりそうです。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
ちびりんちゃんは夏風邪でしょうか、心配ですね。
どうかお大事にしてくださいね。

怪しげな雲が出ていましたね〜。
辺りが薄暗くなって怖い感じに見えますね(^^;
夕方の散歩はうっかり遠出したら、
帰りしなに大雨に降られてしまいました。
雨具を持ち歩かなければいけないですね。
ひぽたん。
2016/08/02 22:23
☆ ひぽたん。さん、こんばんは♪
 チビりんは夏風邪だと思います。熱は出ましたが、意外と元気です(^^ゞ。まあ、子どもはそんなもんでしょうね。
 熱だけは下げたいと思ってます。
 今日は雷は鳴りませんでしたが、怪しげな雲でした(^^ゞ。
 大雨に降られちゃいましたか。夏はいつ夕立になるかわかりませんね。雨具を持っていった方がいいと思いますが、雷が鳴ったら十分にお気をつけください。
遊哉
2016/08/02 22:35
チビりんちゃん、夏風邪ですか・・・
まあ、子供だから大丈夫でしょうね。
先ほど地震がありました。
震度3だそうで、震源を見ると我が家の真下・・・
ゾッと鳥肌が立つ思い(≧◇≦)
『鳥肌が』・・・なかなか面白そうなエッセイ集ですね。
ねこのひげ
2016/08/03 01:47
☆ ねこのひげ さん、夏風邪だと思います。とりあえず、うちの近くの病院に連れていこうと思ってます。
 地震がありましたか。直下地震というのは不気味ですね。最近は茨城の方が震源の地震が多いようですが、気をつけたいですね。
 この本、なかなか面白いです。よかったら読んでみてください(^^ゞ。
遊哉
2016/08/03 08:02
お暑うございます。
お孫さんのお熱、心配ですね。病院も混んでいまして、しんどいかもしれませんが(私、昨日3時間待ちだったもので)早くよくなることを願います。
面白い本を探していらっしゃるのですね。内容も然ることながら、表紙の点々や、まとわりつく栞紐など、著者の思い付きなのか、企画部門のアイディアなのかわかりませんが、そういうことを発案し、形にしていく過程を、どんな顔でおこなっていたのか想像するのも、楽しいトリ肌が出ます。
カラス
2016/08/03 10:20
☆ カラスさん、暑い日が続きますね。
 さっき病院から帰ってきました。予約をしてあったこともありますが、高熱が出ているということで、優先してすぐに診てもらえました。チビりんは喉風邪だそうですが、薬を飲めば熱は下がると思います。あとは時間の問題でしょうね。ご心配いただき、おそれいります。
 穂村さんの書くものが好きなので、本屋で見つけて手に取ってみました。表紙のブツブツには驚きました(^^ゞ。まとわりつく栞紐も面白いというか気持ち悪いです(^^)/。
 誰の思いつきでしょうね。穂村さんも面白い方だから、彼のアイディアかもしれません。たぶん編集者たちと一緒に考えたんでしょうが、たしかに、発案し、形にしていく時に、どんな顔でやってたのか想像すると、“楽しい鳥肌”が立ちますね(^^ゞ。
遊哉
2016/08/03 12:25

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