団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『パーフェクト・ハンター』

<<   作成日時 : 2012/03/02 23:38   >>

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            [夕方の公園の水溜り]

 『パーフェクト・ハンター』というミステリーの要素もある冒険小説を紹介してみる。
 主人公は、ヴィクターというプロの暗殺者である。

 プロローグは、次のように始まる。


フランス パリ
 月曜日
 六時十九分 中央ヨーロッパ標準時

 ターゲットは写真よりも老けて見えた。街灯の明かりのせいで、顔に刻まれた深いしわと病的なまでに青白い顔色が、よけいに目立っていた。緊張のあまりなのか、あるいはカフェインを摂(と)りすぎただけなのかもしれないが、ヴィクターには、焦(あせ)っているように見えた。しかし、どんな理由にせよ、いまから三十秒後にはどうでもよくなる。
 資料ではアンドリス・オゾルスという名前だった。ラトヴィア国籍。五十八歳。身長五フィート九インチ。体重百六十ポンド。右利き。目立った傷跡はない。白髪の混じる髪は、口ひげと同様に短く刈りそろえられていた。目の色は青。近視のため眼鏡(めがね)をかけていた。粋な格好だった。落ち着いた色のスーツの上にコートを着て、磨(みが)き込まれた靴を履(は)いていた。小さな革張りのアタッシュケースを両手でしっかり抱きかかえていた。
 路地の入口で、オゾルスが肩越しに振り返った。素人(しろうと)丸出しだ。そんなにあからさまな態度を取れば、尾行のミスなど目にはいらないし、目にはいってもミスだと気づかない。ほんの数ヤード先にいる男の姿も見えていない。オゾルスを殺すためにいる男の姿が。
 ヴィクターはオゾルスが明るみから離れるのを待ってから、一定の力でなめらかに引き金を引いた。
 サプレッサーで抑制された銃声が早朝の静けさを損なった。オゾルスは立て続けに二度、胸骨を撃たれた。銃弾はローパワーの五・七ミリ亜音速弾だが、口径の大きな弾で撃ったとしても、これ以上の致命傷にはならない。銅被甲した弾丸が皮膚、骨、心臓を突き抜け、脊椎(せきつい)のあいだに二発並んで止まった。オゾルスは腕を広げ、頭を片側に向けて、鈍い音とともに仰向(あおむ)けに地面に倒れた。>


 こうしてヴィクターは、いとも簡単に鮮やかに仕事を遂行する。物足りないくらいの仕事だった。
 彼はオゾルスが持っていたフラッシュメモリーを奪う。これを所定の受け渡し場所に置けば、仕事は完結する、はずだったのだが……
 ホテルに戻ると、暗殺チームの襲撃を受けた。
 その全てを返り討ちにしたのだが、ヴィクターは自分がハントされる側になったことを悟る。
 次々と刺客を送り込まれ、命を狙われることになった。
 いったい誰が自分の命を狙うのか? それを突き止め抹殺しないかぎり生き残る道はない。
 
 そんな時、暗殺の依頼人とヴィクターとの連絡係(仲介者)であるレベッカという女性が接触してくる。彼女自身も命を狙われているというのだ。二人が会うのは、はじめてである。
 今回の暗殺を表ざたにしたくなかった敵は、ヴィクターを抹殺しようと思ったのだが失敗し、計画が破綻したと見て、関係者全員を始末しようとしているのである。
 レベッカは生き残る一縷の望みをヴィクターに託そうと思ったのだった。
 最初、ヴィクターはレベッカの存在が足手まといになると思っていたが、敵を突き止めるためには彼女の調査能力が必要だと納得し受け入れていく。
 二人はジリジリと敵に迫っていく。ところが敵もさるもの、切り札を切ってきた。
 リードというすご腕の殺し屋を差し向けてきたのだった。
 ヴィクターとレベッカは、はたして、敵を突き止め抹殺し、生き延びることができるのだろうか?

 あらすじは、ここまで(^^ゞ。
 緊張感溢れるスリル満点の冒険アクション物語である。
 二人がフラッシュメモリーの中身を解明しようとする謎解きの要素も加わる。また、ある事情でロシアの情報機関もヴィクターの命を狙ってもいる。
 フラッシュメモリーの中身にまつわる動きも同時進行していく。
 体力・知力を駆使した壮絶極まりない闘いが繰り広げられていくのである。

 主人公のヴィクターはフリーランスの暗殺者だが、これまで“自分というもの”を殺して生活することで生き延びてきたのだが……。
 レベッカがヴィクターに会って1週間ほどした時のエピソードが面白いので、ちょっと長くなるが紹介しておく。
 心を開かない彼に、彼女がなんとかして、その張り巡らされた壁を少しずつ削り取ろうとするシーンである。


<「じゃあ、なぜそんな仕事をしているの?」
 彼がぽかんとしてレベッカを見た。「なんだって?」
 「なぜそんな仕事をしているのって訊いたの」
 彼がその問いと格闘しているあいだ、レベッカは彼の顔をつぶさに見ていた。軽く切り返されるか、むげにあしらわれるかだろうと思った。ちがった。戸惑いの表情を、苦悩の表情さえ浮かべた。レベッカはいったそばから悔やんだ。
 「いいわ」空気を軽くしようと、レベッカはいった。「答えなくても」
 「これしかまともにできることがなかった」
 弁解でもなく、反省ですらないことが、レベッカにはわかった。告白(コンフェッション)だった。彼は顔をそむけ、ベッドのバックパクをつかんだ。レベッカは彼を見つめていた。殺し屋ではなく、ひとりの人間に見えてきた。
 「そんなことで、どうやって夜、眠れるの?」
 「まず目を閉じる」彼が説明した。真顔で。「あとは自然に任せる」
 レベッカの鼻孔が広がった。「冗談はいわないのかと思ってた」
 「勉強中だ」
 かすかに得意げな顔つきだった。いい気になっているようだけれど、ある種の話題からの回避反応ではないかと、レベッカは思った。「名前を教えて」
 「なに?」
 「知り合ってほぼ一週間なのよ」レベッカはいった。「それなのに、本名で呼ぶこともできないなんて」
 もっとまえに訊きたかったのだけれど、どうしても勇気が出なかったのだった。ところが、勇気など必要なかった。レベッカは彼の弱さを見た。自分の話をさせて、恐怖を植えつけたらしい。
 レベッカは、彼がバックパックをいじっている様子を見ていた。彼はなにかをチェックしているふりをしていた。「呼ぶ必要はない」
 「教えてよ」
 彼はチェックしているふりを止め、顔をあげてレベッカを見た。「どうしても呼びたいなら、ジャックとでも呼べ」
 「それは本名じゃないでしょ」
 「そのときどきに携帯しているパスポートに記された名前が、私の名前だ」
 レベッカは眉をひそめた。「じゃあ、ジャックと呼べっていうの?」
 彼がバックパックを肩にかけた。「パスポートを替えるまでは」
 (後略)> 


 はたして、この二人の関係はどうなっていくのだろうか?(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『パーフェクト・ハンター THE HUNTER』(上・下) トム・ウッド 著、熊谷千寿 訳、ハヤカワ文庫、上・下とも各882円、12.01.25. 発行

<後記>テンポのいい文章と、次から次へと起きる危機、また危機の連続で、ドキドキしながら一気に読み進められると思います(^^ゞ。
 パリをはじめとしたヨーロッパ、アフリカ、北アメリカと場面も次々に変わります。世界各地を舞台にスケールの大きな、さまざまな陰謀が絡み合う重層的に展開するストーリーです。
 ヴィクターやレベッカ、それに敵となる登場人物の描き方がしっかりしているので、より緊張感が感じられます。
 面白いですよ(^^ゞ。

 今日は一日雨でした。夕景と夕空です。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
これは買ったような気がしたので、探したけど、出てこないから、立ち読みしただけかもしれません(^^ゞ
ちょっと暖かくなってきた感じですね。
もう少しの我慢でしょうか?

きのうの『タモリ倶楽部』はおもしろかったですね。
エンジンを自作する人達を紹介してました。
ジェットエンジンまで作っている人がいました。
すごい趣味を持つ人がいる者です。
ねこのひげ
2012/03/03 06:13
☆ ねこのひげ さん、わりと最近の刊行だから、本屋で立ち読みされたかもしれません(^^ゞ。新人作家ですが、上手いです。
 朝の寒さが和らいできましたね。もう少しの辛坊でしょうね(~_~)。
 昨日の「タモリ倶楽部」、見ましたよ。面白かったですね。蒸気機関がレトロでよかったです。模型飛行機の内燃機関も、面白かったですね。自分でつくるというのがいいですね(~_~)。
遊哉
2012/03/03 09:40

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