団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『夜想曲集』

<<   作成日時 : 2018/05/08 22:36   >>

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               〔夕散歩で公園の階段を下りるSORA〕


 カズオ・イシグロさんの短篇集『夜想曲集 ― 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』を紹介してみる。
 彼の初の書下ろし短篇集で、五楽章からなる一曲、あるいは五つの歌を収めたアルバムのように“五篇を一つのものとして味わってほしい”と言っているということだ。

 次の5篇が収められている。

 老歌手 Crooner
 降っても晴れても Come Rain or Come Shine
 モールバンヒルズ Malvern Hills
 夜想曲 Nocturne
 チェリスト Cellists


 この短篇集は副題にあるとおり、音楽と夕暮れが重要なテーマなのだが、もうひとつ、夫婦あるいは男女の愛情と危機(軋みというかねじれ)もテーマとなっている。
 それぞれの簡単なあらすじを書いておく。

老歌手……結婚して30年近くになるガードナー夫妻は歌手である。ベネチアに来ているふたりは、愛し合ってはいるものの不協和音が生じている。
 ギター弾きの語り手は、夫のトニー・ガードナーに一夜雇われ、運河を漕ぎ下って、窓辺の妻に向かって歌うセレナーデの伴奏をすることになった。
 原題の“Crooner”というのは、(昔の恋歌を)感傷的に歌う(男性)歌手という意味だそうだ。

降っても晴れても……語り手は、外国で英会話教師をしている50歳近くなってしまった冴えない独身男である。
 ロンドンに住む大学時代の親友夫婦の夫から、離れ始めた妻の心を取り戻すために、引き立て役になってくれと頼まれ、悪戦苦闘することとなる。

モールバンヒルズ……英国の片田舎モールバンが舞台である。
 語り手のミュージシャン志望の若者はロンドンに住んでいるが、ろくな仕事がないので夏の間だけ姉夫婦が経営するカフェを、半分ふてくされながら手伝うことにした。
 そこにスイス人の夫婦デュオがやってくる。目指す音楽の違いから仲が険悪になっていた。
 そんなふたりだが、モールバンヒルズで歌っていた若者を励ます。ふたりもまた若者の歌からひとときの安らぎをもらうことになる。

夜想曲……才能はあるが売れない醜男(ぶおとこ)のサックス吹きが、顔さえ変えれば売れるとマネージャーに説得され整形手術を受けた。そこには、逃げ出した妻を取り戻そうという一縷の望みもあった。
 ビバリーヒルズの高級ホテルで手術の回復中に、隣の部屋でやはり顔の整形手術を受け時間を持て余していた有名な女性歌手から招待を受ける。お互いに顔を包帯でぐるぐる巻きにしていた。
 そして……上を下への大騒ぎが始まる(^^)/。

チェリスト……野心家の若いエリートチェリストのティボールは、アドリア海に面したイタリアの小都市にやってきた。
 逗留したホテルに、結婚を望む求愛者から逃げてきて、ひっそりと隠れているチェロ演奏の大家だという女性もいた。
 彼女はティボールにレッスンを申し出る。彼が弾き、彼女が批評するという個人レッスンが繰り返される。
 なぜかチェロを弾こうとしない彼女がある日、衝撃の告白をした……。

 2篇だけ、プロローグを引用・紹介してみる。


 降っても晴れても

<エミリもぼくもアメリカの古いブロードウェイソングが好きだった。向こうはどちらかといえばアップテンポの曲、たとえばアービング・バーリンの《チーク・トゥ・チーク》、コール・ポーターの《ビギン・ザ・ビギン》などがお気に入りで、対するぼくは《ヒアズ・ザット・レイニー・デイ》や《イット・ネバー・エンタード・マイ・マインド》のような甘くほろ苦いバラードが好き。傾向は多少違ったが、重なり合う部分は大きく、それより何より、あの時代に、イングランド南部の大学でこんなジャンルにうつつをぬかす仲間にめぐり合えたこと自体が奇蹟に近かった。いまどきの若者は雑食だ。この秋から大学生になるぼくの甥(おい)はいまアルゼンチンタンゴに夢中だが、同時にエディット・ピアフを聞くし、次から次へ現れるインディーズバンドも山ほど聞く。ぼくらの世代は違った。好みにあまりばらつきがなく、学生は大きく二つに分類できた。引きずるような衣に長髪のヒッピータイプはプログレッシブロックを聞き、きちんとツイードを着るタイプはクラシック一辺倒で、ほかをすべて騒音とみなしていた。たまにジャズ好きを言う学生もいたが、これはほとんどがクロスオーバージャズのことだ。見事に作られた歌に遠慮会釈なくアドリブを重ねていくたぐいで、原曲への敬意など微塵(みじん)もない。
 だから、ブロードウェイやハリウッドのミュージカル音楽に夢中の学生がいると知ったときは嬉しかった。しかも女の子だ。ぼく同様、素直な解釈と繊細な歌唱を基準にスタンダードナンバーのLPを集めていた(当時の中古品には、親の世代の処分したレコードがよく並んでいた)。サラ・ボーンやチェット・ベイカーがエミリの好み、ジェリー・ロンドンやペギー・リーがほくの好み。ともに、シナトラやエラ・フィッシュジェラルドはちょっと苦手だった。
(後略)>

 なんだかとても懐かしい歌手や歌の名前が出てくる(^^ゞ。


 夜想曲

<二日前まで、おれはリンディ・ガードナーのお隣さんだった……なんて言うと、おい、ビバリーヒルズかよ、と思うかもしれない。映画プロデューサーか? 俳優か? ミュージシャンか?……まあ、ミュージシャンではある。ただ、名のある歌手の伴奏をしたことも一、二度あるが、世間的にはメジャーと呼ばれる存在ではない。それでも、長年の友人、マネージャーのブラッドリー・スティーブンソンに言わせると、メジャーになる素質は十分なんだそうだ。「それも、メジャーなスタジオミュージシャンってんじゃないぞ。大スターだ。サックス奏者が花形になれる時代じゃない? 誰が言った。マーカス・ライトフットにシルビオ・タレンティーニに……」おいおい、待てよ。みんなジャズ奏者じゃないか。「おい、おまえこそジャズ奏者じゃなくて何なんだ」ブラッドリーはそう言う。だが……ジャズ奏者? そんなのはおれが夢のまた夢の中で見ている話だ。現実の世界では……もちろん、いまみたいに顔を包帯でぐるぐる巻きにされてないときは、だが――ちょい役のテナー吹きにすぎない。スタジオではけっこう重宝がられる。メンバーが抜けたバンドからも声がかかる。ポップスいけるか? もちろん。R&Bは? いいともさ。車のコマーシャルでもトーク番組の出演者登場テーマでも、何でもござれ。だが、ジャズ奏者? そんなのは、おれが個室≠ノいるときに限られる。
(後略)>

 主人公はミュージシャンのようだが、いったいどんな話が始まるのだろうか、と思わされる。
 この2篇は実は、スラプスティック・コメディーとなっていてとても面白い(^^)/。


<今日のお薦め本>
『夜想曲集 ― 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall』 カズオ・イシグロ 著、土屋政雄 訳、ハヤカワepi文庫、842円、11.02.15. 発行
 本書は、2009年に早川書房から単行本として刊行された作品が文庫化されたものです。

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)
早川書房
カズオ イシグロ

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<後記>カズオ・イシグロさんの作品を紹介するのは、『日の名残り』『忘れられた巨人』に次いで3作目になります。
 彼はあまり短篇は書いていないようですが、長篇に劣らずなかなかの短篇集になっていると思います。
 短篇ならではの小粋な味わいがあり、音楽と夕暮れとすれ違う男と女を描いたずっしりとした手ごたえのある短篇集です。
 夕暮れというのは“人生の黄昏”を暗示していると思います。そんな老いということも、この短篇集の隠れたテーマかもしれません。
 イシグロさんは『日の名残り』もそうですが、夕暮れが好きなのかもしれません。バカ親父と同じです(^^)/。

 今日(8日)も雨が降ったり止んだりの一日でした。
 夕方の散歩は5時ちょっと過ぎに出ました。雨はポツポツと降っていました。

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 公園の桜並木を上っていきました。

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 原っぱに出て、公園を回ることにします。

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 原っぱをうろうろしていきました。

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 ウロウロをもっとやるかと思っていたら、SORAはすぐに階段を下り始めたので帰ることにしました。

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 明日(9日)は朝方まで本降りの雨で、しだいに止むものの午後も雲が優勢のようです。北寄りの風が吹き、肌寒そうです。

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