『古書贋作師』




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               〔公園のコケモモの根元の花壇〕


 異様な語りで読者を稀覯本(きこうぼん)の世界へと誘い込むミステリー『古書贋作師』を紹介してみる。
 米国の作家ブラッドフォード・モローの作品である。

 プロローグは次のように始まる。


<彼の両手はついに見つからなかった。何日も、いや何週間ものあいだ、モントーク・ハイウェイの南側に延びる吹きさらしの海岸で、捜索は続いた。大勢の捜査員が寒い中、砂浜を縁どる雑木林にまで分け入ってくまなく探した。数キロにも及ぶ海岸線のどこかに、もしかしたら墓とも呼べないささやかな盛土があって、そこに両手が埋められているかもしれなかったからだ。
 二月の雪時雨(しぐれ)と日照時間の短さが、そんなひたむきな捜査を阻んだ。砂や凍りかけた土の表面に、不自然な掘り跡が残っていたかもしれない。が、きれいに消えてしまったあとではもはやどうしようもない。もし犯人が切断した両手を荒波に投げ込んだのなら、海岸に打ち上げられているかもしれないと、引き潮のあいだに浅瀬をさらったりもした。爪のあいだなど塩水できれいさっぱり洗われてしまっているだろうが、それでも、法医学的証拠が残っていないとも限らない――もし彼が犯人と取っ組み合っていたならなおさらのこと、現場の乱れ具合からしてもそれは十分考えられることだった。そこまでやったが、結局何も見つからなかった。まさか彼の両手は、手首のところでぴたりとくっついて一対(いっつい)の翼になり、鈍色(にびいろ)の大西洋の彼方へ飛び去ってしまったとでもいうのか。
(後略)>


 ニューヨーク州の最東端モントークという町で、アダム・ディールという独り暮らしの男が、後頭部を強打され、両手首を切断された状態で発見された。
 集中治療室で10日間なんとか生き延びたが、何も語ることなく息を引き取った。
 彼は稀覯本マニアであり、事件現場の床にはリンカーンやチャーチル、トウェイン、ディケンズなどの著作や書簡などが散らばっていた。
 有名作家のサインなどを偽造する贋作師でもあり、違法行為に手を染めていたのである。

 実は、この物語の語り手である“わたし”(ウィル)の恋人ミーガンは、アダムの妹だった。
 彼女はマンハッタンのイーストヴィレッジで美術と料理の古書店を営んでいた。 
 兄妹は幼いころに両親を海難事故で亡くし、互いを支え合うように生きてきたが、その生き方の違いは大きかった。

 ミーガンとはアダムを介して出会ったのだが、実は“わたし”もかつては彼とも繋がりのある贋作師だった。
 文学の巨匠や大物政治家らの本や書簡、直筆原稿などの偽物で、書士鑑定の専門家たちを欺むき逮捕されたことを契機に足を洗い、今は古書オークションハウスで働いている。

 そんなときにアダムが両手首を切断されて殺されたのである。
 いったい誰が何のために、そんなことをしたのだろうか?

 やがて、わたしの元には、ディケンズやコナン・ドイルなどの筆跡を模倣した“正体を暴いてやる”という謎の脅迫状が届くようになる。
 その他にも不可解な出来事などが起きて怯え続けるわたしだが、結婚したミーガンには話すことができない。
 彼女のお腹には子どもも授かり、わたしは、自分と同等の技量を持つ贋作者である謎の脅迫者と対決することにしたのだが…… 
 
 思いもかけないラストが待っていた(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『古書贋作師 The Forgers』 ブラッドフォード・モロー 著、谷 泰子 訳、創元推理文庫、1080円、16.06.24. 初版
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<アメリカのメリーランド州ボルティモア生まれ。エール大学などで学んだ後、書店員となる。1981年にニューヨークで文芸誌 Conjunctions を創刊し、自身も小説執筆を開始。現在は執筆活動のかたわら、編集者・大学教授としても活躍している。>

古書贋作師 (創元推理文庫)
東京創元社
ブラッドフォード・モロー

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<後記>本作は、不安を抱えながらも生きていかねばならない混沌とした今の世界を象徴するような物語かもしれません。
 日本にはいるのかどうかは知りませんが、贋作師という仕事(?)が成り立つというのが興味深いです。
 語り手である“わたし”ことウィルは、母親の手ほどきでカリグラフィーに魅せられ、その天賦の才能を開花させます。同時に、コナン・ドイルにまつわる品々のコレクターだった父親の情熱も受け継ぎ、彼を贋作という誤った道に踏み込ませることになったのでした。
 彼の独白には、自己の正当化や思い上がりも垣間見えますが、どこか憎めない人柄というか弱さも感じさせます。
 なかなか複雑な主人公の二面性や一筋縄ではいかない人間性も表現されているそんな語りが、興味深くも面白いです(^^ゞ。

 今日(17日)は朝のうちは晴れていましたが、しだいに雲に覆われていきました。
 気温はわりと上がりましたが、なんだかヒヤヒヤする空気でした(^^ゞ。
 日中はダラダラと過ごしました。
 夕方の散歩は4時半ころに出ました。
 公園を斜めに上っていきます。

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 上空の様子ですが、空全体がこんなどんよりとした雲に覆われていました。

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 コナラの新緑です。

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 夕日はまったく見えませんでした。
 原っぱに上ってウロウロしていきます。

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 SORAはテニスコート脇を上っていきます。

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 これはユズリハです。上の方に今年の新しい葉が出ています。

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 テニスコート脇を進んでいきました。

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 ケヤキやコナラの新緑が見えました。

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 原っぱに戻ってウロウロしていきました。

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 桜の向こうはモミジの新緑です。

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 北西の空の下に、さざ波のような雲が浮かんでいました。

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 ここのツツジは毎年早く咲きます(^^ゞ。
 草つき斜面を下りて帰ってきました。

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 SORAは一回だけスリスリをして、すぐに起き上がりました(^^)/。

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 道路脇のツツジがどんどん咲き始めています。

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 紹介したい本が溜まっています。
 今日は直近の読了本を紹介してみましたが、体調がととのい始めてきたので、随時紹介していくつもりです(^^)/。

 明日(18日)の横浜の南の端っこの天気は、日中は陽射しが届いて、初夏のようなポカポカ陽気になるようです。
 空気が乾燥し、夜はヒンヤリとしそうです。

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