不良老人もいいかも




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 昨日の天野祐吉さんの「CM天気図」(朝日新聞11/12)に面白い話が載っていた。
 タイトルは「求む不良老人」である。

 CMに出てくる老人の話である。
 まず、二十数年前の「こうトシをとると蚊も刺しませんなあ」と、病院の待合室で加藤嘉さんがつぶやくキンチョウのCMの話。そして、最近の八千草薫さんの「♪一つひと粒願い唄……」なんて歌っている皇潤というサプリメントのCMを紹介した後に、こんなことを書いている。

<ここ数年、老人向けのCMがどんどんふえてきているように思う。ぼくがトシをとったせいだけじゃない、いまは5人に1人が老人の世の中、老人向けの市場が大きくなり、それだけCMもふえて当たり前なんだろう。
 それはそれでいいのだが、CMの中に出てくる老人たちが、みんな素直で、おとなしくて、まわりにやさしくて……と、優等生ぞろいなのが気になっていけない。うるさい老人といえばキンチョーの大滝秀治さんくらいで、あとの人たちは、世の中のために酸素をあまり消費しないように、ひっそり息をしているようにしか見えないのだ。>

 そのあとで、こんな話を紹介している。

<かつて野坂昭如さんは、「老人よ、もっと不良になろう!」と提言した。イタズラもいい、ときにはイジワルもいい、老人は老後をもっといきいきと生きよう、それによって若い連中に、「自分もトシをとったらああいう老人になろう」という生きがいを与えようじゃないか、と力説した。>

 というのである。そして、それは現実にはなかなか難しいが、せめてCMの世界では、もっとそんな老人像をみせてほしいと天野さんは書いている。

 「不良」といえば、不良少年とか不良少女とかで使われる。「不良中年」までは聞いたことがあるが、「不良老人」あるいは「不良老年」というのは、あまり聞いた覚えがない。
 それに、「不良」という言葉は、普通はいい意味では使われないから、「老人よ、もっと不良になろう!」と言われても、ちょっとためらうものがある。

 でも……
 話はちょっと変わるが、同じ朝日新聞の「天声人語」(11/12)に亡くなった森繁久弥さんのことが書かれていた。
 その中で、こんな逸話が紹介されている。

<女性を愛し、映画でも尻や胸によく手が伸びた。バシッとやられて退散する流れがおちゃめで、いやらしさはない。座談の色話には軽(かろ)みが漂い、エロというより、小さな字で助平と書きたいおかしみがあった。
 大阪人のサービス精神に、大御所の威厳がいい案配で重なる。銀幕の盛りはチョビひげ、晩年は白いあごひげの相を大衆の記憶に刻んだ。お座敷でのドジョウすくいと文化勲章。とちらもはまる自在の人だった。
 勝新太郎さんや芦田伸介さんら、仲間に先立たれる思いを「朝寝坊でロケバスに乗り遅れた私だけがまごまごしている」と記している。「生きているやつはみんな哀れなんだ」と。久世さんも、最愛の妻子も待つ次の現場に向かって、悠然とバスに消えた。>

 さて、上記の野坂さんが提言したという不良老人と森繁久弥さんとは、どこかつながりがあるような気がする。
 老人は優しくてかわいいのがいいと思うのだが、それだけではなんだか詰まらない。イタズラをしたり、時にはイジワルもしたり、ちょっとおちゃめな助平さも併せ持つ、という不良性があってもいいのではないか、そんな気がするのである。
 それに森繁さんの場合は(野坂さんもそうだろうが)、その不良性の裏側に、人間の弱さとか哀しさや不完全さを知った上での、人を見つめる優しい目があったような気がするのである。
 それがあるからこそ、不良な部分が生きてきたし、嫌みも感じさせなかったんじゃないだろうか。
 それに、最後まで活き活きと生きて、尊敬されるような仕事をなし遂げたからこそ、ああいう老人になりたいと思われたんじゃないだろうか。

 そういえば、「いじわるばあさん」という漫画がある。「サザエさん」と同じ長谷川町子さんの漫画で、テレビドラマでは青島幸男さんがいじわるばあさんをやっていた。
 口が悪いし、イタズラ好きだが憎めない不良ばあさんだった。
 老人は人格ができているから性格も丸くなるもの、というような常識を覆すような人物像だった。
 そんな世の人々に刺激を与え、世の中を明るくするような“不良老人”になるのもいいなあ、と思ったのである。


<後記>明日11月14日は親父の誕生日で、96歳になります。森繁久弥さんと同じ大正2年生まれです。森繁さんと同じように、大往生してもらいたいものです(^^ゞ。
 森繁さんといえば、「社長シリーズ」をよく観ましたが、淡島千景さんと共演した「夫婦善哉」が忘れられません。あとは加藤道子さんと二人だけでいろんな役を演じたラジオドラマ「日曜名作座」はすばらしかったと思います。2千回を超えたんじゃないでしょうか。半世紀近くも続いたんですね。
 独特の味のある語り口のすばらしさは、徳川夢声さんのそれと並ひ称されるものではなかったかと思っています。
 気遣いと優しさのある、酸いも甘いも噛み分ける方だったようですが、周囲の人たちに愛され尊敬されたからこそ、その不良性もニヤッと笑えて許されたんでしょうね。
 今のところ似ているのは白いヒゲだけですが、森繁さんのような愛される“不良老人”になってみたいものです(^^ゞ。
 

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この記事へのコメント

2009年11月13日 21:07
目指します。
不良老人。それからちょっと助平も('-')
遊哉
2009年11月13日 21:37
☆ moumou.h53さん、頑張って、目指してください(^^♪。助平のほうは、ちょっとだけよ~~(^^ゞ。
2009年11月13日 22:57
明日はお父様の96歳のお誕生日なんですね^^
おめでとうございます
90歳のうちの姫様・・・まだまだ若者ですね(笑)
遊哉さん~チョイ悪老人ですか~
そう言えばジローラモさんは・・・・きっと幾つになっても助平そう・・・





遊哉
2009年11月13日 23:43
☆ miiさん、はい、ありがとうございます(~_~)。
 96歳も90歳も、そこまでいくと大して違いはないような気がします(^^ゞ。できるだけ元気でいて、大往生してもらいたいです。
 ジローラモさんてエネルギッシュですね。色気があるのがすばらしいと思います。かわいい助平な老人になるでしょうね。
 バカ親父も、チョイ悪老人になりたいですが、もうだいぶ枯れてきちゃってます。どうしよう(~_~;)。
2009年11月14日 05:39
森繁さんの二男の方が最後に「楽しかったよ」と言って
お別れされたそうな。いい親子関係だったのでしょうね。
喋りの間の取り具合、話の面白さ絶妙ですね。
知床旅情の歌、語りかけるような歌い方で
しみじみしました。
2009年11月14日 10:04
そうだ! もっと ヤンチャにならなー ねぇ 遊さん
遊哉
2009年11月14日 10:15
☆ まりも さん、はい、次男の方がそんなことを話してましたね。いい親子関係だったんだと思います。
 森繁さんは、長男を亡くされたという親としては辛い経験をしていますが、そういう悲しさ、辛さなどを知った上で、ああいういろんな軽みの表現ができたのがすばらしいと思います。
 人を喜ばせることが好きだったんでしょうね。しゃべりの間の取り方、面白さは、そういう気持ちの表れだったのかもしれません。
 知床旅情をはじめとした歌も、同じなんでしょうね。
遊哉
2009年11月14日 10:16
☆ seiziさん、はい、お互い、もっともっとヤンチャになりましょうね(^^♪。
2009年11月14日 11:22
 遊哉さん、不良老人になるの~?!あはは~。不良老人とかちょい悪オヤジってのが流行っているよね。チビりんちゃんのカッコイイ遊哉おじいちゃんが見えます~。(#^.^#) 
2009年11月14日 12:04
森繁さんの弔辞の「私よりも若い奴がまた先に逝ってしまって」というのを何度も聞いて、これはたぶん、森光子さんのときも同じことを言われるのかな、なんて思ってましたが(^^ゞ

子どもや孫に囲まれての、老衰の大往生。
うらやましい限りです。
遊哉
2009年11月14日 13:23
☆ キョンさん、不良老人になりますよ~~(~_~)。
 ちょい悪オヤジっていうのは流行ってるけど、不良老人って流行ってますか~(^^ゞ。かわいい不良老人がいいなあ(^^♪。
 チビりんが思春期になっても「カッコいい」と言ってもらえるようなジジイになってみたいです(~_~)。
遊哉
2009年11月14日 13:36
☆ キーブーさん、そうですね、何度かそういう弔辞を聞いた覚えがあります。久世さんの時は、ちょっと悲痛な感じがしました。友達などが亡くなるのは、家族が亡くなるのとはちょっと違う哀しみがあるものです。
 森光子さんは、最近ちょっと衰えが見られますね。森繁さんの訃報に「後を追います」なんて言ってましたが、複雑な気持ちなんだと思います。年の順に逝くのがいいですね。
 死に方は選べないけど、できれば安らかに大往生したいものですね(^^ゞ。
2009年11月14日 17:56
親しみのこもった 不良老人は 目指すところです。
酸いも甘いも経験し 角がとれて 丸くなり
穏やかに過ごしてゆくなかでの ユーモアを忘れずに なんといっても 気持ちが 若いということでは・・・
遊哉
2009年11月14日 18:35
☆ 象山さん、“強く、楽しく、優しく、迷わず、淡々と”を目指してらっしゃるなら、“親しみのこもった不良老人”っていいんじゃないでしょうか(^^♪。
 “酸いも甘いも経験し……”ということでしょうね。それにちょっと“いたずら心”のようなものを加味すれば、よりいいような気がします(~_~)。
2009年11月14日 21:25
今日はお父様のお誕生日ですね
おめでとうございます
96歳の腕白ざかりですね
森繁さんは魅力溢れていましたね
おちゃっめという言葉が出て来てしまうほどに楽しい方でしたねえ
これからの老人大国の日本。こんな風な不良老人がカッコいい時代になるのかも。。
なりたいものですね
遊哉
2009年11月14日 21:58
☆ コケ魔女さん、ありがとうございます(~_~)。
 96歳の腕白といっても、頭の中が腕白になってるようで(^^ゞ。
 森繁さんは話が面白かったし、歌や演技には味がありました。お茶目で楽しい方だったと思います。
 これからの老人大国で、老人に元気がないと国全体が元気がなくなっちゃうかもしれません(^^ゞ。面白くて楽しい老人が増えるといいですね。
 そんなお茶目な不良老人になりたいものです(^^♪。
2009年11月14日 22:21
四角四面の人格者は面白みに欠けますね。
森繁さんつながりで、徳川無声の宮本武蔵を聞きたくて、昨日ネットを彷徨いました。
結構、値段がするものですね。
遊哉
2009年11月14日 23:38
☆ のんびり猫さん、人格者なんてめったにいないでしょうが、四角四面だったらおつき合いしたくないですね(^^ゞ。軽妙で洒脱な年寄りになってみたいものです(~_~)。
 徳川夢声の宮本武蔵を聞いたことがありますか。元々は戦前にラジオ放送されたんだと思いますが、中学か高校のころにラジオ関東で聴いたことがあります。あの話術は誰にも真似できないようなものですね。ラジオでやっていた「西遊記」も面白かったです。
 宮本武蔵はレコードになったんだと思いますが、CDになったのもあるんでしょうね。量的にも多いでしょうし、価値もあるから高いんでしょうね(^^ゞ。
2009年11月15日 15:17
目指してます。
ちょいワル老人。
というか、たぶんこの性格のまま年をとりたいんですけどね。
そうすれば・・・。
勝新太郎とか、三船敏郎が目標ですかね。
遊哉
2009年11月15日 18:37
☆ Pochiさん、はい、目指してください(^^♪。
 今の性格のままでいけば、ちょいワル老人になれるかもしれませんね(^^ゞ。
 勝新とか三船敏郎ですか~。目標は高く! がいいですね(~_~)。
pero
2010年02月02日 02:56
思い浮かんでしまうのは、近所のお爺ちゃん。70歳だけど本当に元気。
そんなお爺ちゃんの惚け防止は何と言っても長男のお嫁さんの悪口。
でも、それが全然嫌味がない。
私が来ると、楽しそうに嫁さんのちょっとした悪口を囃子歌にして歌ってくれるんです。
もう、それが楽しくて楽しくて・・・
「うちの真紀さん(嫁さんの名前)はね、」で始まる歌を聞くと、思わず手拍子で合の手を打っていました。
嫁さんが怒ってとがめようとすると、するするっと年とは思えない身のこなしで交わしつつ、「まあまあ」となだめながら、ついでに嫁さんのお尻をナデナデ。(爆)
そんなひょうきんでちょっぴり助平なお爺ちゃんに嫁さんもあきれながら「参りました」と降参するのが常。
私もお爺ちゃんになんとも笑ってしまう話ですが、
その度にお爺は「やったやった」と叫びながら私の手を取り、「ほら、お前はどうだ」とせがむので
私も勇気を出して?お嫁さんのお尻をタッチすると
「よいしょー」と近所に聞こえるような大声で叫ぶ始末。
とにかく元気で子供顔負けのお爺ちゃん。お酒が回るともっとすごいというから、つい期待してしまいます。
きっとこういう人は長生きするんだろうな、というか長生きして欲しいなと切実に思っています。
遊哉
2010年02月02日 22:08
☆ peroさん、いいですねえ、そのお爺ちゃん。愛すべき方だと思います。
 お嫁さんの悪口といっても、陰険でなくあけっぴろげで、ユーモアと愛情もあるんでしょうね。お嫁さんもそこまでやられると、憎めないし愛すべきお爺ちゃんだと思えるんじゃないでしょうか(~_~)。
 お酒が回ると、いったいどうなっちゃうんでしょうね。もっとすごくても、みんなが和やかに笑えるんだと思います(~_~)。
 そういう方には長生きしてもらいたいし、そんなおじいちゃんになってみたいものです。とはいえ、人それぞれで、バカ親父には無理そうですが、バカ親父風の不良ジイさんになってみたいと思ってます(^^♪。
 楽しい話を、ありがとうございました(~_~)。

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  • 話の達人になるには

    Excerpt:  徳川夢声という話術の達人がいた。以前にも書いたが森繁久弥と並び称されるような人である。  とはいっても、その声をラジオやテレビで聞いた人は、現在50代後半以上の人だと思う。 Weblog: 団塊バカ親父の散歩話 racked: 2010-02-21 12:37