『ダラスの赤い髪』



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          〔夕日の見えない今日の曇り空〕


 米国の女性作家キャスリーン・ケントの警察小説『ダラスの赤い髪』を紹介する。
 警察小説だが犯罪・ノワール小説ともいえるもので、主人公の女性刑事ベティ(エリザベス)・リジックの一人称で語られる物語である。

 このベティ・リジックという主人公がなかなか興味深くて面白い(^^ゞ。
 ただのタフな女性刑事ではない。ニューヨークのブルックリン生まれで、ポーランド系の警官一家に育ち、身長180センチで、スティールラジアルのタイヤみたいな脚を持つ優秀なランナーで、男に引けを取らない身体能力の持ち主である。
 頑固で口が悪く、兵士が履くようなタクティカルブーツで歩き回っているだけで目立つのに、髪は燃えるような赤毛だ。
 彼女の心の師は、ブルックリンで部長刑事を務めた叔父のベニーで、彼が亡き後も、何かあると心のなかでベニーに言われたアドバイスを思い出している。

 38部構成となっているが、その第一部のプロローグは、次のように始まる。


ブルックリン グリーンポイント
 ノーマン・アヴェニューとジュエル・ストリートの交差点の角
 二〇〇〇年十月二十三日 月曜日


 廊下に尻をつき、頭をドア枠に押しつけ、両手でつかんだ拳銃とひざを胸骨に引き寄せながら、部屋のレイアウトを思いだそうとする――二段ベッドが三組、血だらけのシーツに横たわる死体が四体。三発撃たれた私の相棒は、いちばん近くの二段ベッドの脇に倒れ、ぴくりとも動かない。そしてこの部屋のどこかに、泣き叫ぶ赤ん坊を片手で抱き、もう一方の手にセミオートマティックの拳銃を持った、頭のいかれた男がいる。最後に戸口からなかをのぞいたとき、男の撃った弾が向かいの壁に穴をあけた。そのあと男は、赤ん坊を撃って自分も死ぬ、と息巻いた。
 私が警官になってから、まだ五カ月と一週間と九時間半だ。
(後略)>


 ブルックリンで警官になったベティだが、早々に過酷な事件の洗礼を受けたところである。
 それがどうなるかは置いておく(^^ゞ。
 彼女は、ブルックリンでの警官としてのキャリアを積んでいくのだが……

 第2部は、次のように始まる。


テキサス州ダラス
 〈フューエル・シティ〉 カーウォッシュ&たタコスタンド
 二〇一一年八月十七日 水曜日


 朝食のカウンターの奥にいるメキシコ人ウェイターは、〈フューエル・シティ〉(テキサスを拠点とするガソリンスタンド・洗車場・コンビニエンスストア・ファストフードの複合サービス施設)について何か冗談を言ったらしい。〝ひとつ星の州(ローン・スター・ステート)と呼ばれるここテキサスに来て、実はまだほんの四十八時間なんだと言うと、ウェイターは、もし本物のダラス――トラック運転手やメキシコ人労働者や弁護士や仮釈放の犯罪者や警官が、高級なSUVを乗りまわす特権階級の白人女どもとごちゃごちゃと入り乱れる本物の街(ラ・ベルダデーラ・シウダー)――を見たいのなら、ダラス市の刑務所も、保釈保証業者のオフィスの群れも、ハイウェイの工事現場も通りすぎて南へ向かい、リヴァーフロント・ストリートに行けばいいと教えてくれる。そこが街の心臓の脈打つ場所だと。
(後略)>


 ベティは、11年後、テキサス州のダラス市警に移ることになった。
 実は彼女には自慢の恋人がいる。小児病院に勤務する女性医師のジャッキーである。
 あれ? と思われた方はスルドイ!(^^)/。そうなのだ、ベティはレズビアンなのである。
 ジャッキーが病気の母のそばにいるために、故郷であるダラスに帰ることになり、ベティもダラス市警の麻薬捜査課に移ることにしたのだ。

 そして2年後の現在である第3部が次のように始まる。


テキサス州ダラス
 二〇一三年九月一日 日曜日


 仕掛けは完璧だ。すべてはうまくいっている。あの女性が私たちの監視ゾーンに入ってきたこと以外は、常識的と呼べる以上に暇を持てあましている、善(よ)きサマリア人(びと)。きっちりと化粧をして、ダイヤモンドを連ねた細いテニスブレスレットをはめ、犬の散歩をさせるたぐいのご婦人。歩道で寝そべっているホームレスの男の様子をのぞき、男のそばで腹をすかしている犬に餌をやるような、善意の金持ちタイプ。
 自分のシュナウザー犬の散歩を再開した善きサマリア人は、私と相棒のセスが乗っている、サイドパネルに企業ロゴの入った白の監視用ヴァンには気づかない。私たちが監視している家から通りを隔てた向かいに駐車し、三人の覆面捜査員が車内で配備についている。もう一台のえび茶色のヴァンにも、目を留めた様子はない。監視対象の家は、北ダラスのこのあたりに建っている、チューダー様式を模したほかの家々とまったく同じ大邸宅だ。どれもゼロ・ロット。ライン方式(隣接する住宅に敷地の一部利用を認めることで狭い敷地を有効利用するためのシステム)の狭い空間に建ち並び、〝共和党に投票を!〟という看板を耐乾性のゼラニウムの花壇に目立つように立て、その看板がピットブル犬みたいに近隣を見張っている。
(後略)>


 刑事となったベティは、相棒であるセス・ダットンを含めた4人の刑事たちと、はじめて指揮者として監視任務に就いていた。
 監視の対象は、メキシコ系麻薬カルテルの一翼として販売を取り仕切るウィリアム・ベンダーという男である。彼が、北テキサス最大のコカイン供給元であるメキシコ人のトマス・〝エル・ヒターノ(流れ者)〟・ルイスを待っているのを、監視しているのだ。
 なかなか捕まえることのできないベンダーとルイスを、なんとか一挙に逮捕しようとしていたのである。

 ところが偶然に偶然が重なって、ルイスに監視していることがわかってしまい銃撃戦になってしまう。
 ベンダーをはじめとして市民一人、警官一名が死亡し、ベティの部下の新米刑事ケヴィン・ライアンは負傷してしまった。
 ガックリと気落ちしたベティだが、負けてはいられない。引き続き同僚刑事たちとルイスを追っていくのだが……
 ルイスの行方はふっつりと途絶えてしまった。
 そんなとき、ベティの元に小包が届けられた。その中にはとんでもないものが入っていた。
 
 謎に包まれたカルテルの存在がわかってくるのだが、なかなか正体を明らかにすることができない。
 捜査線上に浮かぶのは、元警察官のゴロツキやアジア系ギャング、さらには南軍に心酔する武装集団まで現れる。
 増える犠牲者、混乱する捜査……はたしてベティたちは謎のカルテルの黒幕を暴き出し、捉えることができるのだろうか?
 やがてベティには、過酷な運命が押し寄せてくるのである。
 あらすじは、これ以上はネタバレになるのでオシマイにしておく(^^ゞ。

 テキサス州というのは、州旗の一つ星にちなんだ「一つ星州」(Lone Star State)という愛称を持ち、テキサス男は保守的な独特の気質を持っているようである。
 1836年のテキサス独立戦争中に、デビー・クロケットら約200人の独立軍が、メキシコ軍相手にアラモ砦に立てこもって全滅したという有名な話もある。ということで、州としての独自性も強いようだ。
 それにテキサス州は、全米でいちばん銃の所持率が高いという。
 そんな中に飛び込んだベティは、テキサスの男性刑事たちからはすんなりとは受け入れてもらえないようだ。
 とはいえ、相棒のセスなどはベティの心根の良さや優秀さを理解し、温かい目で見て接してくれるし、その他の刑事もしだいに彼女をからかいながらも受け入れていくのである。
 そんな「北部人」対「南部人」の“南北カルチャー戦争”の様相がなかなかに面白い(^^ゞ。

 また、テキサス州は国境を挟んでメキシコと隣り合わせであり、メキシコの麻薬カルテルと直接的に角突き合わせているわけで、ベティたち麻薬捜査官たちは彼らとのせめぎ合いを日々繰り広げているわけである。
 そんなメキシコとの麻薬戦争の最前線の現場にいる、タフな女性刑事ベティの過酷な戦いがなんともドキドキハラハラで面白いのである(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『ダラスの赤い髪 THE DIME』 キャスリーン・ケント 著、府川由美恵 訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、1089円、19.07.15. 発行
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<テキサス州ダラス在住の作家。これまでに The Heretic's Daughter など三作の長篇小説を発表し、優れた歴史小説に与えられる文学賞を受賞。2017年に発表した本書は好評を博し、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞にノミネートされた。《ニューヨーク・タイムズ》による「優れた新刊 犯罪小説部門(2017年3月)」の1冊に選出。>

ダラスの赤い髪 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ダラスの赤い髪 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

<後記>レズビアンのタフな女性刑事ベティが、保守的な南部のテキサス州で悪戦苦闘していくという、今までにない面白さを備えた物語です。
 上司の部長刑事とか相棒や同僚の男性刑事たちとの会話が、なんとも皮肉や冗談に溢れていて面白いです。
 本書がシリーズ第一作で、第二・第三作の発刊が予定されているということなので、楽しみです(^^)/。
 原題の“The Dime”の“dime”というのは「10セント硬貨」のことですが、ベティの心の師ベニーとの思い出にも出てくるし、最後のほうでベティが10セント硬貨を使って危機を脱出したりします(^^)/。
 よかったら、読んでみてください(^^ゞ。

 今朝(19日)は雨が激しく降るという予報でしたが、陽射しが届いていました(^^ゞ。
 その後も雲は多めだったものの、陽射しはわりとよく出ていて、蒸し暑くなりました。

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 昼前に買い物に出たときの空です。雲は多いですが陽射しがありました。
 今日もBS3で映画を観ました。まだ初々しいブラッド・ピットが出ていて、名優ロバート・レッドフォードが監督した「リバー・ランズ・スルー・イット」です。
 久しぶりに観ましたが、味わいのある傑作です。現在、ロバート・レッドフォードの俳優としては最後の映画「さらば愛しきアウトロー」が公開されています。観てみたい!(^^ゞ。

 夕方の散歩は5時過ぎに出ました。

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 これは南の空ですが、どこを見てもどんよりとした雲に覆われています。
 公園を斜めに上っていきました。

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 東の空です。
 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 ベンチに座りました。

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 北寄りの西風が少し吹いていて、雲は東の方にゆっくりと流れていました。

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 SORAは最初はハアハアしていましたが、そのうちにマッタリしました(^^ゞ。

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 SORAは気になるワンコが遠くに見えると、ベンチを下りました。

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 マッタリしていたSORAのところに、馴染みのワンコが2匹遊びに来てくれました。
 飼い主たちはおしゃべりしました(^^ゞ。

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 それぞれの方向の雲の様子がだいぶ変化していました。

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 2匹のワンコが帰ってからも、SORAはマッタリし続けていましたが、帰ることにしました。

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 SORAは原っぱの端っこのほうからぐるっと回っていきました。

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 クネクネスリスリをして、クルッと起き上がりました(^^ゞ。

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 桜並木を下りて帰ってきました。

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 明日(20日)の横浜の南の端っこの天気は、雲の多い一日で、時に雨が降ることがありそうです。一時的には雷を伴って強まることがあるかもしれません。
 気温が上がり、ムシムシと汗ばむ暑さになるようです。

この記事へのコメント

2019年07月20日 11:27
こんにちは。

気持玉です

今年の梅雨は本当に雨が多いですね。
SORAちゃんがマッタリしたり、
スリスリする姿は可愛いです。
遊哉
2019年07月20日 20:49
☆ 華の熟年さん、こんにちは♪
 気持ち玉が早く設置されるといいですね(^^ゞ。
 今年は梅雨が長いし、肌寒さも続いてますね。ここ2、3日、やっと蒸し暑くなってきました。
 いつも同じようですが、SORAのスリスリを楽しんでいただけると嬉しいです(^^)/。