『カリ・モーラ』



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      〔夕日が雲に隠れている今日の西空〕


 傑作サイコ・スリラーを書いている、米国の作家トマス・ハリスの新作『カリ・モーラ』を紹介する。
 トマス・ハリスといえば、映画化もされた『羊たちの沈黙』などの“レクター・シリーズ”四部作でサイコ・スリラーの金字塔を打ち立てた作家である。
 彼の新作なら読まねばなるまい、と思って読んでみた。なかなかに面白い(^^ゞ。

 プロローグは、次のように始まる。


<    1

 深夜。二人の男が一〇四〇マイルの距離を隔てて話し合っている。どちらも顔の半分が携帯電話のディスプレイの明りに照らされていた。闇(やみ)に浮かぶ顔の半分ずつが、いま話し込んでいる。
「あの屋敷はもう手の内にある。あんたの言ったとおりの場所だったよ。残りを教えてくれ、ヘスス」
 空電の雑音にまぎれて、か細い声が応じる。「でもな、こっちは約束の金額の四分の一しか、まだもらってねえんだ」ハアッ、ハアッ、と苦しそうな息遣い。「残りの金を、よこしな。早く送れって」ハアッ、ハアッ。
「なあ、ヘスス、おれがもしあんたの助けなしにあれを見つけてしまったら、あんたの懐(ふところ)にはもう一セントも金が入らないよ」
「そのセリフ、そっちが思ってる以上に、当たってるな。そんな名セリフをぬかすの、生まれて初めてなんじゃねえか」ハアッ、ハアッ。「いいか、そっちのほしがってるものはな、十五キロのプラスティック爆弾の上にのっかってるんだ……おれの助けなしにそいつに手をのばしたが最後、そっちはお月さままで吹っ飛ばされてら。そうなったら、たしかに、おれの懐にはもう金が入ってこねえよな」
「おれの手はどこまでも伸びるんだぜ、ヘスス」
「でも、月からここまでは届くまいよ、ハンス・ペドロ」
「おれの名前はハンス・ペーターだってば」
「そうか、どこまでも伸びる手で、いつでも一物(ペーター)をいじくれるってのかい? それが自慢なのか? そっちの個人情報なんぞ、どうでもいい。それより、さっさと金を送りな」
 電話は切れた。二人の男はそれぞれに暗闇を見つめていた。
(後略)>


 いかにも悪党たちの会話、というものである(^^)/。

 主人公は、マイアミに暮らす美貌のカリ・モーラで25歳。コロンビアから米国に移住し、獣医になることを夢見て、今は傷ついた野鳥たちの保護に情熱を傾けている。
 故国のコロンビアでは、生まれ故郷から11歳の時に反政府左翼ゲリラに拉致され、少年(少女)兵として過酷な生活を強いられたという過去があった。

 カリは生活のためにいろんなアルバイトをしていたが、そのひとつにマイアミ・ビーチにあるかつての麻薬王パブロ・エスコバルが遺した大邸宅の管理をしていた。
 だがその大邸宅には、とんでもない秘密があった。地下の金庫に時価2500万ドルという金塊が眠っていたのである。
 そこに乗り込んできたのが、全身無毛の臓器密売商のハンス・ペーター・シュナイダーだった。金庫の秘密を握るヘスス・ビジャレアルから情報を得て、映画撮影と偽ってエスコバル邸を借り金庫破りに乗り出したのである。
 ところが金庫には、下手に開くとプラスチック爆弾が爆発するという仕掛けがしてあった。
 上のプロローグは、その仕掛けの秘密をハンスがヘススから聞き出そうとする電話での会話だった。

 カリは、ハンスらが乗り込んできたときに、色目を使う彼らは危険な悪党たちだと見抜き、すぐに管理のバイトを辞めたのだが……
 金庫を巡る争奪戦には、コロンビアで犯罪組織を仕切るボスのドン・エルネストも絡んでくる。
 その二人を手玉にとろうと、パブロ・エスコバル一味の残党が私利をせしめようとする。
 はたまた、悪徳弁護士が割って入ってくる……さながら泥沼の様相を呈してくるのである。
 カリは不本意ながら、その渦中に巻き込まれていくのであった。
 悪党どもが丁々発止の争奪戦を繰り広げていく中、カリははたしてうまく乗り切ることができるのだろうか?
 
 一方で、臓器密売商で猟奇殺人者のハンスが妄執の的として、美貌のカリの体を狙ってもいたのである。
 カリはハンスの罠から逃げ切ることができるのだろうか?
 テンポのいいトマス・ハリスの筆致で、一編の小気味のいい“ハード・ノワール”ともなっており、ワクワク・ドキドキと楽しめるのである(^^ゞ。

 あらすじはこれくらいしか書けないが、小林信彦さんが、『週刊文春』(8月15・22日号)の「本音を申せば」で、「真夏の夜の読書が始まる」と題して、『加藤武 芝居語り』(筑摩書房)と併せて、この本というかヒロインのカリ・モーラを紹介している。
 次のようなものだ。

<トマス・ハリスときけば、檻の中に入っているレクター博士(「羊たちの沈黙」)を思い浮かべるが、さすがに十三年たったから、主役も変っている。
 マイアミ・ビーチにかつての麻薬王、パブロ・エスコバルののこした大邸宅がある。その地下に時価二千五百万ドルの金塊があり、それをめぐって悪党どもがはげしく争うという発想が、よくあるようでいて、やはり面白い。
 カリ・モーラ
 おぼえにくい名前である。二十五歳。コロンビアからアメリカに移住し、獣医になるのを夢見て、いまは野鳥たちの保護に熱心な女性。その名前をきけば、悪党どもは浮き浮きするのだが、カリ・モーラは銃の引き金に指をかけるのは平気である。
 日灼けしたこの女性の、くわしい描写はしていないが、肌の具合や、表情が感じとれるのはさすがといえる。彼女が好きな老悪役、枯淡の境地にあるベニート老人以外に気持の良い悪党は出てこない。悪党同士の殺し合いという古典的な眺めの中に、ヒロイン、カリ・モーラが登場する物語の題名は、あっさりと「カリ・モーラ」(新潮文庫)。
 レクター博士に代って若い女性を中心にした新しいピカレスク・ヒーローの登場といえる。>


<今日のお薦め本>
『カリ・モーラ CARI MORA』 トマス・ハリス 著、高見 浩 訳、新潮文庫、961円、19.08.01. 発行
 著者について、「訳者あとがき」から紹介しておきます。
<1940年、テネシー州に生まれる。1964年、テキサス州のベイラー大学を卒業後、犯罪ルポルタージュをメインとしたジャーナリストに。1968年から74年まで、AP通信のニューヨーク支局に勤務。第一線の社会部記者として、実在の連続殺人事件等を取材した。1975年、作家に転じ、処女作『ブラック サンデー』を発表。以後『レッド・ドラゴン』(1981年)、『羊たちの沈黙』(1988年)、『ハンニバル』(1999年)、『ハンニバル・ライジング』(2006年)と書き継いで、〝レクター・シリーズ〟の名を不動のものとした。>

カリ・モーラ (新潮文庫)
カリ・モーラ (新潮文庫)

<後記>さすがのトマス・ハリスです。極彩色の恐怖と波乱の展開に震える“傑作サイコ・スリラー”になっています(^^)/。
 とはいえ、悪党どもの金塊争奪戦の描写がちょっと長引き、主人公のカリ・モーラはどこへ行っちゃったの? と思うところが無きにしも非ずです(^^ゞ。
 でも最後のほうの、カリのハンスとの容赦のないタフな戦いぶりは、“してやったり”と思える面白さです。
 カリ・モーラという凛としたニュー・ヒロインが生まれました。続篇が果たして出てくるのかどうか? 楽しみに待つことにします(^^ゞ。
 
 今日(9日)も朝から夏の陽射しが続き、猛暑になりました。
 日中はどこにも出かけずに、テレビを観たりダラダラと過ごしました(^^ゞ。
 夕方4時半ころから雲が広がり、陽射しが射さなくなってきました。
 散歩は6時ころに出ようと思っていましたが、5時半ころ……

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 SORAが上目遣いにこちらをじーっと見つめるので、負けました(^^)/。
 すぐに散歩に出て、公園を斜めに上っていきます。

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 上空には薄雲が舞っています。

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 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 南西の空です。薄雲の中に月が見えました。

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 夕日は黒雲の中に隠れています。

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 北の空にも薄雲が舞っていました。

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 南東の空です。

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 サンゴジュの赤い実がいっぱい生っていました。

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 西寄りの南の空に、月がはっきり見えてきました。
 公園を回ることにしました。

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 原っぱに戻って、またウロウロしていきます。

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 SORAは子どもたちが遊んでいるすぐ近くで、クネクネスリスリをしてから一休み(^^ゞ。

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 SORAがまたクネクネスリスリをしてから休みました(^^ゞ。
 ベンチに行くことにしました。

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 夕日は黒雲から出てきそうもありません。

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 途中でSORAがまたクネクネスリスリをしました(^^ゞ。
 ベンチに座りました。

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 SORAはのんびりとあちこちのワンコを見ていました(^^ゞ。

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 北の上空にトビがたくさん輪を描いていました(^^)/。
 馴染みのワンコと飼い主さんの家族が来たのでおしゃべりしました。

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 みんなが帰ったあと、SORAはベンチを下りてマッタリしていました。

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 北東の空です。
 帰ることにしました。

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 帰り道で振り返ると、南の空に月がくっきりと見えました。

 明日(10日)の横浜の南の端っこの天気は、南寄りの風が吹いて夏空が広がり、昼間は気温がグングン上昇するようです。
 午後はにわか雨や雷雨になるかもしれません。

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