団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『国ゆたかにして義を忘れ』

<<   作成日時 : 2017/06/09 23:38   >>

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               〔今夕もベンチでマッタリしたSORA(^^ゞ〕


 井上ひさしと つかこうへい という、それぞれのやり方で時代を駆け抜けた天才作家が、小説・演劇はもちろん、映画や俳優、作品を産み出す苦労話、社会・国家・家族等々について、縦横無尽に鋭く語り合った対談集『国ゆたかにして義を忘れ』を紹介してみる。
 本書は昭和60年に角川書店より刊行された単行本が、文庫化されたものである。

 改めて、ふたりについてカバー裏から紹介しておく。

<井上ひさし
 1934年、山形県生まれ。上智大学外国語学部フランス語科卒。浅草フランス座文芸部員兼進行係などを経て文筆業に入る。72年に『手鎖心中』で直木賞、81年に『吉里吉里人』で読売文学賞、日本SF大賞などを受賞。他、小説、戯曲、テレビ脚本などで受賞多数。著書多数。2010年4月9日、逝去。>

<つか こうへい
 1948年、福岡県生まれ。慶應大学文学部フランス哲学科中退。大学在学中に演劇活動を開始、70年〜80年初頭にかけて若者の熱狂的な支持を得ていわゆる「つかブーム」を巻き起こした。82年に小説『蒲田行進曲』で直木賞、90年に戯曲『飛龍伝'90 殺戮の秋』で読売文学賞を受賞。著書多数。2010年7月10日、逝去。>

 奇しくも、ふたりは2010年に亡くなっている。
 どちらも、まだまだこれから面白い作品を書いてくれたような気がして、逝去の報を聞いたときにはちょっとショックだった。特に、つか さんは同じ団塊の世代だから、若過ぎたような気がして残念である。

 内容を目次から拾うと、次のようになる。

 幕が明けるまで/近ごろの家族について/近ごろのニセモノについて/近ごろのスジの通し方/広告に見る逆立ち現象/物語は現実を超えられるか/「オレも出る」という構図/客が入ってこそ芝居/大物語の構図/好きな映画のこと/エンターティンメントとは/作品を生む痛み/情報整理とカタルシス/カラオケと殺意/個性について/おしまいはハッピーのほうが/「余裕」がもつ不気味さ/ウツ病のエンターティナー/活字への夢を捨てず/素人衆の時代/「忠臣蔵」が育てた日本人/討ち入りの打算/筋を通すために
 喜劇をベースに持った演劇人  別役実

 4か所ほど引用・紹介してみる。


井上 (前略)うちの近くに家出をくりかえす中学生がいたんです。ボランティアの保護司が一所懸命、家出しちゃいけないと言った。すると、「おれのは家出じゃない」と言う。しばらく考えて、「家がないところからどうして家出ができるか」と名セリフを吐(は)いた。
つか こわいもんです。近ごろの素人(しろうと)さんは。「家がないところからどうして家出ができるか」ですか。もう泣けます。
井上 保護司にきくと、お母さんが過保護で干渉しすぎると子供は一度は家出をするそうですよ。ただし、こういうところは愛情が濃いわけですから、家出をしても、必ずもどってくるらしい。家庭の愛情が非常に薄い子供は、家出するともどってこない。そして家庭とよく似た集団の、非常に愛情の濃いところへ入る。暴力団とか小さな工場などへですね。人間には狭いグループの愛情が必要なんです。それが薄いと濃いほうへいくし、濃すぎると逃げ出す。ほどよいのがないんですね。>〔「近ごろの家族について」より〕


つか (前略)物語が、ドキュメントとかノンフィクションを超えられない時代になったんじゃないかというのは、そういうのを見てて思いますね。
井上 でも物語は依然として有効だと思うんです。グリム童話集に「寿命」とかいうのがありましてね。あるとき、神様が人間や動物を集める。そのとき、人間の寿命は三十年。人間は、これでは短かすぎるんで、もうちょっと寿命をのばしてくれ、と言う。ロバも三十年。だけど毎日荷物を背負ってつらいから、十二年でいいという。寿命を十八年分お返ししますと申し出る。ほかにも犬だの猿だのが寿命を返す。そこで、ロバと犬と猿とか返した寿命を、神様は人間にやる。この物語の落ちは、こうです。人間の寿命は本来の三十年に、ロバの十八年、犬の十二年、猿の十年を合わせて、七十年にのびた。もとからあった寿命の三十年はすごく楽しい。ロバからもらった十八年は、四十八ぐらいまでで、これはものすごい重い荷物を背負って、苦しい毎日が続いて、それから十二年、六十までは犬の寿命。歯が欠けたり、吠(ほ)えても、だれも見向きもしない。最後の十年、七十まではサルの寿命で、頭脳(あたま)のはたらきが鈍く、ばかみたようになって、とんでもないおろかなことを仕出かして、いい笑い草になる。ボヤーッとしてる。ナルホドなと思いますね。
つか つまり、その物語を聞いたり読んだりすることで、三十歳以後の人生の辛さ、苦しさが納得できる……。
井上 ええ、その通りなんです。つまり「物語」というレンズを通して見ると、混沌(こんとん)たる現実が整理される。いまの世の中はとても乱雑でランダムで、大事な基本的情報がなかなか読みとれないわけです。しかし、いまのグリム童話の物語に寄りかかって世の中を見れば、情報の整理が可能になるし、物語によって慰められもするわけでしょう。こういうものが物語の祖型(そけい)だろうと思うのです。過去の作品を読み抜いて、物語の祖型を見つけ出してくると同時に、そのままじゃしょうがないんで、いま僕らが生きている同時代の人に、いまの感覚で作りなおす。物語の祖型をなおざりにして、やたらに物語を書いていても、あんまり人を打たない。>〔「物語は現実を超えられるか」より〕


井上 つかさんのやり方はおもしろかった。職業をひねりながら、また誇張しながら、きちんと戯画化した。同時にそれぞれの職業に一生をかけている人たちの心意気を鮮烈に表現した。だから大いに笑って、同時に大いに泣くことができた。ところが今は、この職業はこうでゴザーイという思想がなくなってきましたね。今の若い人は大変だと思う。
つか 否定すべき対象がなくなった。僕の友だちで、全共闘運動してたやつにかぎって自民党の代議士の秘書とかNHKとかに入ってるし、ライオンズクラブに入ってる。NHKじゃなくテレビ埼玉とかだと許せるところもあるんですが。ここんとこつくづく思うんですが、堕落の仕方を知らなくなった。
井上 だから物をつくる方としては、やりにくい。若い人は小物語しか視野になくて、自分の身のまわり、触れるあたりだけを大事にして、それが遠いところとどう繋(つな)がっているかについてはあまり考えていないように見受けられますね。どうもまた老人ぶっちゃって、よくないんですが。
つか みな安っぽい恨みつらみしか持てなくなったのでしょうね。恨みつらみが趣味程度をかえるにとどまって人格まで左右しない。
井上 小物語から一歩踏み出すと傷つく。そこで個人という名の城塞(じょうさい)に閉じ籠(こも)ってばかりいる。そういう印象がありますね。>〔「カラオケと殺意」より〕


つか 「風と共に去りぬ」が大好きで、観(み)ていていつも感動するのですが、ビビアン・リーが自伝を書いて、その中にクラーク・ゲーブルの息は臭かったというのがあって、ショックを受けたことがあります。
井上 それはおもしろい。
つか なんだかさみしくなりました。なかなか夢を見られない時代なんですかね。うまく騙(だま)してよ、こっちもうまく騙されるから――というのが世の中のルールだと思うんですけど。
井上 それは基本的なことですね。
つか> ところが騙すほうも最初から手の内をみせて騙してくるから、イヤになる。クラーク・ゲーブルとビビアン・リーは映画の中のように仲良しと思いたかった。
井上 ですから最近のハードボイルド小説や冒険小説を読んでますと、作者はみんな才能あるんですが、おしまいがちょっと疑問なんです。結末を不幸にしてしまうんです。どうして不幸になっちゃうのか、まだ純文学のシッポがある。危機をくぐり抜けて最後に助かると思いきや、主人公とその恋人が死んじゃう。なんで幸せにしてくれないのか……。
つか そうですね。
井上 夢を見させてくれないんですね。
つか ハッピー・エンドにする力量のない人は小説なんか書いちゃいけないと思います。>〔「おしまいはハッピーのほうが」より〕


 この辺りでオシマイにしておく(^^ゞ。
 対談の前後をカットして一部だけを抜き出すと、ふたりの言いたいことが上手く伝わらないんじゃないかと、ちょっと心配になる(^^ゞ。
 とはいえ、短くても興味深くて面白いんじゃないかと思うのであるが……いかが?(^^)/。


<今日のお薦め本>
『国ゆたかにして義を忘れ』 井上ひさし・つかこうへい 著、河出文庫、691円、17.04.20. 初版発行

国ゆたかにして義を忘れ (河出文庫)
河出書房新社
井上 ひさし

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<後記>30年ほど前の対談だから、現在の状況とちょっと違うようなところもあります。
 でも、いろんなことを考えさせられて、一般の常識では計り知ることのできないような面白さがあります(^^)/。
 人が生きていく上で、各人それぞれの物語をつくり出すことが必要だと思っているのですが、戯曲や小説を書いていたふたりの対談を読んでいると、物語のつくり方についてとても参考になるような気がします。
 演劇がお好きな方は、巻末の別役実さんの解説が面白いと思います。
 興味のある方は、読んでみてください。

 今日(9日)は、カミさんは一泊の着付けの仕事で昼ころに出かけていきました。
 BS3でオードリー・ヘップバーンの「麗しのサブリナ」を観ました。ロマンチックコメディーですが、ハンフリー・ボガートやウィリアム・ホールデンが脇を固め、ビリー・ワイルダー監督だから洒落た映画になっています。何度観ても楽しい映画です。オードリーがかわいいし、ボガートが渋いです(^^ゞ。
 あとは、本を読んでいました。

 夕方の散歩は5時40分ころに出ましたが、またSDカードを入れ忘れていました(^^;。
 夕空の写真を4枚載せておきます。

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 雲が多かったですが、夕日も見えました。

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 いろんな雲が出ていて、面白かったです(^^ゞ。

 明日(10日)は陽射しが届いて、汗ばむ暑さになりそうです。午後からは、にわか雨が降るかもしれません。

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