『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』



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       〔原っぱでマッタリするSORA(^^ゞ〕

 英国のブライトンに住む日本人ブレイディみかこさんが、思春期真っただ中の12歳のひとり息子とともに考え、悩みを乗り越えていく“親子の成長物語”『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を紹介する。

 著者は、カバー裏から紹介すると、次のような方である。
<保育士・ライター・コラムニスト。1965年福岡市生まれ。県立修猷館高校卒。音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年に新潮ドキュメント賞を受賞し、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補となった『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)をはじめ、著書多数。>

 本屋でこの本を見て気になっていたが、読もうかどうしようか迷っていた。
 そんな時、酒井順子さんが『週刊文春』(8月8日号)書評欄の「私の読書日記」に、次のようなことを書いていて、読む気になったのである(^^ゞ。

<著者は、イギリスのブライトンに住む女性。夫はアイルランド人で、息子は思春期の入り口に。本のタイトルは、その息子が走り書きしていた言葉である。
 中学生になった息子は、通っていた小学校とつながっているランキング上位の中学でなく、ひょんなきっかけから、著者が「元底辺校」と呼ぶ中学へ進む。元底辺校は、白人労働者層の子供が多いために、生徒はほとんど白人。上位校の方が移民の子が多く、「人種の多様性があるのは優秀でリッチな学校」という、「多様性格差」が、昨今のイギリスの田舎町では進んでいるのだそう。
 白人がほとんどの中学で、アジア系の生徒として生きる「息子」は、充実した日々を送りつつも、クールに世間を眺めている。人種、階級、経済力。様々な「差」の中で生きていくのは、息子のみならず親の方も大変で、著者もまた、「差」に潜む地雷を踏むことがあるのだった。
「マルチカルチュラルな社会で生きることは、ときとしてクラゲがぷかぷか浮いている海を泳ぐことに似ている」
 という著者の実感は、日本人に「多様性を引き受ける覚悟」が本当にあるのか否かを問いかける。カラフルな状態を忌避してきたヨーロッパの人々が、多くの摩擦とともにカラフル化していく中で、
「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」
 と、息子に語る母。「色々」という言葉の裏にある面倒臭さを私達はまだ知らない、ということを、その言葉から知った。>

 目次は、次のようになっている。

  はじめに
1 元底辺中学校への道
2 「glee/グリー」みたいな新学期
3 バッドでラップなクリスマス
4 スクール・ポリティクス
5 誰かの靴を履いてみること
6 プールサイドのあちら側とこちら側
7 ユニフォーム・ブギ
8 クールなのかジャパン
9 地雷だらけの多様性ワールド
10 母ちゃんの国にて
11 未来は君らの手の中
12 フォスター・チルドレンズ・ストーリー
13 いじめと皆勤賞のはざま
14 アイデンティティ熱のゆくえ
15 存在の耐えられない格差
16 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン


 何か所か引用・紹介してみることにする。

 現在は中程度になっている“元底辺中学校”に息子が入学することを、著者も夫も心配していたのだが……

<そんなわけで、息子は元底辺中学校に入学した。
 が、これが拍子抜けするほど最初から楽しそうで、すぐに新しい友達もでき、音楽部をはじめとする複数のクラブに所属して、しょっぱなからとても忙しそうだ。わりと順応性の高い子どもなので、環境が変わったら変わったでエンジョイしてるんだろう。
「全然心配することなかったね」と言うと、「まあ、いまのところはな」と言いながら、配偶者もけっこう安心している様子だ。
 そんなある朝。
 慌(あわ)ただしく学校に行った息子の部屋に掃除に行くと、机の上に国語のノートが開かれたままになっていた。
 ゆうべ遅くまで机に向かって何かやっていたような気配だったが、肝心の宿題のノートを忘れて行ったのかな。と思ってふと見ると、先週の宿題のページだった。先生から赤ペンで添削が入っている「ブルー」という単語はどんな感情を意味するか、という質問で、息子は間違った答えを書いてしまったのだった。
「『怒り』と書いたら、赤ペンで思い切り直されちゃった」と夕食時に息子が口にしたので、「えーっ、あんたいままでずっとそう思っていたの?」とわたしは笑い、「ブルーは『悲しみ』、または『気持ちがふさぎ込んでる』ってことだよ」と教えると、学校の先生にもそう添削されたと言っていた。
 これがその宿題だったのか、と思いながら見ていると、ふと、右上の隅に、息子が落書きしているのが目に入った。青い色のペンで、ノートの端に小さく体をすぼめて息を潜めているような筆跡だった。

 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー。

 胸の奥で何かがことりと音をたてて倒れたような気がした。
 何かこんなことを書きたくなるような経験をしたのだろうか。
 わたしはノートを閉じ、散らばっていた鉛筆や消しゴムをペンケースの中にいれてその上に置いた。
 ふと、この落書きを書いたとき、彼はブルーの正しい意味を知っていたのだろうか、それとも知る前だったのだろうか、と思った。そう思うとそれが無性に気になった。
 だけどそのことをわたしはまだ息子に聞き出せずにいる。>


 息子には仲のいい友達が二人いる。ひとりはハンガリー移民の両親を持ち、もうひとりは白人の貧しい家庭の子どもである。
 それぞれとはとても仲がいいのだが、その二人がレイシズム発言など互いにヘイトをぶつけ合うので、3人でつき合うことは難しい状況にある。
 そんなことの会話である。

<「うん、どうしてこんなにややこしいんだろう。小学校のときは、外国人の両親がいる子がたくさんいたけど、こんな面倒なことにはならなかったもん」
「それは、カトリック校の子たちは、国籍や民族性は違っても、家庭環境は似ていたからだよ。みんなお父さんとお母さんがいて、フリー・ミール制度〔注:低所得家庭の給食費が無料になる制度〕なんて使ってる子いなかったでしょ。でもいまあんたが通っている中学校には、国籍や民族性とは違う軸でも多様性がある」
「でも、多様性っていいことなんでしょ? 学校でそう教わったけど?」
「うん」
「じゃあ、どうして多様性があるとややこしくなるの」
「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃあないほうが楽よ」
「楽じゃないものが、どうしていいの?」
「楽ばっかりしてると、無知になるから」
 とわたしが答えると、「また無知の問題か」と息子が言った。以前、息子が道端でレイシズム的な罵倒を受けたときにも、そういうことをする人々は無知なのだとわたしが言ったからだ。
「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」
 わたしがそう言うと、息子はわかったのかわからなかったのか判然としない面持(おもも)ちで、おやつのチーズをむしゃむしゃ食べていた。>


 “シティズンシップ・エデュケーション”という授業があるという。
 その目的の概要は、「社会において充実した積極的な役割を果たす準備をするための知識とスキル、理解を生徒たちに提供し、とりわけデモクラシーと政府、法の制定と遵守に対する生徒たちの強い認識と理解を育む」ということらしい。
 その試験についての会話。

<「試験って、どんな問題が出るの?」
 と息子に聞いてみると、彼は答えた。
「めっちゃ簡単。期末試験の最初の問題が『エンパシーとは何か』だった。で、次が『子どもの権利を三つ挙げよ』っていうやつ。全部そんな感じで楽勝だったから、余裕で満点とれたもん」
 得意そうに言っている息子の脇で、配偶者が言った。
「ええっ。いきなり『エンパシーとは何か』とか言われても俺はわからねえぞ。それ、めっちゃディープっていうか、難しくね? で、お前、何て答えを書いたんだ?」
「自分で誰かの靴を履いてみること、って書いた」
 自分で誰かの靴を履いてみること、というのは英語の定型表現であり、他人の立場に立ってみるという意味だ。日本語にすれば、empathy は「共感」、「感情移入」または「自己移入」と訳されている言葉だが、確かに、誰かの靴を履いてみるというのはすこぶる的確な表現だ。
「子どもの権利を三つ書けってのは何て答えたの?」
 と尋ねると、息子は言った。
「教育を受ける権利、保護される権利、声を聞いてもらう権利。まだほかにもあるよ。遊ぶ権利とか、経済的に搾取(さくしゅ)されない権利とか。国連の児童の権利に関する条約で制定されてるんだよね」
 英国の子どもたちは小学生のときから子どもの権利について繰り返し教わるが、ここで初めて国連の子どもの権利条約という形でそれが制定された歴史的経緯などを学んでいるようだ。
「そういう授業、好き?」
 とわたしが聞くと息子が答えた。
「うん。すごく面白い」>


 学校のライス・スキルの授業で、LGBTQについて教わったという息子の話から。

<「LGBTQに関する授業って、どんなこと教わるの?」
「それぞれの頭文字が意味すること、つまり、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニングとはどういうことなのか、って説明があって、ホモフォビアとかバイフォビアとかそういう嫌悪(フォビア)は絶対にいけないということとか、ジェンダーのステレオタイプも間違っているということとか、そういうことをひと通り教わった」
「ふうん」
「その授業を受けた日の帰り、自分のセクシュアル・オリエンテーションについて、友達と話したんだ」
「うん」
「でね、僕とティムはたぶん自分は異性愛者(ヘテロ)だと思うって言ったら、ダニエルはもう、自分はヘテロ以外あり得ないとかムキになってたんだけど、オリバーは自分はまだわからない(クエスチョニング)って言ったんだ」
 ラグビー部とサッカー部をかけもちし、8年生にしてどちらも学校代表選手に選ばれているがっしりと大柄なオリバーの姿が浮かんだ。息子の友人のグループの中で一番マッチョな外見の少年だ。12歳の男の子がいったいどんな顔をしてそのことを言ったんだろうと思ったら、少し心配になってきた。
「ダニエルはそれについて何か言った?」
「最初はショックだったような顔をしていたけど、オリバーがあまりにもクールな感じで冷静に言ったものだから、ちょっと気圧(けお)されたような感じで、『時間をかけて決めればいいよ。焦って決める必要ないよ』とか言ってた」
 そう言って笑っている息子を見ていると、彼らはもう、親のセクシュアリティがどうとか家族の形がどうとかいうより、自分自身のセクシュアリティについて考える年ごろになっていたのだと気づいた。
「そうか。ダニエルはここのところショック続きなんだね」
「うん」
「しかし、知らない間に成長してるんだね、君たちも」
 と言ったら、当然じゃん、というような顔つきで息子が一瞥(いちべつ)をくれた。
 さんざん手垢のついた言葉かもしれないが、未来は彼らの手の中にある。世の中が退行しているとか、世界はひどい方向にむかっているとか言うのは、たぶん彼らを見くびりすぎている。>


 さて、際限なくいくらでも書けるのだが、このくらいでオシマイにしておく(^^)/。
 というか、中途半端に引用してもちょっとわかりにくいところがあるかもしれないので、興味のある方は是非一度読んでみていただきたい。
 英国の子どもが置かれた状況や教育の内容・問題だけでなく、家族とか移民の問題、それに伴う人種差別など社会の現状がよくわかるし、日本との対比でみるといろんなことを考えさせられる。
 面白いのである(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ 著、新潮社 刊、1458円、19.08.10. 5刷(19.06.20. 発行)

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

<後記>英国は“揺りかごから墓場まで”福祉が充実している、と小学校で習った覚えがありますが、現在の英国では経済の引き締めなどもあり、経済格差が広がっているようです。
 学食で万引きする子や制服が買えない子がいたりするようで、著者もボランティアとして要らなくなった制服を集めて繕い、超安値で制服のない生徒に販売しているようです。
 息子をとりまく人種差別なども含めたそんな複雑な日常を、著者はどこまでも軽やかに綴っていて、面白く興味深く味わいがあります(^^ゞ。

 今日(21日)は一時陽射しも届きましたが曇りがちの一日でした。
 カミさんは9時ころに着付けの仕事に出かけました。
 バカ親父は昼前に買い物に行き、本屋に寄ってから帰ってきました。
 あとはテレビを観たり本を読んでいました。
 4時ころになって黒雲が空を覆ってきたので、早めの4時40分ころに、いちおう傘を持って散歩に出ました。

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 西空の下は真っ暗でした(^^)/。
 公園を斜めに上っていきました。

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 どの方向を見ても黒い雲が流れていました。
 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 SORAは端っこの方に歩いていってクネクネスリスリをしました(^^)/。

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 SORAは少し歩いて、ちょっとだけスリスリしてからマッタリし始めました。

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 南西の風が吹いていて、雲は形を変えながらわりと速く北東に流れています。

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 十数分くらい休んでから、SORAはまたスリスリをしてベンチに向かいました(^^ゞ。

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 SORAはベンチの上でもマッタリし始めました(^^ゞ。
 同じような空ですが、雲が動いた様子を追ってみます。

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 SORAがなんだかダラ~っとしているなと思って見たら、完全に寝ていました(^^)/。

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 帰ることにしました。

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 SORAは最後にまた一休みしました(^^)/。

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 明日(22日)の横浜の南の端っこの天気は、陽射しが届くことがあっても、雲の多い一日で、にわか雨が降りそうです。一時的に強まり雷を伴うかもしれません。蒸し暑そうです。

この記事へのコメント

2019年08月22日 02:14
彼我の教育の違いには、ビックリです。
日本の教育も、多様性を尊重する方向へ、変化してほしいものです。
ノートの端っこに書かれていたという言葉、ナイスなタイトルですね。
この頃の、蒸し暑くて、不安定な天気、身体がついて行けません。
遊哉
2019年08月22日 08:25
☆ 毎日ばらいろ さん、ほんとうにビックリです。
 この本を読むと、いろんな面で日本の教育内容が遅れていることがわかります。教科だけでなく、人としてのあり方を教えなきゃいけませんね。
 このタイトル、なかなかいいですね。この少年の気持ちをよく表していると思います。
 蒸し暑さはたまりませんね。バカ親父もSORAもちょっと疲れ気味です(^^ゞ。