「にもかかわらず」の微笑

画像 キレる子どものことが問題になっているが、キレる大人や老人が増えている。“怒りをコントロールできない状態”という、かつては若者特有と言われていた現象が、30代や40代やそれ以上の世代にも広がってきている、ということだ。

 その背景には、いったいどんなことがあるのだろうか。そしてその対応法は?
 そんな記事が朝日新聞(10/18)に載っていた。タイトルは「キレる大人たち (下) 怒りの源って何だろう」である。できるだけ簡単に紹介してみる。


○ 背景
 次のような、原因や背景があるようである。

① 脳機能の低下 [ 篠原菊紀・諏訪東京理科大教授(脳・人システム論)]
 生物学的には、怒りなどを抑制する脳機能は30歳ごろをピークに徐々に落ちる。60歳の人と6歳児の抑制機能はほぼいっしょという調査もある。
 昔は地域社会のつながりが高齢者の「キレやすさ」をカバーしていたが、今はそれが崩壊してきたという。

② 世代的な特徴 [ 加藤諦三・早稲田大教授(心理学)]
 今の40歳ぐらいまでの人は、幼少時に親から十分に認められていない「満たされなさ」を感じている人が多い。幼児期の願望が満たされないまま大人になり、不満や怒りがどんどんたまり、ある時点でコップから溢れるようにしてキレる。
 根本には、会社や家庭も思うようにならない、というコントロール感のなさ、虚しさがある。

③ 価値観のギャップ [ 宮崎哲弥・評論家 ]
 今の中高年は、携帯やネットを使いこなす若者に対し、理解しがたいという「異物感」のようなものを感じている。こうした深い価値観のギャップと、リストラや成果主義の導入など企業社会の激変により、周りから孤立し、キレるのではないか。

④ 「キレ」の方向の変化 [ 大野裕・慶応大教授、精神科医 ]
 根本の攻撃衝動は、他人など外側に向かって爆発するだけではなく、内側に向かってキレると、うつ病や自殺に至る。攻撃衝動の強さ自体は昔も今も変わらないだろうが、社会的に余裕がなくなってきて、より頻繁に出やすくなっているのではないか。
 同様に、幼児虐待や引きこもり、若い世代の早期離職もキレの一種ととらえる指摘もあるようだ。

⑤ 消費者優位の行き過ぎ [ 小野田正利・大阪大大学院教授 ]
 大人がキレるのは、「消費者優位が行き過ぎた結果」とみている。教授は学校に対する親の理不尽な要求などを研究している。
 コンビニやファミリーレストランでは、長時間居座る客にまで「ありがとうございます」と言う。こうした文化が社会に浸透し、消費者にゆがんだ権利意識を与えてしまった、という分析である。

 それでは、このような「キレる」ことに対しては、自らはどのように対処したらいいのだろうか。

○ 対処法(怒りのコントロール法)
 佐藤綾子・日大芸術学部研究所教授は、「出来事のとらえ方を少し変えるだけで、その結果わき出てくる感情は変わってくるんです」と言い、次のようなやり方でも怒りを制御できるとアドバイスしている。

① テンカウント法
 カッとしたら、ゆっくりと息を吐く・吸うを繰り返しながら、10まで数える。その間に、理性が動き出し冷静さを取り戻す。

② バルコニー法
 バルコニーから下を眺めるように、一歩離れて高所から怒っている自分を見ているもう一人の自分をつくる。「今怒るとみっともない」「相手に嫌なことがあったに違いない」といった意見をもう一人の自分が発することで、怒りを客観的に見られれば怒りが冷める。

③ ステージ転換法
 適当な口実を見つけて、怒りの対象となっている相手の前から姿を消し、他の場所に移動する。違う動作をする間に気分が変わる。

④ 「にもかかわらず」のスマイル法
 腹が立ったにもかかわらず、とにかくニコッと笑ってみる。表情を動かすことに大脳が集中し、楽しい表情を浮かべた時の表情に変わる。

 この他に、「何事も悪い方に考える」といった癖を徐々に修正するプログラムもあるという。「メンタフ ダイアリー」というもので、物事のとらえ方をネット上の日記に書き込みながら、キレにくくしていく方法だそうである。
 また、最上 悠さん(精神科医)は、睡眠不足の日や激しく反応する言葉など、自分の「キレパターン」を自覚することを勧めている。浅い友達から深い友達・家族まで、バランスのよい対人関係をつくることがキレの予防にもつながる、ということである。

 いろいろ考えさせられるのだが、対処法の④の“「にもかかわらず」のスマイル法”というのが面白いと思ったのである。これって、昔の日本人ならやっていたことじゃないか、と思ったのである。
 アイルランド人で日本に帰化したラフカディオ・ハーンが『日本瞥見記』という本を書いている。その中で、日本人の微笑(ほほえみ)について、「それは丹精こめて長い間に育成された、ひとつの方法なのである。口に出して言わない言語なのである」と書いているという。
 西欧人にとって、怒られても笑っている日本人の微笑は理解できない摩訶不思議なもので、自分が馬鹿にされているのではないかと思うらしい。だが、長年日本で暮らしてきたハーンは、その本質を見抜いていたようである。
 それは、日本人は自分に良かれと思ってくれる近しい人に対しては、いつもできるだけ気持ちのよい微笑を向けるしきたりがあり、それは敷衍して世間に対しても、一つの生活の規範とされている。笑顔を崩さないことが社会的な義務なのである。
 反対に、微笑のない顔をすることは、好意を持ってくれる人に心配をかけたり、苦しみをもたらす。さらには、好意的でない人には、意地悪な気持ちをかき立ててしまうこともありえる。
 というようなことである。

 西欧人には誤解を呼ぶ日本人の微笑だが、和を尊ぶ日本人にとっては、とても大切な規範の一つだったようだ。自分の怒りを静めると同時に、相手の優しい心をも呼び起こすものなのである。
 最近の日本人は、表情がない人が多いような気がする。もう一度、忘れていた“「にもかかわらず」の微笑”を取り戻してもいいのかもしれない。


<後記>さあ、どうでしょうか。いろいろ考えさせられるのです。“60歳の人と6歳児の(怒りなどの)抑制機能はほぼいっしょ”なんていうのは、ドキッとしました。
 時々キレる旦那のいる奥さんは、「この男は6歳児と同じなんだ」と思えば、頭に来ることもないかもしれません。まあ、逆も真なりですけどねえ(笑)。

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この記事へのコメント

みいママ
2007年10月20日 01:17
確かにキレる人は最近は多くなったように思います
6歳と60歳が同じとは笑いますよね
年を重ねると子供に返ると”聞いた事がありますが
60歳は早すぎますよね(笑)
2007年10月20日 07:53
私はムカッとしたら一度は黙り込む事にしています・・・それから自分が悪いのか?相手が悪いのか?一人問答している間に相手は居なくなり・・・あれ~っ(笑)
私の好きなアナウンサーさんがそういう時は笑うようにしていると言ってましたが私がしたら不気味になりそうな・・・・・(^0^)
遊哉
2007年10月20日 08:55
☆ みいママさん、子どもや若い人の犯罪数はそれほど変わらないのに、中年以降の犯罪が増えてきたと聞いたこともあります。切れる大人や老人が増えているんでしょうね。
 6歳と60歳が一緒というのは、怒りなどの抑制機能だということですが、困ったものです(^^ゞ。歳とともに子どもっぽくなるのはいいですが、どうせなら、愛されるかわいい年寄りになりたいですね(^^♪。
遊哉
2007年10月20日 09:05
☆ 小桜小梅さん、黙り込んで一人問答しているうちに、相手がいなくなっちゃうんですか(~_~)。相手もじれったくなっちゃうんでしょうね。それも一つの対処法かもしれません。
 それに、不気味な笑いが加わったら、天下無敵になるでしょう(^^♪。多少不気味になったとしても、笑うのが一番だと思います。微笑なら、たぶんかわいいでしょう(^^ゞ。
2007年10月20日 09:33
わたし六歳児ですが そんなに 切れないですよ 穏やかな 六歳児ですよ
遊哉
2007年10月20日 10:15
☆ seiziさん、とうねん(×6)とって、六歳?(^^ゞ。はい、なんにでも、例外はあるもんです(~_~)。
片靴
2007年10月20日 10:33
「・・・気持ちのよい微笑を向けるしきたりがあり、それは敷衍して世間に対しても、一つの生活の規範とされている」:同感です。皆が心掛けていれば、「騒音オバサン」を生むこともなかったのでは、と思っています。今の世の中、人付き合いが下手になっているように感じます。
遊哉
2007年10月20日 12:00
☆ 片靴さん、最近は“気持ちのよい微笑”を見ることが少なくなったような気がします。
 「騒音オバサン」もいろんな事情があったんでしょうが、微笑を失わずにいれば、あんなことにはならなかったんじゃないでしょうか。
 日本人なら、日本人が昔からもっていた規範を失わずにいたいものだと思います。
2007年10月20日 12:32
事例が載っていましたね。店員さんがお客様に椅子を勧めたら2度目に「いいって言ってるでしょう!!」ってキレられたとか。私や娘は家の中ではお互いによくキレ会うんです。しょっちゅう喧嘩です。でも2人とも外では「穏やかな人」で通っている・・。身内で怒りを小出しにするのもいいかも、ですね。でも夫がキレたらムカつくのは何故だろう。
キーブー
2007年10月20日 13:33
にもかかわらずの微笑…それができると自分も生きやすくなるんでしょうね。分かっているのにできないのはなぜなんでしょう。さすがにすぐにキレたりはしませんが、顔に出ちゃうんですよね。分かりやすい方だと思います(-_-;)
何があってもゆったり微笑んでいるような大人の女になりたいもんです。(年は充分大人なのに)
2007年10月20日 13:40
① テンカウント法
カッとしたら、ゆっくりと息を吐く・吸うを繰り返しながら、10まで数える。その間に、理性が動き出し冷静さを取り戻す。

これ私得意。痴呆症の母に向き合えなくていつもイライラしてた頃、この方法を諭してくれた人が居たの。今はこの歳になって直情的になるってことは無くなったけど、それでも昔から我慢するだけ我慢してた。その代わり切れたら最後だった。
(〃^∇^)o_彡☆あははははっ!怖わっ!!
姉だろうが何だろうがお構いなし!!
遊哉
2007年10月20日 17:12
☆ リサさん、日本では、お客様は神様ですって持ち上げられすぎているのかもしれませんね。企業間の競争が激しすぎるのかもしれません。
 お嬢さんとキレ合ってるんですか。それもいいのかもしれません。お互いのストレスを発散させてるんでしょうね。気心の知れた甘え合える相手だからこそ、できるのかもしれません。それで外で「穏やかな人」になれるんなら、いいんじゃないでしょうか(^^♪。
 旦那がキレるとムカつくのは、気心が知れすぎているから? 期待が大きすぎるから? 勝手なことばかりしてるくせにと思ってるから?……夫婦のことは他人にはようわからん(^^ゞ。
遊哉
2007年10月20日 17:27
☆ キーブーさんは、思ってることがすぐに顔に出ちゃうんですか(~_~)。正直でわかりやすい人なんでしょうが、相手は大変かもしれません(^^ゞ。
 「にもかかわらず」の微笑なんてやってられない場合もあるでしょうが、今からでも心がけて少しずつでも、やってみたらいかがでしょう。
 たぶん生きやすくなるでしょうし、柔和な大人の女になれる、かもしれません(~_~)。
遊哉
2007年10月20日 17:34
☆ さよちん、テンカウント法を身につけているんですね。痴呆症だったお母さんに向き合うには、必要だったんでしょうね。バカ親父もクソ親父に向き合うには必要そうな気がします。時々、蹴飛ばしたくなるからね(^^ゞ。
 我慢して我慢して、最後に爆発するタイプのようですね。どちらかというと、バカ親父もそうなんです。普段は我慢することが多いですが、我慢しきれなくなるとキレます(~_~)。
 さよちんもコワッ! だけど、バカ親父も周囲からはコワがられてるみたい(^^ゞ。
キョン
2007年10月20日 19:24
私は、キレない方です。すごい嫌な事を言われたりされても、きっとその人にもそうせざるを得ない理由があるに違いないって思うようにしているんです。きっとその人もつらいからに違いないって。だって、イライラしたり怒りやすい時って、私の場合は体の調子が悪い時が多いんですもの。人は余裕がなくなるとキレるのではないかなぁ?
遊哉
2007年10月20日 19:54
☆ キョンさん、さすがです。上の対処法でいえば、②のバルコニー法ということになるんだろうけど、人の気持ちを思いやるっていうことでしょうね。
 日本人が規範としてもっていた「微笑」というのも思いやりなんじゃないかな、と思いました。お互いに思いやりをもって接していたら、切れることもずいぶん少なくなりそうです。
 余裕がなくなるとキレるでしょうね。気持ちに余裕がなくなって、何かで精神的に追い詰められると、その気持ちが爆発するんでしょう。キレるのもその一つのあらわれでしょうね。
 いろんな方法で自分を客観的に見つめると同時に、相手のことも思いやれば、キレることはなくなるかもしれませんね(^^♪。
息絶え絶えのキリギリス
2007年10月20日 20:35
しかし,キレたら,テンカウントやスマイルに移る余裕はない。咄嗟のことだからさ。しょうもない評論家の一家言を信じてはいけない。
怒り心頭に発したら怒ればいいんだ。善人面することは偽善である。そうは思わないか,遊哉君。
遊哉
2007年10月20日 21:24
☆ そうですね。キレたらテンカウントやスマイルに移る余裕はないかもしれません。評論家の一家言を信じる必要もないでしょう。善人面する必要もないでしょう。怒り心頭に発したら怒ればいいでしょう。その結果をきちんと自分で責任をとればいいいのです。
 結果がどうなるかも考えずに、そうするのであれば哀れな結果になるかもしれません。それは、自分が決めればいいことです。
 もし、結果がどうなるかをきちんと考えるなら、自分を律することを覚えたほうがいいでしょうね。そのための怒りのコントロール法を身につけたいと思った人は実践すればいいのです。やりたくなければ、やらなければいい。それは、自分で決めればいいのです。そうは思わないか、息絶え絶えのキリギリス君。
2007年10月20日 22:10
息絶え絶えのキリギリスさん
テンカウントやスマイルは、キレる前にするのよ。
カッとなったら三つ数えろ…これ高校時代に先生に言われた言葉。実行しました。スリーカウントで効果あります。
かく言う私、めったに怒らないけど、怒らせたら怖い…と娘たちに言われます。
その怖さって何か分かりますか?
「あ、(怒らない人を)怒らせてしまった…」という自責なのだそうです。
外れたコメントごめんなさい。

遊哉
2007年10月20日 22:15
☆ Fチェスカさん、さすがです。禿同!(^^♪
urara
2007年10月20日 23:38
長きに渡って受けた引力にもかかわらずの微笑って口角付近の筋力がいるんですよね。これ実感。
機嫌がいいのに「何か怒ってんの?」って言われるの。ほっといてよってキレちゃいけませんよね。
遊哉
2007年10月21日 00:14
☆ uraraさん、それって、男ですが最近よくわかるようになりました。細身だからほっぺたは落っこちてないんですが、口の両脇にくっきりと線が入ってきました。笑い皺なら、まだかわいいんですけどね(^^ゞ。
 それなりの歳だから、仕方ないところはありますが、キレちゃいけません。今からでも遅くないから、はやりのマッサージとか顔の筋肉の運動とかに励んでくださいな(~_~)。
息絶え絶えのキリギリス
2007年10月23日 14:17
遊哉&Fチェスカ氏へ
“キレる”は,堪忍袋の緒が切れる,の切れるですか。ほんとの処は,ちょっと違うんじゃないですか。でなければ,社会相手にキレる,すなわちドロップアウトすることの意味を含みませんね。
あれこれ言ってみたいが,クオリティペーパーAを読み,遊哉サロンに集うハイソな人にはわかってもらえそうにない。
だから,キレて,お気に入り(ふた月ほど前に登録)から削除するということです。さようなら。
遊哉
2007年10月23日 19:06
☆ 息絶え絶えのキリギリスさん、お元気で! さようなら。

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