『ミスター・クラリネット』
英国推理作家協会賞とマカヴィティー最優秀新人賞を受賞したというミステリーの紹介である。
ミステリーでありノワール(暗黒小説)であり、スリラーともハードボイルドとも冒険ものとも言えるような物語である。
上・下に分かれている文庫本だが、それぞれの帯に霜月蒼さん(ミステリ研究家)のこんな惹句が載っている。
「理性も秩序も黒々と溶け崩れた土地。
なんと恐ろしいノワール・スリラーだろう。
これは地獄の物語である。」
「呪術の跳梁。悪鬼が吹く魔笛。
狂気と悪徳の底で、それでも本書が問うのは
正義――地獄の底の正義なのだ。」
こんな文句を読んだら読まずにはいられない(^^ゞ。
ということで読んだのだが、面白かった。
あらすじは、いつものごとくカバー裏から。
[上]
<生きて連れて帰れば1000万ドル、死体でも500万ドル。それが行方不明の少年チャーリーの発見にかけられた報奨だった。依頼人はハイチの実業界を牛耳るカーヴァー一族。幼女惨殺犯3人を殺して服役、出所したばかりの元私立探偵マックス・ミンガスにとっては喉から手が出るほど欲しい金だ。だが、行く先はブードゥーの呪術と占いが力をふるう、法なき地ハイチ。しかも前に雇われた3人の探偵は全員が悲惨な目に! 危険覚悟で旅立ったマックスを待っていたものは?>
[下]
<「チャーリーは生きている」ヴードゥーの占い師ははっきりそう言った。暴動のさ中に誘拐された3歳の少年――誰もがその死を確信していたが、マックスは占い師の言葉を無視できなかった。カーヴァー一族に激しい敵意を抱き、誘拐の容疑者と目される、スラム街の実力者ポールを追う一方、マックスは独自の捜査を進めた。やがて彼の前に、幼い子供たちを次々とさらうハイチ版ハーメルンの笛吹き男「ミスター・クラリネット」の存在が浮かびあがってきた……!>
主人公のマックス・ミンガスは出所したばかり。
元マイアミ市警の刑事だったが、妻サンドラと結婚するために辞め、私立探偵で生計を立てていた。幼女惨殺犯3人を殺して服役したが、その間にサンドラを交通事故で亡くし、「おれの人生は失敗だった」と思っている男である。
<出所したマックスには、まだマイアミの家と車があり、預金口座にも九千ドルばかり残っていた。しかし、それで暮らせるのはせいぜい四、五ヵ月で、その後は家を売って仕事を見つけるしかなかった。厳しいだろう。雇ってくれるものなどどこにいる? 元警官(エックス・コップ)、元私立探偵(エックス・PI)、元犯罪者(エックス・コン)――バツが三つで、マルはなし。歳(とし)は四十六。新しいことを覚えるには歳をとりすぎ、あきらめるには若すぎる。いったいなにをすればいい? バーの仕事か? 厨房(ちゅうぼう)業務か? レジの荷物詰めか? 建設業か? ショッピング・モールの警備員か?>
生きる希望も失いそうだった彼に、誘拐されたわが子を探してほしいというハイチの富豪アラン・カーヴァーという男からの依頼が入る。莫大な報奨金である。
<カーヴァーの仕事をとるか、出所後の世界で一か八かやってみるか。それ以外に道はなかった。>と思うマックスだった。
警官時代の最後の仕事でハイチに関わる嫌な思い出があり、カーヴァーからの依頼をためらっていたマックスだが、夢に亡き妻が現れ、引き受けるように訴えた。
こうして、マックスはブードゥーや黒魔術の支配するハイチへと単身乗り込んで行ったのだった。
ハイチといえば2010年に起きたマグニチュード7.0の大地震で記憶に新しいが、この物語はその前の1996年11月から始まる。
長年の圧制に支配されていた国で、混沌に支配されていた。迷信と真実との境界が曖昧で、魔術的な雰囲気が漂い、スラム街の臭気が漂うような筆致で描写されている物語である。
理性の通用しない情念が渦巻く世界で、マックスはその不条理と闘っていく。
しかし、その裏に一つの謎というか企図された罠が隠されていることをマックスは知らなかった……。
<今日のお薦め本>
『ミスター・クラリネット MR. CLARINET』[上・下] ニック・ストーン 著、熊谷千寿 訳、RHブックス+プラス(武田ランダムハウスジャパン)、上945円、下966円、11.11.10. 第1刷発行
この作者について、カバー裏から紹介しておきます。
<1966年、ケンブリッジに生まれる。父親はスコットランド人の歴史学者、母親はハイチの名家の出。幼い頃はハイチで暮らし、1971年に英国に戻る。十代の頃はボクサーを目指していたが、ケンブリッジ大学入学後は歴史学に専念する。デビュー作の本書で2006年度英国推理作家協会イアン・フレミング・スティールダガー賞、2007年度マカヴィティー最優秀新人賞受賞。2007年には本書の前日談ともいえる King of Swords を、2011年にはマックス・ミンガス・シリーズ第3弾 Voodoo Eyes を発表、いずれも好評を得ている。>
<後記>迫力ある語りで、特に後半は頁を閉じることができなくなる物語です(^^ゞ。
同時に、ハイチという国の暗い歴史も知ることとなります。
カーヴァー一族の長であるアランの父親のグスタヴ・カーヴァーとか、チャーリーの誘拐の容疑者と目されスラムを仕切る謎の男ヴィンセント・ポールとか、アランの部下でマックスの案内役を務める美しい女性シャンタールとか、なかなか一癖も二癖もある魅力的(?)な人物も登場します。
迫力のある面白い物語です(^^ゞ。
一昨日(12日)の夕空です。快晴でした。
今日はバレンタインデーですが、うちでは長女の誕生日です。
ということで、昨日はアウトレットにカミさんとプレゼントを買いに行きました。
時々日が射しましたが、空には薄い雲がありました。
夕方には、雲がますます増えてきていました。夜には雨になりました。



この記事へのコメント
面白そうですね。
こちらでは、東金市で拳銃による人殺しがあって騒然としておりました。
あのデニーズのそばにあるブックオフや、ホームセンターは、よく行くので、もし行っていたら交通規制で大変なことになったかも・・・
テレビのニュースで見てビックリしました。
息子にチョコをあげなくてもと思ったけれど何故か買ってしまった(^^)
家族客が多いファミレスで殺人事件があると余計に驚くわね!!
今後そのお店ってどうなるんだろうと余計な心配をしてしまいました。
この本の話もなかなか面白くて、映画化したらよさそうです(^^ゞ。
東金市の拳銃による人殺しは暴力団がらみのようですが、市民のいるところであんな事件が起きるというのが嫌ですね。
近くのブックオフやホームセンターによく行かれるんですか。なんだか気持ち悪いですね。その時に行かなくてよかったですね(~_~;)。
息子というのは母親にとっては、ある意味永遠の恋人なのかもしれませんね(^^ゞ。チョコをかってあげたなんて、かわいい(~_~)。
まったくねえ、ファミレスであんな事件を見た家族というか一般客にとってはショックだし、もしも何かあったらと思ったら怖いですね。しばらくは客足も少なくなるかもしれません。店にとっても、堪りませんよねえ。
私の亡くなった母親の誕生日です。
バカ親父なんて、亡くなったお袋の誕生日なんて、忘れちゃいました(~_~;)。
>新しいことを覚えるには歳をとりすぎ、あきらめるには若すぎる。
なんだかすごく共感しました。ホント、40代後半というのはこんな感じ。私もしみじみ感じているところです。
ハイチには、なんだか真っ暗なイメージしかないです。貧困と、ゾンビ発祥の地だからでしょうね(笑)
ブードゥーや黒魔術は怖い(*_*)
でも、もったいないという気持ちもわかります。この本の後半のほうで、隠されていた謎(罠)が明らかになるにつれて、読み進むのが惜しまれました。読んじゃいましたけどね(^^ゞ。
そうですね、40台後半というのは若くもないし年寄りでもないし、中途半端な年齢かもしれませんね(^^ゞ。今になって思うのは、新しいことを覚えるには年齢は関係ないということです。とはいえ、できるだけ若い方がいいことは確かだから、やりたいことはやり始めた方がいいですよ。頑張ってください!(~_~)。バカ親父から見たら、まだずーっと若いんですから(^^ゞ。
ハイチというのは日本人にはなじみは薄いですが、ヴードゥーとか黒魔術とか、怪しい雰囲気がありますね。大震災で自衛隊も行きましたが、テレビの影像で見るだけでもその貧困さがわかりました。日本人の常識などはまったく通用しそうもないところのようです(~_~;)。
“ミスター・クラリネット”というタイトルもいいですね。面白い小説というか映画もそうですが、単純なタイトルの方が面白いものが多いような気がします(^^ゞ。
この本を読んでいると、ブードゥーと黒魔術は違うものだそうです。黒魔術の方が怖いそうです(~_~;)。