『はっとりさんちの狩猟な毎日』



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       〔公園の花壇で咲き始めたダリア〕

 サバイバル登山家の服部文祥さんの奥さん・小雪さんが、狩猟に目覚めた夫と子どもたちとの生活を、楽しいイラストとともに描いたエッセイ集である。
 サバイバル登山というのは、装備を切り詰め狩猟などをし ながら食糧を現地調達していく登山のことである。
 そんな登山を始めた夫に呆れたり反発しながらも、長男、次男、長女と子どもが増え、はたまたニワトリ、犬、猫……などの家族がどんどん増えていく。
 そんな家族のおかしなというか異常(?)な生活を生き生きと描き出している。

 著者について、奥付から紹介しておく。
<1969年生まれ。イラストレーター。女子美術大学美術学科洋画専攻卒、同大学ワンダーフォーゲル部出身。夫と二男一女と横浜に在住。>

 目次から内容を見ると、次のようになっている。

はじめに
① 登山家の妻になる
 ちゃぶ台からはじまる/小さな平屋に住む/細胞分裂/孤独/心配の正体/生きていればすべてよし/気になる世間体/近所の友達/サバイバル登山家の誕生/父と子/台所にて
② 動物の命を食べる
 丘の上のゲタの家/サラリーマン猟師/肉は語る/動物の解体/はじめての猟/殺しは悪か/ヌートリア弁当を作る
③ ニワトリのいる暮らし
 ヒヨコがやってきた/キング、登場/庭の小さな恐竜たち/ご近所問題/「モア」を食べる/女王「パープル」/生ゴミが卵になる/卵を孵(かえ)してヒヨコを育てる/ちびオスの運命
④ サバイバルは続く
 犬と猫がやってきた/次男、高校をやめる/夏のガマン大会/大人になっていく子供たちと/初めてのサバイバル登山/小さな山へ/ありふれた一日
巻末エッセイ
 普通でいてくださいと言われても無理です――服部文祥

おわりに

 著者は、「はじめに」でこんなことを書いている。

<夫の服部文祥は、獲物を調達しながら山を旅することをライフワークにしている登山家である。ヘビを口にくわえて不敵な笑みを浮かべている写真を見たことがある人がいるかもしれない。平穏に暮らす人々に対し、生きることの意味を無理やり考えさせるような挑発をするので、家族はいつも苦笑いしている。
 都会の中に住みながらも、なるべく自然に近い暮らしがしたいと願っていた。子供の頃に田舎で見た季節の花が咲く庭や、採れたての野菜の味が忘れられなかった。そうした思いは夫婦で共通していたのだが、文祥はどうすれば日々の暮らしを自力で作り出していけるのか、もっと本気で思い悩んでいたようだ。そして、考えたことを着実に実行に移していった。
 その過激さにこの人と一緒にいる限りおしゃれなスローライフなんてムリだわ、と私はあきれたが、一歩踏み出してみると生活は思ったよりも奥が深く、知らないことであふれていた。私はノートを取りだして、家族の姿やニワトリがお尻を振りながら歩く姿を落描きし始めた。>

 こうして始めた落描きに、文章をプラスしていったのがこの本である(^^ゞ。
 何か所か引用・紹介してみる。


 長男の祥太郎が生まれたころの話である。

<出産からひと月が経ち、通いでお手伝いに来てくれた母たちはお役御免となった。いよいよ家族3人の暮らしが始まるんだなと思っていると、文祥に「俺、年末年始は山でいないから」と言われた。
 置き去り、という言葉が頭に浮かんだ。数年前から、文祥は年末から年始にかけてベテランの山男たちにまざって厳冬期の黒部に入るようになっていた。
「初登攀」。そこに男たちのロマンが詰まっているのかもしれないが、生まれたての赤ちゃんと一緒にいることよりも大切なことがあるだろうか。
「正月に下界にいるなんて、山ヤじゃねぇ」と決め顔付きのセリフが飛び出した瞬間、私は一生うらんでやると心に決めて、顔をそむけた。>


<結婚前のことだが、文祥が真冬の黒部・立山連峰に出発する前、何かあったらどうしようと騒いでいたら、郵便で手紙を受けとった。
「不安な気持ちと闘って、山に入る。もしかして死ぬかもしれないと思うと、とても怖い。安全については誰よりも俺が考えている。だからマイナスのこと言って、呪いをかけないでください。
 こんなにショックな手紙をもらったのは、後にも先にも初めてのこと。人の心配を「呪い」だなんて、あまりにもひどいと思った。しかしすぐに後悔におそわれた。
 考えてみると、特別な立場なら何を言ってもいいというおごりがあった。万が一残されたときのことを思うと、不安にのみこまれそうになって耐えられなかったのだ。自分の不安を「あなたを心配している」というオブラートで包んで差し出す、偽善めいた行為が、決意を持って山に向かう身には許しがたかったのだろう。
「私、自分のことを心配していた」
「まったくだ。二度としないでね」
「……」
 まさかの釘を刺されてしまった。心配する立場もわかって欲しい、とかすかな期待を持った私が馬鹿だった。

 そんなことにも、それから20年経った今ではすっかり慣れてしまい、自分の時間こそが何ものにも代えがたいと感じている。余計な干渉を「しない方向」に労力を費やさなければならない(子供のこととなると、そう簡単にはいかないが)。
 最近は文祥がしばらく山に行くことがわかると、私はふーんとかへーとか背中で言いながら、心の中でニンマリしている。
 母親がたまにうきうきすることほど、家庭平和に有効なものはない。いつも台所に長い時間立って手の込んだ料理を作っている母が、突然インスタントラーメンを出してくれて、どうしたの? 今日はごちそうだねー、と食卓がいつになくにぎやかになった。あれは父の出張中の光景だったのだ。>


 文祥さんが日高全山単独縦走に挑んだ夏、台風が北海道南部を直撃した。
 2週間経って、山で学生から借りたという携帯で途切れ途切れの声を送ってきたが、下山したのはそれからまた2週間後だった。

<「父ちゃんが帰ってくるよ!」。母親が急に元気になったからか、子供たちは走り回る。ひげ面の山男が、でっかいザックを背に帰宅。お風呂から廊下に、もわもわ……とせっけんの香りの湯気がたちこめる。洗濯物が風に踊っている。夕飯は鰹の刺身、シラス、納豆、みそ汁、モロヘイヤのおひたし。
「あなたが留守の間、大変だったんだよ」
 たっぷり愚痴りたいところだったが、ぐっとこらえてそれだけ言うと、文祥は顔を上げて、ニヤっと笑い、
「いや、俺のほうが絶対大変だった」と言う。
 バリバリの男性脳を持つ文祥は、いつだって本当のことしか言わない。相手に共感する回路が壊れているようだ。
 何かに駆り立てられて冒険に行く人。家族になったばかりにその帰りを待ち続ける人。好きで選んだ道なのだけど、いつのまにか、「なんでこんなことしているの?」と他人事(ひとごと)のように文句を言いながら生きていく。
 一方で、冒険家が長旅から家族のもとへ帰ってくる光景は、人生の最も美しい光景として私の心に刻まれている。>


<祥太郎が小学校高学年になり、子供の友達と一緒にドッヂボールや鬼ごっこをする機会があると、文祥は一番強い子を本気で圧倒して、「やったやった、ざまぁみやがれ」と飛び上がって喜んだ。5年生の男の子が「文祥さんは、マジで大人げないなあ」とつぶやいた。
 幼稚園の園庭で本気でボール遊びをして園長先生に注意されたり、小学校のバスケットのリングにダンクシュートをした、などの逸話もある。お願いだから普通にして、と私は心からお願いした。
 私の友人をつかまえて、「化粧濃くないスか? 人を喰ったみたいな口してますよ」と言ったときは、奥さんたちの間で笑いのタネになった。みんなが口にはしないけれど思っていることに、文祥は何のためらいもなく踏み込んでいく。リスクを避ける人はつまらない人間で、笑われ者の彼は正直で正しいのかもしれない。その辺りのことが一緒にいて混乱させられるのが、文祥の困ったところであり、魅力なのだと思う。>


 文祥さんは狩猟免許を取り、狩猟にいくようになり、鹿などの肉を持ち帰るようになったが、

<2年後に肉とは別に、雄鹿の頭部が運ばれて来た。頭部の肉や脳味噌も、食べてみるという。家の中に動物の生首があるのはなかなかインパクトがあった。どこかの家から使ってないからあげる、と業務用パスタ鍋がやって来て、ガス台の上で鹿の生首がゆでられた。
 当時2歳の娘は、父親に脳味噌をアイスクリームのようにスプーンで食べさせてもらい「おっと(もっと)」と、ヒナのように口を大きく開いた。>


 面白かったりドキッとするようなことが、他にもたくさんあるのだが、この辺でオシマイ(^^ゞ。
 主に、夫と妻の関係や特に妻から夫への想いが描かれているところを選んでみたが、どのように感じられるだろうか。
 常識的にはとんでもない夫である文祥さんだが、小雪さんは最初は呆れたり反発したりするものの、しだいに文祥さんの嘘のない生き方や考え方に納得していった、というか小雪さんがしだいに逞しくなった、のではないかと思われる(^^ゞ。

 ほかにも、子どもたちとの関係や、しだいに増えていくニワトリ、犬、猫などとの生活、娘を連れてのサバイバル登山などが描かれていて、とても楽しく読めるのである(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『はっとりさんちの狩猟な毎日』 服部小雪、服部文祥(巻末エッセイ)、河出書房新社 刊、1620円、19.05.30. 初版発行
 巻末エッセイを書いている夫の服部文祥さんについても、奥付から紹介しておきます。
<1969年生まれ。登山家。作家。山岳雑誌『岳人』編集者。長期山行に装備と食料を極力持ち込まず、食料を現地調達する「サバイバル登山」を実践。著書に、『サバイバル登山家』(みすず書房)、『増補 サバイバル』(ちくま文庫)、『狩猟サバイバル』(みすず書房)、『百年前の山を旅する』(新潮文庫)、『サバイバル登山入門』(デコ)、『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房、梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞)、『獲物山』(笠倉出版社)、『アーバンサバイバル入門』(デコ)、『息子と狩猟に』(新潮社、三島由紀夫賞候補)など。>

はっとりさんちの狩猟な毎日
はっとりさんちの狩猟な毎日

<後記>子どもたちが成長するにつれて、自分で考え行動していくというのがよくわかります。
 それは文祥さんの生き方を見て学んだのでしょうが、母親である小雪さんの生き方からも学んでいるような気がします。
 ちょっと変わった家族の様子がイラストと文章で描かれていて、生き生きとしてとても面白いです(^^ゞ。
 巻末の文祥さんのエッセイも、なかなかに味わいがあるものです。
 子育てをしている方や、孫のある方には、一度読んでおいて損はないと思います。
 何かの参考になるかどうかは、わかりませんが……(^^ゞ。

 今日(22日)は雲の多い一日で、陽射しはあまり届きませんでした。
 気温も29℃くらいまでしか上がらず、日中は久しぶりにエアコンを切っていました。
 いつものごとくダラダラと過ごしました(^^ゞ。
 夕方の散歩は5時半ころに出ました。黒雲が覆っていて傘を持って出るかどうか悩みましたが、手ぶらで行きました。
 公園を斜めに上っていきます。

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 東の空も上空も、こんな雲に覆われていました。

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 夕日はもちろんまったく見えません。
 原っぱに出てすぐに、公園を回ることにしました。

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 原っぱに戻ってウロウロしていきました。

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 SORAはクネクネスリスリをして、ちょっと歩いてからまたスリスリをしました(^^ゞ。いつもより暗めだったので、ブレ写真が多いです(^^)/。
 ベンチに向かいました。

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 SORAはお座りをしてあちこち見ていました。

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 南東からの弱い風が吹いていて、雲は北西の方に流れています。

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 SORAはマッタリし始めました。

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 一様な雲が多いので、くっきりとしていませんが、面白い形の雲もありました。

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 馴染みのトイプードルと小さなワンコ2匹がやってきました。飼い主さんとおしゃべり(^^ゞ、

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 馴染みの黒柴も来て、トイプードルと挨拶していましたが、SORAは関係なくマッタリしてました(^^ゞ。
 みんなが帰ってから、こちらも帰ることにしました。

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 桜並木を下りて帰ってきました。

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 明日(23日)の横浜の南の端っこの天気は、雲が多くスッキリしない空で、朝夕は雨が降りやすいようです。
 ムシムシとした体感が続きそうです。

この記事へのコメント

2019年08月23日 23:23
あ~、これは好きな本かもしれない。
イラスト入りだし!
さっそく、アマゾンに注文です!
遊哉
2019年08月24日 00:59
☆ 毎日ばらいろ さん、文章も変なてらいがなくて面白いし、イラストもなかなかいいです。
 イラストを描かれる毎日ばらいろさんには、うってつけの本だと思います(^^ゞ。