団塊バカ親父の散歩話

アクセスカウンタ

zoom RSS 『活版印刷三日月堂』の「星たちの栞」と「海からの手紙」

<<   作成日時 : 2017/03/06 23:13   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 48 / トラックバック 0 / コメント 4




画像

                〔炬燵に張りついていたSORA(^^ゞ〕


 川越にある小さな活版印刷所“三日月堂”を舞台にした連作集『活版印刷三日月堂 星たちの栞』を紹介する。
 シリーズもので、その第1作である。

 実はこの本を読もうと思ったのは、「池上冬樹が薦める 文庫この新刊!」(朝日新聞2月26日・書評欄)の紹介を読んだからである。
 そこでは、このシリーズの第2作で最新刊の「海からの手紙」の紹介だったのだが、第1作から読んでみたというわけである。もちろん、第2作も手に入れて、続けて読んでしまった(^^ゞ。
 ということで、 第1作だけでなく第2作もまとめて紹介してみる(^^)/。

 池上さんの紹介は、次のようなものだった。

<活版印刷でものを作る人たちの様々な人生模様が捉えられている。文中の言葉を借りるならさびしいけれど、あたたかい。言葉が身体にしみこんでくる≠謔、な物語集だ。作者は、人を育むことになる、大事な悲しみを見すえている。文庫オリジナルだけれど、活版印刷で豪華な単行本を作っても(たとえ5千円でも)読者は買うだろう。優しく温かく美しい思いが交錯する物語は、抱きしめたくなるほど切なく、それを誰かの胸に届けたいと考えるからだ。愛(め)でる喜びにみちている。ロングセラーになること間違いなしの傑作シリーズだ。必読!>

 池上さんに「必読!」なんて言われると、読まずにはいられない(^^)/。

 三日月堂は、川越の鴉山(からすやま)稲荷神社のはす向かいにある小さな活版印刷所で、店主は月野弓子という若い女性である。
 元々は彼女の祖父の店だったが、5年前に祖父が亡くなって閉店した。でも、彼女が戻ってきて再び営業を始めたのである。
 幼いころに母を失った弓子は、一時祖父母のところに預けられていたことがあり、そのあとも大学生のころまでは時々店に来て活版印刷の仕事を手伝ってもいたのである。

 この連作集の各話は、語り手が異なる。
 それぞれの語り手が、縁があって三日月堂でレターセットとかショップカード、コースター、名刺、栞、結婚式の招待状などを刷ってもらうことになる。
 その経緯のなかで、語り手たちのさまざまな人生模様が描かれていくのである。
 そして同時に、弓子自身が抱えている思いや過去も語られていく。

 第1話は、川越運送店一番街営業所で長年働いているハルさんが語り手となっている。
 空き家になっていた三日月堂に越してきたばかりの弓子が、活版印刷を再開するきっかけをつくったのがハルさんだった。
 母子家庭でひとり息子森太郎を育ててきたハルさんだったが、その息子が大学に合格し北海道へ旅立つことになった。
 門出になにかプレゼントをしたいと考えていた時に、子どものころを知っていた弓子と再会したのである。
 何日かして、弓子が川越運送店のパート募集に応募してきて採用された。何かの事情で三日月堂に戻ってきた弓子だったが、職を探していたらしい。

 弓子とつき合っていくうちに、ハルさんは昔手に入れた三日月堂のレターセットのことを思い出した。活版印刷でつくられたすてきなものだった。
 息子へのプレゼントとしてレターセットを考えたが、今どきの若者が使うだろうかと思い悩む。
 でも、やっぱりそれにしようと弓子と相談していくのだった。

 ハルさんのレターセットをきっかけに、少しずつ活版印刷の仕事が出てきた弓子は、やがて三日月堂を再開していくのである。
 そして、さまざまな人生を抱えた人たちが三日月堂とそこの活版印刷にかかわっていくのである。

 第1作の「星たちの栞」には、次のような4つの物語が入っている。

 世界は森
 八月のコースター
 星たちの栞
 ひとつだけの活字

 第2作の「海からの手紙」には、以下の4つが入っている。

 ちょうちょうの朗読会
 あわゆきのあと
 海からの手紙
 我らの西部劇


 1か所だけ「八月のコースター」から引用・紹介しておく。
 「桐一葉(きりひとは)」という珈琲店の店主・岡野が、ハルさんから紹介されて三日月を訪ねた個所である。叔父から引き継いだ店の新機軸を打ち出そうと、新しくコースターをつくろうというのである。


<(前略)少し緊張しながらブザーを押す。返事はない。ほんとにやってるんだろうか、と不安になりながら待っていると、なかでがたがた音がして、ドアが少しあいた。ほっそりした女性が立っている。
「あの、昼間電話した岡野(おかの)という者ですが」
「ああ、ハルさんから紹介された、っていう……」
「ええと、じゃあ、あなたが弓子さんですか」
「そうです」
 彼女はにこっと笑い、ドアを大きく開けた。
「うわあっ」
 思わず声をあげた。
 活字でできた壁……。いや、実際には、四方の壁がすべて天井まで棚で覆われ、そこにぎっしり活字が詰まっているのだが、活字を積み上げて作った壁みたいに見えた。そして、なんとも古めかしい、大きな歯車のついた機械。
「すごい量ですね」
 活字の数に呆然とした。前にいた会社でDTPの真似事をさせられたことがある。パソコンのソフトで文字を組み、形を整える。すべてパソコンのなかの作業だ。でも、そうか。むかしの活字は物質だったんだ。物質を人の手で拾い、並べ、印刷する……。
「こんなにたくさんあるなかから活字を拾って組むなんて、大変じゃないですか?」
「そうですね。最初は大変でした。でも、慣れますよ」
「あの、失礼ですけど、この仕事、何年くらい……」
「店を再開したのは半年前ですけど、むかしから店を手伝ってたんですよ。高校生のころから活字を拾ってました」
 弓子さんは活字の棚を眺めながら、低い声で言った。
 高校生のときから活字を拾ってた……。弓子さんをまじまじと見る。まっすぐな髪をうしろでひとつに結び、服はTシャツとジーンズで化粧っ気もない。ここに住んでいるっていう話だったし……。町工場のような室内を見回す。なんだか不思議な人だ。
 ひんやりした空気が流れ、独特の匂いがした。墨とも絵の具とも違う……これは、新聞の匂いだ。
「インクの匂い……ですか」
「インキです。インクじゃなくて、印刷業界では、インキ、っていうんですよ」
 弓子さんが笑った。
 インキ……。なんとなくなつかしい響きを舌の上で転がす。
(後略)>


 池上冬樹さんが書いているように、“さびしいけれど、あたたかい。言葉が身体にしみこんでくる”ような物語集であり、また“優しく温かく美しい思いが交錯する物語”が“抱きしめたくなるほど切なく、それを誰かの胸に届けたいと考える”ような物語集である。
 バカ親父も「必読!」と言いたい(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『活版印刷三日月堂 星たちの栞』 ほしお さなえ 著、ポプラ文庫、734円、16.07.09. 第3刷(16.06.05. 第1刷発行)
『活版印刷三日月堂 海からの手紙』 734円、17.02.05. 第1刷発行
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<1964年東京都生まれ。作家・詩人。1995年『影をめくるとき』が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』にて、第12回鮎川哲也賞最終候補。『空き家課まぼろし譚』『みずうみの歌』などのほか、「ものだま探偵団」シリーズなど、児童書も手がけている。>

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)
ポプラ社
2016-06-03
ほしお さなえ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)
ポプラ社
2017-02-03
ほしお さなえ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


<後記>恥ずかしながら、8篇の物語のラストそれぞれでウルウルきてしまいました。
 切なくて愛しくそして哀しい家族や友達などの話で、誰でも泣ける……かどうかはわかりませんが、気持ちよく泣きたい方は是非、読んでみてください(^^ゞ。

 最近は、活版印刷が見直されてきているようです。
 バカ親父が昔、編集の仕事をしていたころは、文字の部分はほとんどが活版印刷でした。
 月刊誌もやっていたので、校了(最後の校正)の時は印刷所に出張校正に行きました。赤字(直し)を入れて戻しておいたゲラが再校として出てくると、その場で校正して直しがあればまた赤字を入れ、それが多ければもう一度直してもらい、少なければそれで責了(あとは印刷上に任せる)とします。
 活版印刷というのは、とても手間のかかるものです。文選(活字を拾う)、組版(活字をページごとに組む)、そして印刷とそれぞれの職人がいて、最初のころはおかしな赤字を入れると、職人に叱られたりもしました(^^)/。
 彼らは、“職人魂”といったものをもった人たちでした。
 印刷されたものも、オフセット(平版)印刷とは違って凸版印刷だから、文字の周囲が凹んでいるわけではないのにくっきりとしていて趣のあるものです。

 そんな活版印刷の世界も垣間見ることができて、とても面白い物語となっています。
 第2作のラストでは、弓子さんは手キンという簡単な手動式の機械だけでなく、本格的に本の印刷もできる大型の機械も動かすことになりそうな話になっています。
 ライトノベルなのでとても読みやすいです。シリーズの今後が楽しみです(^^♪。

 今日(6日)は朝は雨が降っていませんでしたが、しだいに激しく降るようになりました。わりと寒かったです。
 午後からは少しずつ小雨になり、5時過ぎに散歩に出た時は止んでいました。

画像

 公園の桜並木の階段を原っぱに向かいます。

画像

画像

画像

 原っぱから公園を一周していきました。

画像

画像

画像

画像

 原っぱのあちこちに水溜まりができていました。
 ウロウロしていきます。

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

 西の空の雲が晴れてきて、うっすらと赤く染まりました。これも夕焼けでしょうか(^^ゞ。
 帰ることにしました。

画像

画像

 地上も全体が赤く染まってきて、ちょっと不思議な感じでした(^^)/。

画像

画像

画像

画像

画像

画像

 帰り道では、もう夕焼けは終わっていました。

画像

 ひな祭りのときのおチビです。着ている着物は、娘たちやチビりんも着たものです。
 おチビは、なんだか歌でも歌っているように口を開けています(^^ゞ。

 明日(7日)は一時曇るようですが、晴れるようです。冬の寒さに後戻りしそうです。花粉がだいぶ飛ぶようです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 48
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
お早うございます。
今日紹介していただいた本、興味津々です。さっそく購入します。それにしてもおチビさんのお写真、とてもいいですね。受け継がれてきたお着物の淡いピンク色もおひな様もとても調和されていて。
昔々、タイピスト時代もありました。あれも一種の活版印刷ですね、一字一字打って、原稿にあって文字盤に入ってない超難関漢字はわざわざ注文して。
それにくらべたら英文タイプは簡単でした。
懐かしいひと昔前のことを思い出して、一人でウルウル。
頑張ります。また素敵なお写真拝見させて下さいませ。もちろん取り上げて下さっている数々の本も、楽しみにしています。
pupu
2017/03/07 08:36
こんにちは。
きのうは水溜りが出来るほど降ったのですね〜。寒かったですね!こちらは雨はなかったですがホント寒かったですよ、夕方になり風が強くなり身に沁みました(^^;
同じ夕焼けでも景色もSORAちゃんも^^染まってしまうのは不思議ですね。
おチビちゃんはおひな様を見ているようにも見えますね。お写真を見るたびに成長しているのがわかりますね
実は娘が5月に嫁ぎますが、おチビちゃんを見てたら女の子の孫もいいなと、秘かに思っています(^^)。
ひぽたん。
2017/03/07 11:36
☆ pupuさん、おはようございます♪
 このシリーズ、なかなか面白いし泣けます(^^ゞ。ライトノベルなので、お孫さんも読めそうです。バカ親父はチビりんに薦めてみようと思ってます。
 おチビは笑い顔がいいです(^^ゞ。この写真は欠伸をしたところかもしれませんが、ひな祭りの歌を歌っているようにも見えて愉快です。
 和文タイプをされてたんですね。あれも活字を一字ずつ拾っていくんでしたね。昔は公の書類は和文タイプで出したので、よく頼みに行った覚えがあります。文字盤にない活字は別注してたんですね。なるほどです。
 パソコンのある現在では考えられませんが、懐かしいですね(^^ゞ。
 これからも楽しい写真を載せていきたいです。本もミステリーが多いですが、いろいろ紹介していきますので、参考にしていただければ嬉しいです(^^♪。
遊哉
2017/03/07 12:02
☆ ひぽたん。さん、こんにちは♪
 昨日は時に激しく雨が降りました。氷雨でした。今日あたりから寒気が下りてきて、冬の寒さがぶり返すようです。風邪など引かないように、お互いに気をつけましょう(^^)/。
 空全体が薄雲になりつつの夕焼けになったので、地上全体が赤っぽく映えたんだと思います。ちょっと不思議な感じでした(^^ゞ。
 おチビは表情がますます豊かになってきたようです。笑い顔がいいです。お雛様をみていたのかもしれませんね(^^ゞ。
 お嬢さんが嫁がれるんですね。おめでとうございます。うちは子どもも孫も女の子ばかりで、男の子がほしかったです(^^)/。男の子もかわいいでしょうが、女の子は別のかわいさがあっていいです。特に孫なら(^^♪。
遊哉
2017/03/07 12:12

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『活版印刷三日月堂』の「星たちの栞」と「海からの手紙」 団塊バカ親父の散歩話/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる