団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『吉野弘詩集』

<<   作成日時 : 2015/04/10 22:27   >>

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       〔「SORA!」 「何ですか? むやみに呼ばないでください!」(^^ゞ〕


 このブログを始めてすぐのころに、吉野 弘さんの「祝婚歌」という詩を紹介したことがある。
 結婚というもののあり方を歌った詩で、なるほどと思わされるものだ。結婚式で披露されることも多いらしい。

 その吉野 弘さんの詩を集めた『吉野弘詩集』を紹介してみる。
 人の心情を細やかに描いているものが多い。なかには、これが詩なの? と思わされるようなものもある。ショート・ショートのような物語性のあるものもある。なかなかいいのである。

 さっそく、いくつか引用してみる。(各詩の末の「……」以下は、バカ親父のコメントです)


  一枚の写真

 壇飾りの雛(ひな)人形を背に
 晴着姿の幼い姉妹が並んで坐っている
 姉は姉らしく分別のある顔で
 妹も妹らしくいとけない顔で
 姉は両掌の指をぴったりつけて膝の上
 妹も姉を見習ったつもりだが
  右掌の指は少し離れて膝の上

 この写真のシャッターを押したのは
 多分、お父さまだが
 お父さまの指に指を重ねて
 同時にシャッターを押したものがいる
 その名は「幸福」

 幸福が一枚加わった
 一枚の写真

 ……成長していく娘が、ひな祭りを迎えるのは嬉しいものです。そんな父親の心情を、とても巧みに描いていますね。


  早春のバスの中で

 まもなく母になりそうな若いひとが
 膝の上で
 白い小さな毛糸の靴下を編んでいる
 まるで
 彼女自身の繭(まゆ)の一部でも作っているように。

 彼女にまだ残っている
 少し甘やかな「娘」を
 思い切りよく
 きっぱりと
 繭の内部に封じこめなければ
 急いで自分を「母」へと完成させることが
 できない
 とでもいうように 無心に。

 ……女性が母親になるときには、いろんな覚悟がいるものだと思いますが、男にはなかなかわからないことです。詩人というのは、そんなことも感じられるんですね。なるほどと思わされます。


  妻に

 生まれることも
 死ぬことも
 人間への何かの遠い復讐(ふくしゅう)かも知れない
 と嵯峨(さが)さんはしたためた

 確かに
 それゆえ、男と女は
 その復讐が永続するための
 一組の罠というほかない

 私は、しかし
 妻に重さがあると知って驚いた若い日の
 甘美な困惑の中を今もさ迷う

 多分、と私は思う
 遠い復讐とは別の起源をもつ
 遠い餞(はなむ)けがあったのだと、そして

 女の身体に託され、男の心に重さを加える
 不可思議な慈(いつく)しみのようなものを
 眠っている妻の傍でもて余したりする

 〔註「嵯峨さん」は、嵯峨信之さんのこと。第一連の詩句は、嵯峨さんの詩集『魂の中の死』所収〈広大な国――その他〉の中の一節。〕

 ……人の生と死、あるいは男と女とか夫婦について、考えさせられます。夫婦という関係は、面白いものだと思います。


  少年少女たち〔の中から、その(三)〕  

  (三)
 「同じクラスの男の子にケトバサレ、いじめられるので
 強くなりたい」
 小学二年の女の子が
 ある日、民放ラジオの「全国子供電話相談室」に
 相談を持ちこんだ。

 回答者の女の先生との間で話のやり取りが始まる。
 「その男の子、ふざけて蹴るの? 痛いほど蹴るの?/
 痛いほど蹴るの/困るわね、先生に言った?/言った/
 先生に言っても駄目?/ダメ/……だったら、その男の
 子にこう言いなさい、蹴られると痛いからヤメテって、
 ハッキリ言いなさい/ハイ/カヨちゃん! カヨちゃん
 って言ったわね/ハイ/その男の子、カヨちゃんを好き
 なのかも知れないよ。男の子ってね、好きな女の子に、
 よく乱暴をするものなの。カヨちゃんは可愛い女の子な
 んじゃない? ねえ、カヨちゃん、自分のこと、鏡で見
 て可愛いと思う? カヨちゃんは美人なんじゃない?
 どう?/フツウだと思います」

 そう……と言ったまま、回答者は、しばし絶句。
 聞いていた私は、と言えば
 カヨちゃんの繰り出したスーパーパンチ「フツウ」を
 かわす術もなくKOされていた。

 ……子どもというのは、大人の意図したとおりにならないし、その意図を無意識にひっくり返しもします。そのギャップが楽しいし面白い(^^ゞ。


  仕事

 停年で会社をやめたひとが
 ――ちょっと遊びに
 といって僕の職場に顔を出した。
 ――退屈でしてねえ。
 ――いいご身分じゃないか
 ――それが、一人きりだと落ちつかないんですよ
 元同僚の傍の椅子に坐ったその頬はこけ
 頭に白いものがふえている。

 そのひとが慰められて帰ったあと
 友人の一人がいう。
 ――驚いたな、仕事をしないと
   ああも老(ふ)けこむかね
 向かい側の同僚が断言する。
 ――人間は矢張(やは)り、働くように出来ているのさ
 聞いていた僕の中の
 一人は肯(うなず)き他の一人は拒む。

 そのひとが、別の日
 にこにこしてあらわれた。
 ――仕事が見つかりましたよ
   小さな町工場ですがね

 これが現代の幸福というものかもしれないが
 なぜかしら僕は
 ひところの彼のげっそりやせた顔がなつかしく
 いまだに僕の心の壁に掛けている

 仕事にありついて若返った彼
 あれは、何かを失ったあとの彼のような気がして。
 ほんとうの彼ではないような気がして。

 ……リタイアした男には、一人きりでいられない人もいるようです。それは一種の病気かもしれません。会社人間でいるうちに発症したんでしょうね。男って哀しい生き物です(^^;)。


  主婦〔「蟹と主婦」から〕

 「無職と書く主婦の所在なさ。いつまでも他人の庇(ひさし)の下に宿を借りているような――。」
 と
 ラジオ番組に寄せた或る主婦の感想を
 アナウンサー氏が読んでいる。
 それでは、と
 「主婦」を、私はこんなふうに読み
 もっと所在ないものにする。
 「主(おも)に箒(ほうき)を使う女」――と。
 ところが、箒の先にチラつくのは、
 主人という名の粗大ゴミです。
 粗大ゴミである私は
 「主婦」の読み方を変えなければなりません。
 「主(あるじ)に箒を使う女」――と。
 強い主婦の時代が来ています。

 ……男(夫)は“粗大ゴミ”で、リタイアすると“濡れ落ち葉”になることが多いようです。カミさんに掃きだされないように、気をつけなきゃ(^^)/。


  「止」戯歌(ざれうた)〔の中から、「正」の一篇〕

 「正」は「一」と「止」から出来ています。
 信念の独走を「一度、思い止(とど)まる」のが
 「正」ということでしょうか。
 正しさを振りかざす御仁ほど
 自分を顧みようとする資質を欠いているようです。
 正義漢がふえると、揉(も)め事もふえるのは
 そのためです

 ……正義の名のもとに戦争を始める国もあります。“正義の戦争”が裏を返せば(相手から見れば)テロになっていることもあるんじゃないか? と思うことがあります。軽く正義を口にする政治家には、気をつけたいものです。


  雲について

 存在のすべてを
 手際よく覆ってみせる
 人間の論理
 のように
 空を覆った雲。
 が
 裂け
 ちぎれて
 遁走(とんそう)する。
 遁走しながら
 幾通りも
 幾通りも
 美しい弁明の論理を
 塑像の如く刻もうとする。
 崩れかかる
 その懸命な試みの背後から
 青い空が大きく展(ひら)け
 にがい永遠が華やいでいる

 ……空や雲の様子が好きでよく写真を撮りますが、“雲について”こんな感じ方もできる詩人はすばらしい。写真は撮れても、詩は書けそうもありません(^^;)。


 ほんのわずか紹介しただけだが、いかがだったろうか。


<今日のお薦め本>
『吉野弘詩集』 吉野 弘 著、ハルキ文庫、734円、15.02.18. 第二十一刷発行(99.04.18. 第一刷発行)
 目次から、内容を紹介しておきます。(赤字は、上で紹介した詩です)
四季
 
 二月の小舟/譲る/つくし/杏(あんず)の里から/三月/一枚の写真/池(いけ)の平(たいら)/菅公は超多忙――京都・北野天満宮/竹
 
 みずすまし/緑濃い峠の/物理の夏/熟れる一日
 
 歳時記/愛そして風/草/落葉林/秋景/紅葉(もみじ)(黄葉)清談/石仏――晩秋
 
 冬の鳩に/短日/雪の日に/氷よ 氷/元日の夕日に
生きる
 奈々子に/初めての児に/I was born/父/創世紀――次女・万奈に/早春のバスの中で/白い表紙/紹介/一枚の絵
日常さまざま
 夕焼け/或る声・或る音/好餌/生命は/虹の足/祝婚歌/妻に/或る朝の/某日/素直な疑問符/日向で/自分自身に/台風/十三日の金曜日/夕方かけて/少年少女たち/酒痴/冷蔵庫に/仕事/円覚寺/人形譚
言葉いろいろ
 風流潭/修辞的鋳掛屋/夢焼け/食口/貝のヒント/韓国語で/SCANDAL/豊かに/変「お」蝶々/戯歌(ざれうた)四つ
漢字遊び
 漢字喜遊曲/過/争う/「目」の見方/母・舟・雨/往と住ほか/亥(い)短調/王と正と武/同類ほか/畢と默と表裏/蟹と主婦「止」戯歌(ざれうた)/「馬」ほか四篇/「省」ほか一篇/怏と快――「人生」という課題に答えて/漢字喜遊病・症例報告
空山海・樹ほか
 一番高いところから/真昼の星/雲について/山が/ある高さ/富士/空の色が/海/湖/樹/或る位置/夥しい数の/四葉のクローバー/花は開いて咲く/茶の花おぼえがき/種子について――「時」の海を泳ぐ雅/魚のようにすらりとした柿の種
解説・清水哲男 「心の分量」まで……
エッセイ・山田太一 貴にして重い
年譜
参考文献

吉野弘詩集 (ハルキ文庫)
角川春樹事務所
吉野 弘

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<後記>こんな感じ方、あるいは見方があったのか! と驚かされます。
 小難しいものという“詩というものの概念”もひっくり返されます。
 そんな意外さが、とても面白いし、いろんなことを考えさせられる詩集です。
 「祝婚歌」も載せられています。

 昨日(9日)は晴れましたが、夕方になるにつれて雲が増えてきました。

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 夕方の散歩の時には、西の空に長い飛行機雲の残りがありました。

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 原っぱに出ると、白花ハナズオウが今年も咲き始めていました。

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 斜面を下りて帰ります。

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 桜の枝先に若葉が出てきていました。

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 SORAはやってきた柴犬にロック・オン(^^ゞ。

 今日(10日)は曇りで、午後3時ころから雨が降り始めました。

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 雨の中でも、子どもたちが遊んでいます。
 原っぱに出て、公園を一周。

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 山桜が咲き誇っています。

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 帰ることにしました。

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 斜面を下りていくと桜が舞い散っていて、SORAの背中にも2片貼りつきました(^^ゞ。

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 もう少し経つと、桜のシルエットもモサモサになると思います(^^)/。

 明日(11日)は雨のち曇りで、肌寒そうです。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
遊哉さん、おはようございます(^^♪

SORAちゃんの「むやみに呼ばないでください!」
って云うコメントに、まず、微笑(*^▽^*)
正の字のコメントに、とても、自分のことを、
言われているみたいで、特に、
『自分を顧みる資質を欠いている様です。』
には、そうなんだと、とても興味深く、
拝見しました(^^♪

いつも、お立ち寄り頂きまして、
ありがとうございます(^^♪
アイリス
2015/04/11 11:29
吉野 弘さんの詩は、こちらのブログで知りました。
小説も詩も、何か偶然な出会いがないと読みませんもんで、このように紹介していただくと、カルチャーショックを起こします。
詩というより、もやは小説の一説のようです。
文字の背景が浮かびます。
世間知らずの女が言うのもなんですが、男性が描く詩の方が、いろいろな感覚を想像させますね。共感とは、ちょっと違うけど、ハッとする表現があります。
真似しようとしても、
カラス
2015/04/11 14:43
あっ、スミマセン。途中で何か触ってしまい、なんと、コメントされてしまいました。

真似しようとしても、浅い人間の私には無理だと
その程度のことでした。
ありがとうございます。
カラス(つづき)
2015/04/11 14:48
☆ アイリスさん、こんばんは♪……になっちゃいました(^^ゞ。
 たまにですが、用もないのに「SORA!」と呼びかけます。この時も、面倒くさそうな顔で振り返りました(^^)/。
 吉野さんの詩はなかなかいいでしょ。いろんなことを考えさせられます。
 人が自分を顧みるのは、難しいものですね。バカ親父も同じです。
 それに人は一度何かの意見を言うと、それがまちがっているとわかっても、なかなか撤回しにくくなります。正義というものも、同じような性質がありそうです。
 謙虚に生きていきたいですね。
遊哉
2015/04/11 19:43
☆ カラスさん、バカ親父も知らない詩人というか作家やその作品が、嫌というほどあると思います(^^ゞ。
 他の方のブログで、そんな作家や作品を教えてもらえますね。
 吉野さんの詩はユニークだし、自分の知らなかった見方というか感性を教えられます。
 今まで知っていた詩というものの概念も覆させられますね。まさに“小説の一節”のようで、深い背景を感じさせます。
 バカ親父も世間知らずだし、ふだんは詩など読まない人間ですが、女性の詩人でもなかなかの方がいると思います。というか、男女関係なく詩人の感性を持ち合わせていないので、詩にはハッとさせられることが多いです(^^ゞ。
 はい、同じく、真似しようとしてもできません(^^;)。
遊哉
2015/04/11 19:58
冒頭のコメント ざぶとーん!
seizi05
2015/04/12 18:35
☆ seizi05さん、ありがとう(^^♪。
 でも、10枚までには道遠し(^^ゞ。
遊哉
2015/04/12 19:05

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