『報復』
前々回に紹介した『失踪』と同じ作者ドン・ウィンズロウの『報復』を紹介する。
この2作は、同時発行されたものである。同じ作者の本が2冊同じ日に発行されるというのは、とても珍しいことだと思う。
『失踪』がハードボイルドなミステリーでありサスペンスだったのに対し、こちらはアリステア・マクリーンの『ナヴァロンの要塞』に通じるような冒険小説である。
ウィンズロウとしては異色作といっていいもので、傭兵隊が一丸となって敵にぶつかり任務を遂行していく復讐譚である。
プロローグは、次のように始まる。
<デイヴ・コリンズは階段に立ってMP7を構え、つぎの射撃に備える。
暗視ゴーグルの緑色の光のもとでは、血は黒く見える。
コルダイト火薬の悪臭が鼻を突き、胃がせりあがり、ボディアーマー――三十ポンドのセラミックプレートを縫いつけたベスト――の下のシャツは汗みずくになっている。防弾ヘルメットの下から顔へと汗がさらに伝い落ちる。
イラクの夏は、夜でも摂氏四十五度の暑熱が衰えない。
それに加え、肉体を酷使し、体内をアドレナリンがめぐっているので、汗が大量に噴き出ている。
背後から肩を軽く叩(たた)かれる。
進め、というドノヴァンの合図だ。
デイヴはふたたび階段をのぼりはじめる。
いま殺したばかりの〝カラス〟の死体をまたいで。
ビデオゲームの屋内に似ているが、ちがうのはリスタートもコンティニューもできないことだ。引き金を引くのがコンマ数秒遅れたり、ひとつ誤りを犯したり、一瞬よそ見をしたりするだけで――わずかな不運に見舞われるだけで――まさに取り返しがつかないことになる。即製爆弾(IED)や手榴弾(しゅりゅうだん)の爆風で手足をもぎとられ、背骨もゼリー状に砕かれるかもしれない。
視線を上に向けながら、踊り場を曲がる。
カラスがAKを下のこちらに向けている。
デイヴは引き金を引き、〝モザンビーク・ドリル〟を実践する――二発を胸に、一発を頭に。階段の壁に黒いしぶきがまた加わる。背後で起きあがられたらたまらない。死者は死者のままでいるべきだ。
階段をのぼりつづける。
汗が目に流れこむ。
しみる。
視界がぼやける。
(後略)>
主人公はデイヴィッド(デイヴ)・コリンズで、元デルタ・フォース(対テロ特殊作戦部隊)の隊員だった。
9.11同時多発テロの後、アフガニスタンでウサマ・ビン・ラーディンらの掃討作戦で戦い、イラクに転戦したところで除隊した。妻ダイアナと9歳の息子ジェイクとの生活を大切にするためだった。
現在はニューヨークのケネディ国際空港で連邦保安監督官として、テロ行為を水際で食い止めるために働いている。
ある日、モンタナ州に帰省するダイアナとジェイクを空港の身元審査カウンターの前で見送った後、勤務についていたのだが……
可燃性ガスによる爆破を実行しようとしていた男を発見し、瞬時に射殺した。
ところがその直後、離陸したばかりのボーイング747が上空で爆発し、墜落し、乗員と乗客は全員が死亡した。
なんとその機には、ダイアナとジェイクが乗っていたのだった。
当局と航空会社の画策で、調査機関は原因は事故と断定した。現行政権を守るために、テロ行為であることを否定しようとしたのである。
しかし、デイヴはミサイルが機体に向けて発射されたという男と出会い、政府発表が偽りであると確信する。
彼は愛するものを奪ったテロリストを自らの手で始末するために、かつての上官マイク・ドノヴァンが隊長をしている傭兵隊に接触した。
復讐の鬼となったデイヴだったが、その心身は平和な生活で鈍っていた。だが、傭兵たちによってしごかれ戦闘員として復活していく。
テロの首謀者がアブドゥラー・アジーズだと判明し、傭兵隊は一丸となってアジーズとそのテロ組織壊滅にぶつかっていく。
やがて、アジーズとテロ組織がとんでもないテロを計画していることにも気づいていく。
はたして、傭兵隊はテロ計画を防ぐことができるのだろうか? そして、アジーズとその仲間を殲滅することができるのだろうか?
<今日のお薦め本>
『報復 Vengeance』 ドン・ウィンズロウ 著、青木 創・国弘喜美代 訳、角川文庫、1598円、15.12.25. 初版発行
<後記>原題の“Vengeance”というのは、「自分以外の被害に対する名誉回復や正義達成のための復讐」という意味があるようです。
この物語は正統派の冒険小説ですが、直球の暴力小説でもあり、ドキドキとして面白いです(^^ゞ。
上記のプロローグは、イラクでの戦闘の様子ですが、もっと凄まじい描写もあります。
過激な描写が盛りだくさんなので、気の弱い方は読まない方がよろしいかと思われます(^^)/。
ドン・ウィンズロウとしては異色の作品で、その語り口は乾いたというか容赦のない非情さをもっています。
女性には読み進められなくなるかもしれませんが、冒険物としては一級品で面白いです(^^ゞ。
ウィンズロウのファンとしては、読まずにはいられない本です(^^♪。
今日(19日)は晴れましたが、風が強くて寒い一日でした。
夕方の散歩のときは快晴でしたが、空気は冷たかったです。
落日直前でしたが、陽射しは強かったです。
白く輝く月がだいぶ太ってきていました(^^ゞ。
公園を一周してから原っぱでウロウロしましたが、寒いので早めに帰ってきました。
今日のSORAの寝姿です。
これではさすがに窮屈だったのか……
頭を下に下ろしました(^^ゞ。
明日(20日)は晴れ一時曇りで、寒そうです。
















この記事へのコメント
積読していずれ読みますです(*_*;
ねこのひげは居眠り磐音シリーズの51巻目『旅立ちの朝』を読み終わりました。
これで終わりだそうですが、まだ色々話が作れそうな終わり方でした。
10年掛かりのシリーズでしたが、いずれわき役たちを主人公にした小説を書かれるような気がします。
居眠り磐音シリーズは51巻目までいったんですね。すごいですね。
バカ親父はテレビドラマとして観ただけですが、面白かったので、小説のファンも多いんだと思います。
佐伯泰英さんの多作ぶりには驚かされます(^^)/。
「失踪」と「報復」同時に買いました。
「失踪」は今、警察を辞め奥さんとも離れて行くシーンのページ進行中です。
独自の男の世界を描いた「ウィンズドウ節」はしたたかで力強いタッチがすきです!
『サトリ』は読んでいませんが、『失踪』は読みました(^^ゞ。
あとは『夜明けのパトロール』とその第2弾の『紳士の黙約』、それに『キング・オブ・クール』です。
わりと最近出た『ダ・フォース』は読んでいませんが、評判がいいです。読んでみたいです。
独特のウィンズロウ節は、どの作品も面白いですね(^^)/。
なかなかのハードな読み応えです!
続編の「ダ・カルテル」は現在読書中で・・睡眠不足気味です。
『ダ・カルテル』もいつかは読んでみたいです(^^)/。