団塊バカ親父の散歩話

アクセスカウンタ

zoom RSS 『セント・メリーのリボン』

<<   作成日時 : 2018/06/18 22:59   >>

かわいい ブログ気持玉 75 / トラックバック 0 / コメント 0




画像

               〔一点集中で寝ているウッディ(^^ゞ〕


 一昨日(16日)、本屋に寄ったときに懐かしい書名を目にした。稲見一良(いなみ いつら)さんの『セント・メリーのリボン』である。
 もう数十年前に読んだ本だが、新装版として再刊されていたのだ。

 稲見一良という作家は1994年に亡くなっていて、今は知る人は少ないかもしれないが、実は根強いファンも多い。
 細かい内容は忘れているから、もう一度読んでみたい! と堪らなくなって手に入れて読んでみた(^^)/。
 ハードボイルドもので味わい深く、何度読んでもすばらしい(^^ゞ。

 次のような中短篇が5篇入っている。

 焚火(たきび)
 花見川の要塞(ようさい)
 麦畑のミッション
 終着駅
 セント・メリーのリボン

 さて、どのように紹介しようかと思ったのだが、まずはその文体を少しでも味わっていただきたいので、それぞれのプロローグを引用・紹介し、簡単な内容も書いてみる。


 焚火(たきび)

<草むらに足をとられて、丸太のように前へ倒れた。腹のベルトに差していた拳銃(けんじゅう)に肋(あばら)の骨を打ちつけて、思わず呻(うめ)いた。土と枯草の湿った匂(にお)いを、胸いっぱいに吸いこんだ。疲れた体が起き上がるのを厭(いや)がった。枯草の中に、このままつっ伏していたかった。

 撃たれた衝撃に後ずさりし、下腹を押さえて斜面を転がり落ちた女の姿がまた脳裏に甦(よみがえ)った。おれに抱かれたまま「逃げて。お願い、死なないで……」とあえぎながら息絶えた蒼白(そうはく)の女の顔が、瞼(まぶた)の裏に焼きついていた。
(後略)>

……追ってから逃れる“おれ”を見知らぬ老人が助けてくれた。男が男を見極める鮮やかさがいい。


 花見川の要塞(ようさい)

<     1
 川の右岸から流れを距(へだ)てて見る弁天宮は、また趣が違った。真下に立った時は、楼門(さんもん)の大円柱のように見えた一対(いっつい)の桜の巨木も、川のこちら側から見ると、辺りの風景に溶けこんで目立たなかった。弁天宮はすぐそばで見てもちんまりと小造りで、宮というより祠(ほこら)という感じだった。
 赤く塗られた小さな鳥居、赤い旗のぼり、赤いお堂、そしてその横にある土俵と共に、全(すべ)てがひっそりと控え目で、十号の絵ほどに納まっていた。キジバトが低く矢のように飛んで来て、背後の竹藪(たけやぶ)に吸い込まれていった。
 七月半ばの、むせるような青草の中に半身を埋めて、俺(おれ)は花見川の風景を眺(なが)めていた。作家が書いたように、この辺りの風物には確かに何かしら懐(なつか)しい遠い記憶のような、そのくせまだ見たことのない異郷のような、一種独特の不思議な雰囲気(ふんいき)があった。
(後略)>

……椎名誠さんもエッセイなどで書いている千葉の花見川が舞台である。そこで見つけた軍用鉄道址にまつわるファンタジーが心に沁みる。


 麦畑のミッション

<     1
 日ごとに秋めくバークシャーの森は、ゴブラン織りのタピストリーのような、濃密でまた鮮かな色彩に溢(あふ)れていた。ブナやクリ、ナラや木々は全(すべ)て紅葉し、ナナカマド、キイチゴ、ニワトコなどの実が、飾り玉を撒(ま)いたようにいたる所で輝いていた。
 ジェイムズとリチャードの父子(おやこ)が、下草の中をゆっくりと歩いていた。ジェイムズは軍服のギャバジンのズボンにカタバミの実をつけ、義父の古いフランネルのシャツの胸に旧式の水平二連の猟銃を抱いていた。
 リチャードはスプリング式の空気銃を肩に担(かつ)いで、父の左側の少し後を歩いていた。
(後略)>

……子が父に頼んだありえないプレゼント。それが現実になった。
 第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台に、爆撃機の操縦士である父が極限状態で仲間を助けるためにとった行動とは?!


 終着駅

<     1
 重い革のトランクを二箇、振り分けにして肩に担(かつ)ぎ、さらに鞄(かばん)を一つ手に提げてプラットホームを降りた。五十キロはあるだろう。妙なもので制服だと力が出る。
 外国人の老夫婦がついてくるのを確かめながら階段を下り、荷物を八重洲(やえす)口のタクシーに載せてやった。一箇運んで四百円、だから千二百円のところを、外国人は三千円くれて笑顔で礼を言ってくれた。
 今の新幹線から降りた客の荷物をもう一回運べるかもしれないと思いながら、急いでホームへ戻った。
「雷三さん」
 と名を呼ばれたような気がした。ふり向いてみると、四十歳くらいの和服の婦人が笑顔でわたしを見つめていた。
(後略)>

……今は見ることができなくなった東京駅で働く最古参の“赤帽さん”(ポーター)が、暴力団相手にとんでもない行動に出た。


 セント・メリーのリボン

<   第一章 初  猟

      1
 俺は湿った落ち葉を踏んで歩いた。朽(く)ちた葉のにおいが立ちこめて、十一月の朝の林の中は、清々(すがすが)しい冷気に満ちていた。風はなく、渓流(けいりゅう)の水の音のほかは何も聞こえず、何も動かなかった。
 俺の前を、ジョーが何時(いつ)ものように、うなだれて歩いていた。銀灰色の粗(あら)い体毛が、木立の中では黒く見えた。この犬のことを、人はよく「狼みたい」と言うが、今は確かにそう見えた。
 ジョーが歩いたばかりの所から、ふわっと舞い上がるものがあった。ヤマシギだ。銃を肩に当てて撃つのと、ヤマシギがゆらりと体を傾けるのが同時だった。逆光の鳥の姿が、木の蔭に入った。
 俺は二発目を撃たなかった。ヤマシギを最初の一発で落とせなければ、その勝負は負けだ。落ち葉の精のようなヤマシギは、何時もこのように音もなく立ち、気まぐれにわずかに向きを変える。鷹揚(おうよう)にさえ見える飛び方で、速くもないのに、初矢(しょや)で仕止めるのは結構難しかった。
(後略)>

……大阪府の西北端の広大な山林に山小屋を構える竜門卓は、相棒の犬ジョーとともに失踪した猟犬だけを捜索する“猟犬探偵”である。
 ある日、盗まれた盲導犬の行方を突き止めてほしいという、目の不自由な資産家の令嬢からの依頼があり、竜門とジョーは追跡を開始した。
 行きついたのは、薄幸な目の不自由な少女の家だった。
 ラストシーンが胸を打つ。


 本書の初版のあとがきで稲見さんは、この作品集の主題は“男の贈りもの”と書いているそうである。
 “男が誰かに何かを贈る”
 なるほど、と思わされる(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『セント・メリーのリボン 新装版』 稲見一良 著、光文社文庫、734円、18.06.20
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<1931年大阪府生まれ。記録映画のプロデューサーを経て作家になる。’91年『ダック・コール』で第4回山本周五郎賞受賞。至純な魂を持ち、感動的な作品を生み続けた。’94年没。死後も高い評価を得ており、その死が惜しまれる。著書に『ダブルオー・バック』『ソー・ザップ!』など。>

セント・メリーのリボン 新装版 (光文社文庫)
光文社
2018-06-12
稲見 一良

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by セント・メリーのリボン 新装版 (光文社文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


<後記>稲見一良さんは大好きな作家で、このブログを始めてすぐに『ソーザップ!』という記事で紹介しています。もしよかったら、読んでみてください。
 この中短篇集に収められているそれぞれがいいのですが、タイトルになっている「セント・メリーのリボン」は、失踪した猟犬探しを生業(なりわい)とする探偵・竜門卓が主人公で、『猟犬探偵』などのシリーズものにもなっています。
 犬好きには堪らない作品で、再読なのにラストはもうウルウルになりました(^^ゞ。
 バカ親父と同じように涙もろく、かつ犬好きな次女に読ませたら、ウルウルどころではなくビショビショになること必定です(^^)/。
 犬好きもそうでない方も、それぞれの物語が心にグッとくるのはまちがいないので、是非一度読んでいただきたいと思います。

 今日(19日)は雲が多い一日で、夕方近くになってから雨が降ったり止んだりになり、夜には時に激しく降るようになりました。
 夕方の散歩は5時15分くらいに出ました。小雨でした。
 公園の桜並木を上って原っぱに向かいます。

画像

画像

画像

画像

画像

 雨雲が垂れこめています。
 原っぱをウロウロしていきました。

画像

画像

 途中でクンクン(^^ゞ。

画像

画像

 SORAは大トイレをしてから、引き返し始めました。

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

 そのままの勢いで下り始めたので、帰ることにしました。

画像

画像

 途中で寄り道してクンクンしてました(^^)/。

画像

画像

 ここでは遠くの匂いを嗅いでいます。

画像

画像

画像

 また、寄り道(^^ゞ。

画像

画像

画像

画像


 明日(19日)の横浜の南の端っこの天気は、時々雲が広がるものの、日中は陽射しが届き、気温が上がってムシムシしそうです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 75
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い 面白い
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『セント・メリーのリボン』 団塊バカ親父の散歩話/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる