「下戸の福音」
今日の夕刊(朝日新聞)の文化欄「私の収穫」に作家の浅田次郎さんが、面白いことを書いていた。
タイトルは「下戸の福音」。
まずは、短い文章なので全文を読んでいただこう。
次のようなものである。
<私は酒を飲まない。しばしば「飲まないのか飲めないのか」と訊(き)かれるが、そのつど愚問だと思う。正しくは「飲んだことがない」のである。
それにしても、喫煙者が奇人変人のように見られる昨今、酒を飲めぬ人間が奇人変人のごとく思われるのはどうしたことであろうか。
飲めぬ体質ではあるまい。父も母も酒豪で、ともに肝硬変から肝癌(がん)という王道を歩んで世を去った。そうした父母を見続けてきたので、酒を怖(おそ)れたと言えばはずれではあるまい。
しかし異論はある。酒は飲んでしまったら最後、読み書きができなくなる。実際にはどうか知らぬが、たぶんそうにちがいない。 何にもまして読み書きが好きであった私は、ゆえに酒を生活に持ち込むことができなかった。
何を大げさな、と思われる向きもあろうが、酒を知らぬ者の目にはあの飲んでいる時間、加うるに酔うている時間は、まこと時と金の空費としか映らぬのである。しかも夜ごとの累積を思えば、とうてい覚える勇気は湧(わ)かなかった。
酒を飲まぬ夜々を知る人は少ないであろう。長い。ものすごく長い。ヒマでヒマでどうしようもなく、しまいには読むことにも飽いて、書いてみようという気になる。
亡き父母は作家になった私を、しきりに怪しんでいた。しかしふしぎは何もない。ひとつのことに多くの時間を費やせば、何とでもなるのが人生である。>
下戸であるバカ親父にとっては、快哉を叫びたいような内容だが、中身はだいぶ違うようだ。
酒は飲んだことはあるが、飲めないとわかって飲まないバカ親父と比べると、浅田さんは飲めるだろうが飲まない、というのがすごい。
普通の社会生活をしていると、特に仕事をしていると、飲まなきゃいけない場面があって、飲みたくもない酒を飲んでしまうことがよくあるのである。
浅田さんだって、そういう場面は多々あったと思うが、それでも飲まなかったのだろう、としたら大したものである。
それに、飲まない理由が、「たぶんそうにちがいない」とは言うものの「読み書きができなくなる」から、それに「酔うている時間は、まこと時と金の空費としか映らぬ」というのだから。
たしかに、酒を飲んで酔ったら読み書きはできなくなるだろう。よほど酒に強くて、酔っても読み書きができるという人もいるのかもしれないが……。
浅田さんは、酒を飲まないということでいろいろ義理を欠いたこともあったに違いない。それでも、“酒を飲まない”ということを貫き通している、というのがすごいのである。
それは、ひょっとすると孤立を意味するかもしれないが、それでも酒を飲むことより、読み書きを優先したのだろう。
気の弱いバカ親父にはできないことである。
最後のほうで、酒を飲まないとヒマで仕方なくなり、読むことにも飽きて、書いてみようという気になる、というのもすごい。そういう気になる人は少ないだろうと思う。
さらに、“ひとつのことに多くの時間を費やせば、何とでもなるのが人生である”とはなかなか言えないものである。
“ひとつのことに多くの時間を費やしても、何ともならないのが人生である”というのが、バカ親父のような凡人なのである。
というか、面倒臭くてなかなか“ひとつのことに多くの時間を費やせない”のが、そもそもなのかもしれない。
なんとも、情ない話である(^^ゞ。
<後記>“人生は、空回り”で書いた三國連太郎さんもそうですが、ヒトカドのことを成し遂げる人というのは、どうも求道者的なところがあるような気がします。
自分がやりたいことのためには、その他の欲望を我慢するとか、自分を律して生きるようなところがあるんじゃないでしょうか。
のんべんだらりと生きていてはいけないようです。反省です。
反省するのは簡単なんですけどね……その後どうするかが問題のようで(^^ゞ。
この記事へのコメント
何とかなるまで多くの時間は、なかなか費やせないし^_^;
飲まないを貫いていることに感嘆しきり。
なかなかできることではありませんね。
何かを成し遂げる人は求道的、納得です。
尚且つ、意志が強い。私も反省だなぁ。
反省してもその時だけ、継続できないのは
意志の弱さかな。凡人とは言え、トホホ。
急性アルコール中毒の恐ろしさをもっと広報すべき。
そして夜の会合で仕事を進めないで下さい。
優しき遊哉さんに八つ当たりですね。ごめん。
飲むバカ飲まぬバカ どうせ同じバカなら飲まねば・・・とか、飲まないのは人生の半分を損しるとか、色々いいますが・・・・
ほろ酔い程度がいちばんよろしいですね。
杯を片手に桜を愛で、月を愛でる。
赤塚不二夫さんみたいにアル中になるまで飲んではダメですけどね。
そんな揚げ足取りは、脇に置いて
『時と金の空費』と問われてグーのねにパーな自分としては『飲めるだろうが飲まない』一徹さにあらためて本棚の浅田作品に手をかける週末でございます。
何とかなるまでの時間をつくるのも大変だし、それに集中することも、よほど自分を律する気持ちがないとできないでしょうね。それに、俗世界の義理も欠かないとダメそうです(~_~)。
パブリックとプライベートのスイッチも、たいがい錆びついちょりますなぁ。
リゾートでもないのにぃ、パーティーでもないのに、真っ昼間、酒飲み日本人おるざんす。
スマートのカケラも、ございましぇ~ん。
見ているこちらが、小っぱずかしいざんす。
日本じゃぁ見慣れた、ごくごくフツーの光景。
外の国では、トホホのホざんす。
そうそう、駅のホームでカップ酒、ナンで~って聞かれたけど。
んなモン、説明出来ないっしょ。
紳士のお国じゃぁないも~ん、って言っちまったらラクよねぇ。
浅田次郎さんのユーモラスなご本、好きざんす。
も一度読み返し、しよっかなぁ~?
PS:日本の新聞、ここでは高嶺(高値)の花ざんす。
新聞って、ニュースの報道だけじゃぁないのよねぇ。
こう言うさりげない記事が光ってる朝日、好きどしたえ ぇ。
またのアップ、楽しみざんす。
なんでも反省するのは簡単ですが、それを続けるのは難しいですね(^^ゞ。われわれ凡人の哀しさですね(~_~)。
女性の場合は、ヘンにしつこくお酒を勧める人がいると困ったでしょうね。仕事だと無下に断れないこともありますからね。
急性アルコール中毒もそうですが、アル中も意外と多いし恐ろしいです。アル中は人格を破壊する怖い病気です。タバコの害を言うんだったら、アルコールの害ももっと糾弾すべきです、とニコチン中毒のバカ親父は言いたい(^^ゞ。
昔、職場で、仕事時間が終わるとビールを出して、おつまみを買ってこさせて飲み始める上司がいました。仕事の場で酒を飲まないでほしいですね。
バカ親父も八つ当たりをしちゃいました。ごめん(~_~)。
“杯を片手に桜を愛で、月を愛でる”なんていいですね。ほろ酔い程度で楽しんでもらいたいものです(^^♪。
アル中は怖いです。自分だけでなく家族にも大変な迷惑をかけるから、ダメです(^^ゞ。
酩酊状態というのは精神がハイになるわけだから、何かいいアイディアでも浮かびそうですが、冷めてみるといいアイディアだったと思うことが、忘れていたり平凡なことだったりするんじゃないでしょうか。そういう意味でも「時と金の空費」かもしれません(~_~)。
「飲めるだろうが飲まない」という浅田さんを知った上で、彼の作品を、もう一度味わってみてください(^^♪。
外の国でも内の国でも、真昼間から酒を飲んで酔っ払っているような日本人はスマートのカケラもないです。恥ずかしいですね(^^ゞ。紳士の国じゃないんだと思います。オンとオフのスイッチをしっかり切ってほしいものです。
浅田さんのユーモアというか諧謔味のある本は面白いですね。もう一度、読み返してみてください(~_~)。
そちらでは、日本の新聞は高嶺で高値の花ですか~。本と一緒なんですね。
新聞は報道記事はもちろんですが、こういうコラムのようなものが面白いです。何かまた、面白そうなのを見つけたらブログ記事にしてみますね(^^♪。
お顔から想像してかなりの酒豪だとばかり思っていました。時間を有効に使っているからこそ、たくさんの作品が書けるのですね。
バカ親父も浅田さんのように時間を有効に使って、もっとブログ記事を書きたいんですが、根が面倒臭がりというか怠惰なもので、困ったものです(^^ゞ。
でも私のような凡人だと、飲まずにしっかりと時間を確保して読んだところで、ブログに書くのが精いっぱい。そのブログもあとで読み返すとお粗末な点が目についてイヤになるし。時間だけあっても才能がないと限界がありますねえ。。。
飲んで陶然となれたら、すばらしいかもしれないと思います。飲んで人と人とが胸襟を開くことができたら、いいなあとも思います。無意味ではないかもしれません。ただひょっとしたら、それは錯覚かもしれないんじゃないか、とも思っています(^^ゞ。
浅田さんは、読んで読んで読んで、その後で書かずにはいられなくなって書く、という感じかもしれません(~_~)。
われわれ凡人が読む量なんて高が知れているでしょうね。書く量も中身も高が知れていると思います(^^ゞ。
でも、ブログくらいはせっせと書きましょうね。才能がない普通の人が書くことにも、何か意味があると思います(^^♪。
酒の席も、嫌なのとそうでないのがあります。気が置けない酒飲みの友達とだったら楽しいです。無理強いされないし(~_~)。
無理強いされるような酒の席は嫌ですね。
仕事などの酒の席は普通は断れないですね。それで、仕事がスムースに進むこともあるのが日本の社会だから、ますます厄介です(^^ゞ。
浅田さんも酒の席には出るのかもしれません。ただ、飲まないんでしょうね。それで押し通せば、酒の席に招かれなくなるのかもしれませんが(~_~)。
それを押し通せるというのが、すごいですね(^^♪。
彼はお酒より甘いものが大好物だと読んだことがあります
私は飲兵衛でした
色んな失敗もしました
今は飲んでません
だから夜が長いかというと そうでもない
夜は 目が辛くて 本もパソもダメ
結局早寝になっちゃった
今は お酒という楽しみが無くても
充分楽しんでいける気がするので
このまんまでいいかな なんて思ってます
あまり、こだわらずに、まあ、いっか~ですが、適当に手をぬくというよりは、ここまでやれれば、まあ、いっか~でがんばる1日の中で範囲を見極めるのが大事と考えています。
石の上にも○年で、それなりにです。
ちなみに、30年以上バイオリンを弾いていますが、なかなかうまくなりません。毎日10分でも楽器に触ることが大事で年をくっても少しずつうまくなることができるようです。
少し、自慢っぽくなっちゃいましたね。ごめんなさい。
彼は甘いものが大好物なんですね(^^ゞ。それでも、両親が酒飲みだというから飲めないわけじゃないでしょうけど、飲まないというのがすごいです。
飲兵衛だったayonさんが飲まなくなっても、夜は長くないですか~。たしかに目も老眼等になってくると、本を読むのも辛くなってきますね(^^ゞ。うちでも、カミさんは片目が白内障だし、バカ親父は緑内障になりかけてます。無理ができなくなってきてます。
それでも本が好きで読んでますが、これも人それぞれでいろんな楽しみがあって良いんじゃないでしょうか。酒を飲むことも否定はしませんが、酒のコワいところは何かを忘れるというか、嫌なことをごまかすために飲むようになるとまずいと思います。アル中にもつながるでしょうね。
お酒がなくても充分楽しんでいけるなら、そのほうが良いんじゃないでしょうか(~_~)。いろいろ大いに楽しんでください。早寝早起きで(^^♪。
タバコは諸悪の根源(?)かもしれませんが、酒も怖いものがあります。まあ、それぞれ適度が必要だということでしょうか。それに時と場所をわきまえることも大事なんでしょうね。嗜好品というのは、個々人の責任で嗜むものなんだと思います(~_~)。
それはさておき、仕事でも趣味でもそうですが、自分が好きなことができればそれが一番幸せだと思っています。好きなことなら辛いことでも耐えられるし長続きしますが、好きなことばかりをできる訳がないから困りますね。そういうときは、“まあ、いっか~”で自分のできる範囲を見極めてやることが大切でしょうね。
30年以上バイオリンを弾き続けているんですね。すごいことだと思います。継続は力なり、と言われますが続けることが大事でしょうね。面倒くさがり屋のバカ親父は、やろうとおもってもなかなか続けられません。そんなバカ親父が、ブログを5年もつづけていることは驚異的なことです(~_~)。他にも続けたいことがあるので、無理せずに頑張っていこうと思っています(^^♪。
お酒を断れる時はキッチリ断って、ゴチャゴチャやってください(^^♪。
読んでおいでだろうなあと思いつつ読んでました。
「何かきちんと仕事を残している人は、大抵、下戸である」と言った人もありました。
お酒を呑む輩は、ひたすら脳みその皺を伸ばすために膨大な時間を費やしています。
実感してます。
でも、銃うんぬんの締めは、なかなか、下戸には思えない切れがあってにやりとしました。
そうですねえ、仕事によるのかもしれませんが、酒を飲んでもしっかりとした仕事をした人を知っています。ただ、元々それほど酒には強くない人でしたが、酒を飲まなきゃ仕事が進められないような仕事でした。残念ながら、定年を目前に病死しました。酒で命を縮めたかもしれません。叔父ですが、尊敬できる人でした。
飲みすぎると、脳みその皺を伸ばすかもしれませんね。ホドホドにがいいんでしょうが、酒飲みには難しいんでしょうね。
“銃うんぬんの締め”というのがよくわかりませんが(^^ゞ、“下戸には思えない切れがあって”はお褒めの言葉、と承知しておきます(~_~)。
ひょいと煙に巻いちゃってますね。
ごめんなさい・・・消しゴムが欲しいです!
銃の話は同じ浅田さんの欄で、禁煙だらけの最後に出てきた話でしたね。
韓国でやたら禁煙場所が多いのに辟易して、「煙草と銃とどっちが危険なのだ。順番を勘違いしている国はこれだから・・・」と息巻いておられました。
この口調が、とても、下戸とは思えない親近感があって、ついひと言、余計なことを書いてしまったようです。
私、心底、お酒を呑まないでおられる方、尊敬してます。その意志の強さが羨ましくて。
でも、この二つのコメント、読まれたらごしごしして欲しいけど・・・。
了解です。同じ欄で別の日に書かれていたことですね。あれって韓国でしたっけ、米国だったような記憶があるんですが、定かではありません(^^ゞ。確かにねえ、煙草より銃を規制したほうがいいと思います。
ズバッと言ってのけるところは、痛快でしたね。下戸、上戸は関係ないかもしれませんが、下戸って意外と毒舌家が多いかもしれません(^^♪。
バカ親父も今でこそ、酒はきっぱり断れますが、仕事をしているときはなかなか断れませんでした。浅田さんは意志が強いですね。仕事に対する自信もあるんでしょうし、責任感や矜持が強い方なんだと思います。
二つのコメントは貴重なご意見が書かれてますので、ごしごしはしませんよ~(^^ゞ。