団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『国のない男』

<<   作成日時 : 2017/05/23 23:44   >>

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               〔夕方見えた2本の飛行機雲〕


 現代米国文学を代表する作家カート・ヴォネガットの皮肉とユーモアにあふれた遺作エッセイ集『国のない男』を紹介してみる。

 目次は次のとおりである。


1 わたしは末っ子だった
2 「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか
3 小説を書くときの注意
4 ここで、ちょっとしたお知らせを
5 さあ、そろそろ楽しい話をしよう
6 わたしは「ラッダイト」と呼ばれてきた
7 二〇〇四年十一月十一日で、八十二歳になった
8 人間主義者とはどういう人を指すかご存じだろうか?
9 何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ
10 イプシランティの懐古的な女性
11 さて、いい知らせがいくつかと、悪い知らせがいくつか
12 わたしはかつて、自動車販売会社の社長だった
 レクイエム

 作者から
 訳者あとがき
 文庫版訳者あとがき
 解説 ヴォネガット的瞬間 巽 孝之
 カート・ヴォネガット作品一覧


 「解説」を書いている巽 孝之さんが、カバー裏にこんなことを記している。

<人間への絶望と愛情、そしてとびきりのユーモアと皮肉。世界中の読者に愛された、戦後アメリカを代表する作家、ヴォネガット。その遺作となった当エッセイで軽妙に綴られる現代社会批判は、まるで没後十年を経た現在を予見していたかのような鋭さと切実さに満ちている。この世界に生きるわれわれに託された最後の希望の書。>

 この本が出版されたのは2005年だが、ブッシュ政権下で、イラク戦争により反米・嫌米・排米の空気が蔓延していた。
 そんな世界で、“わたしには国がない”と言わざるをえなかった晩年のヴォネガットの思いが伝わってくるエッセイ集である。

 何個所か引用・紹介してみる。


<ユーモアというのは、いってみれば恐怖に対する生理的な反応なんだと思う。フロイトによれば、ユーモアは欲求不満に対する反応のひとつらしい。彼はこんなことを言っている。門から外に出られない犬が門を引っかいたり、土を掘ったり、うなったりといった無意味な行動をとることがあるが、これは欲求不満か驚愕(きょうがく)か恐怖にそうやって対処しているのだ。
(中略)
 皮相な笑いというものがある。たとえば、ボブ・ホープはあまりいいコメディアンではなかったと思う。軽いジョークばかりで、観客を不安にさせるようなことは決して口にしなかった。わたしは、ローレル&ハーディには笑い転げた。彼らのジョークには、かなり悲劇的な要素があったからだ。だがふたりのような心やさしい人々は、いまの世界で生き残れることはできない。常に危険な状態にある。あっさり消される可能性もある。>


<トクヴィルは百六十九年前にこう述べている。アメリカ以上に、金が愛情を左右する国はない。なるほど。>


<(前略)わたしはポール・モール(ペル・メル)の製造元であるブラウン&ウィリアムソン・タバコ・カンパニーを相手に十億ドルの訴訟を起こすことにした。わたしは十二歳のときからタバコを吸いはじめたのだが、吸い続けたのは両切りのポール・モールのみだ。そしてもう何年もの長きにわたって、ブラウン&ウィリアムソン・タバコ・カンパニーは、わたしを殺してくれるとパッケージに書いて約束してきた。
 ところが、わたしはもう八十二歳だ。噓つき! いま、この地球上でもっとも大きな権力を持っているのは、ブッシュ(陰毛)、ディック(男根)(ディック・チェイニー)、コロン(尻)(コリン・パウェル)の三人だ。何がいやだといって、こんな世界で生きることほどいやなことはない。>


<いうまでもなく、わたしはニコチン中毒だ。これで死ねたらといつも願っている。タバコの一方の先には火が、もう一方には愚か者がいる。>


<ここで本当のことを言ってもいいだろうか。これがTVのニュースなら遠慮するところだが、そうじゃないから言わせてもらおう。じつは、だれも認めようとしないが、われわれは全員、化石燃料中毒なのだ。そして現在、ドラッグを絶たれる寸前の中毒患者のように、われわれの指導者たちは暴力的犯罪を犯している。それはわれわれが頼っている、なけなしのドラッグを手に入れるためなのだ。>


<今日、われわれは多くの新製品に囲まれている。たとえば、原子力潜水艦なんてものもある。こいつはポセイドンというミサイルを搭載している。核弾頭を搭載したミサイルだ。新製品といえば、コンピュータもそうだ。こいつのおかげで、人間は成長できなくなってしまった。ビル・ゲイツはこう言っている。「あなたのコンピュータの成長を温かく見守ってやってほしい」しかし、成長しなくてはならないのは人間なのだ。ばかなコンピュータなんか放っておけばいい。人の成長というのは奇跡だ。この世に生まれて、仕事をしつつ成長する。>


<二〇〇四年十一月十一日で、八十二歳になった。ここまで老けると、どんな感じかって? もう縦列駐車するのは不可能だ。もしわたしがやろうとしていたら見ないようにしてほしい。それから、重力の無情さをしみじみ感じる。昔ほど簡単にあしらえなくなってきた。>


<アルバート・マリといういい作家がいる。ジャズ史に詳しい、わたしの親しい友人だ。彼からこんなことを聞いたことがある。アメリカに奴隷制度があった時代――われわれは当時の残虐な行為から完全に解放されることは不可能だろう――、奴隷所有者の自殺率は、奴隷の自殺率をはるかに超えていたらしい。
 マリによれば、その理由は、奴隷たちが絶望の処方箋を持っていたからということだ。白人の奴隷所有者たちにはそれがなかった。奴隷たちは自殺という疫病神を、ブルースを演奏したり歌ったりして追い払っていたのだ。マリはほかにも、なるほどと思うようなことを言った。ブルースは絶望を家の外に追い出すことはできないが、演奏をすれば、部屋の隅に追いやることはできる。このことを、どうか、よく覚えておいてほしい。
 外国人がわれわれを愛してくれているのはジャズのおかげだ。外国人がわれわれを憎むのは、われわれがいわゆる自由と正義を押しつけようとしているからではない。われわれが憎まれているのは、われわれの傲慢(ごうまん)さゆえなのだ。>


<かつては、わたしもずいぶん無邪気だった。わがアメリカは人間的で理性的な国になれる、われわれの世代の多くがそういう夢を抱いていた。われわれは、大不況のときもそんなアメリカを夢見ていた。仕事もないというのに、そんな夢を見ていた。その後、第二次世界大戦のときも、そんな夢を見ながら戦って、多くが死んだ。どこにも平和などなかったというのに。
 しかしいま、わたしにはわかっている。アメリカが人間的で理性的になる可能性はまったくない。なぜなら、権力がわれわれを堕落させているからだ。絶対的な権力が絶対的にわれわれを堕落させている。人間というのは、権力という酒に酔っ払ったチンパンジーなのだ。われわれの指導者は権力に酔ったチンパンジーだ、などと言うと、中東で戦い死んでゆくアメリカの兵士たちの士気をくじくことにならないかって? 彼らの士気は、死体と同じで、すでに見るも無惨な状態にある。わたしの時代とは違って、いまの兵士たちは、金持ちの子どもがクリスマスにもらうおもちゃみたいに扱われているのだから。>


<本当に教育があって、自分で考える人は、ワシントンDCでは歓迎されない。(中略)
 結局、教育なんかなんの役にも立たないのだ。狂暴な指導者たちが権力の座についている。客観的な情報よりも、自分の考えが正しいと思いこんでいる人間がたくさんいるということだ。しかも、そのほとんどは高等教育を受けている。どういうことだ? つまり、彼らはその教育を投げ捨てざるをえなかったのだ。ハーヴァードやイェールで学んできたことを。
 学んだことを放棄しなければ、自分勝手な思索を延々と続けることなど不可能だ。どうか、学んだ知識は捨てないでほしい。教育を受けた人は膨大な量の知識をたくわえているはずだ。しかし、それを活用しようとすれば、ひどく孤立することになる。そういう人よりも、指導者の数のほうが圧倒的に多いからだ。わたしが考えるに、十倍は多い。>


<悪しき指導者は絶大な力を持っていた。そして彼らはふたたび勝利したのだ。まさにばい菌だ。指導者たちは自分たちの本音も明らかにした。それを今日のわれわれは正しく認識すべきだと思う。彼らは人の命を救うことなんかにはまったく興味がない。彼らにとって重要なのは耳を傾けてもらうことだ。素直に聞いてくれる人がいる限り、それがどんなに愚かな内容であっても、彼らの考えはどこまでもどこまでも続いていく。もし彼らが憎んでいるものがあるとすれば、それは賢い人間だ。
 だから、賢い人間になろう。そしてわれわれの命を救い、みんなの命を救ってほしい。誇り高くあってほしい。>


<わたしは、わたしの孫と同世代の人々に心から謝りたい。これを読んでくれている多くの人々はたぶん、そのくらいの年だろう。孫と同世代の人々も、この本の読者も、わが国のベビーブームに生まれた世代が牛耳る企業や政府によってまんまとだまされ、食い物にされてきた。
 そう、この地球はいまやひどい状態だ。しかしそれはいまに始まったことではなく、ずっと昔からそうだったのだ。「古きよき時代」など、一度たりともあったためしがない。同じような日々を重ねてきただけだ。だから、わたしは自分の孫にはこう言うことにしている。「年寄りに聞こう、なんて思うんじゃないぞ。おまえとちっとも変わらないんだから」>


 切りがないので、これくらいでオシマイにしておく(^^ゞ。
 一部だけを抜き出すと、ちょっとわかりにくいかもしれない。それに、ヴォネガットのユーモアや皮肉は捻(ひね)ったものが多いから、表面的な言説にとらわれると誤った理解になるかもしれない。
 あるいは、素直に読むと意外と正解なのかもしれない(^^)/。
 いずれにしろ、いろいろ考えさせられるのである。
 興味のある方は、この本を読んでみていただきたい(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『国のない男 A MAN WITHOUT A COUNTRY』 カート・ヴォネガット 著、金原瑞人 訳、中公文庫、778円、17.03.25. 初版発行
 著者について、改めてカバー裏から紹介しておきます。
<一九二二年十一月十一日アメリカ合衆国、インディアナポリス生まれ。現代アメリカ文学を代表する作家として『プレイヤー・ピアノ』『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』など数々の作品を発表。アイオワ大学創作科での教師時代にはジョン・アーヴィングらを指導した。二〇〇五年に遺作となる本書を刊行後、〇七年四月十一日ニューヨークにて逝去。>
 なお本書は、2007年に日本放送協会から刊行された単行本が文庫化されたものです。

国のない男 (中公文庫)
中央公論新社
2017-03-22
カート・ヴォネガット

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<後記>本書は、ヴォネガットが、現代米国の指導者たちが宗教や人種、階級への差別から非人道的な物言いや行動をしてきたことに、強烈な皮肉やユーモアを武器として糾弾したエッセイ集と言えそうです。
 そんな状況に、彼は自分がよるべき国はないと感じて『国のない男』というタイトルになったようです。
 ヴォネガットはドイツ系移民の末裔だそうですが、今年は同じドイツ系移民の末裔であるドナルド・トランプが新大統領になりました。
 不条理な移民入国規制や人種差別のみならず性差別においても尋常でない言動をする品のない大統領の誕生で、米国の排外主義はますますひどくなりそうです。
 世界的に見ても理不尽な不平等や暴力が満ちてきているようです。
 そんなときに、本書のヴォネガットの言葉の数々は、生々しく響いてきます。

 わが国でも、今日は「テロ等準備罪」新設法案が衆議院本会議で可決されましたが、その時々で調子のいいことを言い、パフォーマンスが上手で、国益は考えても国民益は疎かにするような指導者がいます。
 米国でもわが国でも、まるで独裁者のようです。
 現在を予見したような本書を、もう一度じっくりと読む必要があるのかもしれません。

 今日(23日)もいい天気になりましたが、夕方の散歩に出ると薄雲が多く出ていました。

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 夕日も出ていましたが、陽射しは弱かったです。
 公園を回って原っぱへ行き、ウロウロしました。

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 SORAはスリスリをしましたが、あまり会わないベアデッド・コリーを見つけてロック・オンに入りました(^^)/。

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 オーストラリアン・シェパードもやってきて、今日はSORAにとっては気になるワンコが多かったです(^^ゞ。

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 しばらくすると落ち着いてきたので、ベンチでマッタリしました。

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 夕日は雲に隠れそうです。

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 一番右がベアデッド・コリーです。

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 雲の下から夕日がまた見えてきました。

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 一番上の写真は北東に見えた2本の飛行機雲ですが、それが北西の空に見えるようになりました。

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 帰ることにしました。

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 北のほうからヘリコプターが飛んできました。自衛隊のでしょうね。

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 明日(24日)も晴れますが、夕方にかけて曇ってくるようです。南風が吹いてムシムシしそうです。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
東京オリンピックがあったときは、『これで世界は一つになるのかもしれない』と、子供心に思ったものでありますが・・・
どうなるんでしょうね。

昨日の朝は、三日月が冴え冴えとしていて、明けの明星も輝いておりました。
カートの作品に、宇宙人が、ずらりと並んでいる男性用便器を観て、この星に住んでいた動物はこれを何に使ったのだろうか?と不思議がる短編がありました。
そういう時が来るかもしれませんね。
とりあえず、癌の痛みは無しであります。(≧◇≦)
ねこのひげ
2017/05/24 03:24
☆ ねこのひげ さん、そうですね、前の東京オリンピックは戦後の復興期に合致して、日本も世界も希望に溢れていたんでしょうね。
 2020年のオリンピックを東京で開催することは反対でしたが、やることになりました。東京でやることの意義はあまりないような気がします。震災復興に絡めていましたが、それもあまり関係なくなっています。
 「テロ等準備罪」もオリンピックに絡めて成立させようとしていて、こんなことが目的だったのではないかと思いたくなります。
 カート・ヴォネガットの作品はねこのひげさんなら読んでるだろうなと思っていました。さすがです。
 人と人との断絶がますます進むのかもしれませんね。
 お体をいたわって、頑張ってください!
遊哉
2017/05/24 08:37

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