『マンハッタンの狙撃手』



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       〔夕散歩の帰りに見えた南東の小焼け〕

 タイトルに「狙撃手」が入った本の紹介が続く。
 そんなに「狙撃手」が好きなのか? と言われそうだが、狙撃手にかかわる物語が好きなのである(^^ゞ。
 まあ、たまたまそんな本を続けて読んで面白かったから、紹介するだけである(^^)/。

 今回の物語は、元FBI捜査官で、現在はコロンビア大学教授で宇宙物理学者のルーカス・ペイジが主人公である。
 彼は10年前の捜査中の事故で、片腕、片脚、片目を失い、義肢と義眼を装着した現在は、天才科学者にしてベストセラー作家であり、大学教授として名声を博していた。
 小児外科医の妻エリンとともに、不遇の子どもたち4人を養子に迎え、もうひとりも養子に迎えようとしている賑やかな大家族で暮らしている。

 この物語は、そのルーカスが頭脳と行動力で事件を解決していくのだが、FBIやニューヨーク市警が活躍するから、警察小説と言ってもいいかもしれない。

 プロローグは、次のように始まった。


<    1

十二月十九日、ニューヨーク――東四二丁目とパークアベニューの交差点付近

 ニミ・オルセンは過ちをしでかした。交差点の半ブロック手前で四二丁目を横断しようとし、信号に間に合わなかったのだ。そのせいで彼女はいま、蛇のような跡が残る凍りついた車道のまんなかで立ち往生し、寒風にさらされている。車の群れが殺人的な勢いで疾走し、数秒おきにドアミラーが彼女の腰をかすめていく。
 どの車もいつになく攻撃的だった――誰もがうんざりして気が滅入り、いささかでも暖を取れるなら糞便に火をつけるのもやぶさかではなかった。ここ二週間、マイナス二十度近くの日々が続いており、これは過去一世紀あまりで最大の寒波によるものだ。ニュース局の半分は現在進行中の気候変動と報じ、人類は絶滅へまっしぐらに突き進んでいると警告した。残りの半分はこの凍結状態を、地球温暖化が作り話である証拠だと主張した。それらの局の見解によれば地球温暖化というのは、電気自動車のテスラを運転して栄養価の高いケールのような野菜を食し、憲法を焼き捨てようともくろむ騒々しい悲観論者がでっちあげたたわごとなのだ。ともあれ寒いという一点だけは、だれしも異論の余地がなかった。
 ニューヨーカーなら誰でも、一度や二度は車道のまんなかでよろめき、猛り狂う車の群れを相手に闘牛士を演じる羽目に陥っている。場合によっては、死亡記事に載ることになる。この街で育ったニミはいつも、車に轢かれるのは自分ではないと思っていた。毎年、マンハッタン島では一万五千人以上の歩行者がボンネットのエンブレムに突き飛ばされ、救急車に乗せられる。そのうちで帰らぬ人になるのは二百人ほどだが、彼女はそんな事態を考えたくもなかったし、まして実践するのはまっぴらご免だった。
 ニミは左右を見まわし、突っ込んでくる車の群れに隙間ができるのをうかがった。氷の真上で立ち往生してから五分が経過し、一刻も早く向こう側の歩道にたどり着きたい。
(後略)>


 記録的な寒波に見舞われたニューヨークはマンハッタンで、車道のまんなかに若い女性の歩行者ニミが取り残された。
 そこに、彼女を横断させようと停車しかけた一台の車があった。
 ところが信じがたいことに、そのドライバーに狙撃手の銃弾が襲いかかり、ドライバーは頭部を粉砕されて即死した。
 ブレーキから彼の足が離れて車はそのままの勢いで突進し、ニミは車と街灯の柱に挟まれて犠牲となった。

 周辺には超高層ビルが建ち並び、折からの吹雪で犯人の痕跡も吹き飛ばされ、狙撃地点の特定は不可能に近かった。
 FBIマンハッタン管区主任捜査官のブレット・キーホーは、彼が“魔法の目の持ち主”と呼ぶルーカスを最後の頼みの綱としてすがることにした。
 しかし、クリスマスを家族とともに過ごすことにしていたルーカスは、瀕死の重傷を負った元凶であるFBIの仕事に復帰するなど思ってもみなかった。妻のエリンも猛反対する。
 でも、狙撃事件の被害者がFBI時代の元相棒ダブ・ハートキーと聞かされて心が揺れ動く。それに、彼自身が狙撃の謎を解きたいという気持ちもどこかにあり、誘惑に抗しきれなくなった。

 ルーカスは他人からは神秘的ともとれる数学的能力で、狙撃現場の特定に成功する。
 ところが、FBIをあざ笑うように、次々に新たな狙撃事件が発生する。しかも、その被害者はいずれも法執行官だった。
 ルーカスはウィテカーという黒人の女性捜査官とともに、犯人の動機や、被害者との接点を洗い出そうとするのだが……
 事件の謎に近づくにつれて、彼自身のみならず、家族にまで危機が迫ってきた。
 はたして、事件の真相はどこにあるのか?
 そして犯人は誰なのだろうか?

 犯人に関する憶測が飛び交う中、ルーカスがたどり着いた真相、そして犯人とは?
 摩天楼で繰り広げられる頭脳戦を鮮やかに描いた傑作である(^^ゞ。
 

 話はちょっと変わるが、本書では現在のトランプ政権下の米国の社会状況に対して鋭い批評も提示されている。
 その一例としてちょっと長くなるが、ルーカスが反動的な考えを持つFBIの捜査官グローバー・グレーブスに、米国の銃犯罪についての自分の考えを説く場面を紹介しておく。

<「わたしは銃を所持することに反対しているわけではない。ただし我慢ならないのは、人々が銃を所持することで、死者数が激増するという統計的事実を受け入れようとしないところだ。憲法修正二条の問題点は、人々を誤解させることだ。この条項の存在によって、文句を言いたくなったら、銃でそれを訴える権利があるという誤った通念が蔓延している。この国の無差別銃撃事件の歴史をひもといて、死者数の統計を見なおしてみれば、イスラム過激派が影も形もないことに気づくはずだ。そこで見つかるのは、善良な成人男性や精神を患った人間だ――銃の所持は憲法で保障され、神に与えられ、イエスによって祝福された権利だと信じこんで育ってきた国民だよ。物事が思いどおりにならないと、こういう連中は圧政への抵抗者という隠れ蓑を身にまとう。そして自分たちが侮辱されたと勘ちがいすると、自動的に、そして無意識に、それを圧政のせいにして、自己の権利を主張するチャンスだと考えるんだ。さもなければ、いったいなぜ一万発もの弾薬を貯めこむ? 上司が気に入らない? 圧政だ! 自分のうだつが上がらないからフラれた? 圧政だ! いつも炭酸飲料を買っていたセブンイレブンのオーナーが韓国人になった? 圧政だ! こういう手合いのばかどもは、不満があるとすぐアサルトライフルを持ち出す。イスラム教徒がそんなことをすれば、憲法修正二条の支持者はそいつをテロリスト呼ばわりする。ところが、連中がいうところの真のアメリカ人が同じことをしても、それは冤罪というわけだ。真実を直視しようとせず、陰謀論に浸っている連中もいる――ひそかなる世界秩序が、世論を刺激して国民から銃を取り上げるために、凶悪犯罪を引き起こしているという、わけのわからない理屈だ。しかし真実はちがう。これだけおびただしい銃が市中に出回っているのは、この国の文化がもたらした過ちなんだ。前にも言ったが、アメリカは衆愚政治によって危機に陥っている。世界各国の犯罪統計に目を向けるだけで、そのことは一目瞭然だ。そういうわけで、わたしの意見は明確だ。現時点で、平均的なアメリカ人が、イスラム過激派のテロリストを恐れる理由は統計上まったくない。少なくともいまのところは」>

 ちなみにルーカス自身は銃を持たずに捜査を行っている。殺されそうな危機に陥り、相棒のウィテカーに助けられもするのである(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『マンハッタンの狙撃手 CITY OF WINDOWS』 ロバート・ポビ 著、山中朝晶 訳、ハヤカワ文庫、1361円、19.09.15. 発行
 まったく知らなかったのですが、作者は国際的ベストセラー作家だそうです(^^ゞ。
 カバー裏から紹介しておきます。
<カナダ出身。ジョージアン様式専門の骨董商を経て作家になる。2012年に出版されたデビュー長篇 Bloodman が15の言語に翻訳され世界的ベストセラーとなった。モントリオール、北カリフォルニア、フロリダを行き来しながら、インターネットの繋がらない山の中のコテージで執筆活動をしている。本書が初の邦訳作品である。>

マンハッタンの狙撃手 (ハヤカワ文庫NV)
マンハッタンの狙撃手 (ハヤカワ文庫NV)

<後記>本作は前回の“本の紹介”で載せた『狙撃手のゲーム』とは、狙撃手を描いていることは同じですが、ずいぶん毛色の異なる物語です。
 『狙撃手のゲーム』はスワガー・シリーズの定番として、狙撃手と狙撃手の一対一の対決がワクワクするのですが、本作はFBIを中心とした捜査陣と狙撃手の対決が見ものです。
 謎解きのミステリーとしては、本作のほうが面白いかもしれません(^^ゞ。

 本作の最大の魅力は、主人公をはじめとした登場人物の個性的で味わいのあるところでしょうか。
 主人公ルーカス・ペイジは、一見偏屈で取っつきにくいところがありますが、並外れた頭脳と高潔な精神の持ち主で、ところどころで幼少時代の回想シーンが織り交ぜられ、複雑な心のあり方なども理解できて興味深いです。
 相棒となるウィテカー捜査官はクールで頭脳明晰で逞しく、相手の考えを読めるという特殊能力をもっています。ルーカスとの会話がユーモアや皮肉が効いていて愉快です。ラストで彼女のファーストネームがはじめて判明する経緯が、思わずクスッと笑えるものです。
 ルーカスの家のガレージを間借りしているディンゴは、元戦場カメラマンで両脚を失いましたがブラジリアン柔術の達人です。ルーカスの家族を助ける場面では手に汗を握らせます。
 その他、FBIマンハッタン管区主任捜査官のブレット・キーホーはやり手ですが、何を考えているかわからないとことがあり影があって味わいがあります。本作では多くは語られていませんが、ルーカスとの間には何か複雑な事情があるようです。
 その他の脇役も一癖も二癖もある人物たちが満載で、この物語を味わい深くしています。
 これらの主人公や脇役たちが活躍する続篇を期待してます(^^ゞ。

 今日(16日)は午前中は雨が降り、午後からは止んだものの陽射しはありませんでした。
 気温は30℃を超えて蒸し暑くなるという予報でしたが、あまり上がらず涼しかったです(^^ゞ。
 早朝、カミさんが着付けの仕事に行ったので、散歩に出ました。

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 小雨が降っているので傘を差して行きました。
 公園の斜面を上って原っぱに出て、ウロウロしていきます。

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 東の風がときどき強く吹いていました。

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 SORAが早めに階段を下りたので、そのまま帰ってきました(^^ゞ。

 カミさんは午後1時ちょっと前に帰ってきました。
 午後はのんびりテレビを観たり、居眠りをしていました(^^ゞ。
 散歩は5時ころに出ました。空は雲に覆われています。
 公園を斜めに上っていきました。

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 夕日は見えそうで見えませんでした(^^)/。
 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 キジバトが何かをさかんについばんでいました。パートナーはだいぶ離れたところにいました。夫婦喧嘩中でしょうか?(^^)/。

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 夕日が顔を見せ始めました。

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 SORAがマッタリし始めました(^^ゞ。

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 陽射しがしっかり届くようになりました。SORAはまったく動きません(^^)/。

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 北東の空にはこんな雲がありました。

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 夕日が静かに沈んでいきました。

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 落日後の夕空はきれいです(^^)/。
 SORAがやっと立ち上がったので、ベンチに行きました。

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 空の中層が小焼けになっていきました。

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 SORAはマッタリとあちこち眺めていました。

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 面白い形の雲も出ています。
 北東の風が吹いていて、雲は南西方向に急速に流れていました。

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 SORAは眠ったようにマッタリし続けました(^^ゞ。

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 小焼けが終り始めました。

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 暗くなってきたので帰ることにしました。

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 南東の空が小焼けになっていました(^^)/。

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 桜並木を下りて帰ってきました。

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 明日(17日)の横浜の南の端っこの天気は、昼ころからは陽射しが届くこともあるようですが、雲が広がることが多そうです。
 気温が上がり、昼間は蒸し暑さが残りそうです。

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この記事へのコメント

ゆらり人
2019年09月17日 13:31
こんにちわ!
暫くご無沙汰しており失礼しています。
何時もながら沢山の記事を更新されていますね、
 私などはサボつてばかりでしたが、少し涼しくなったので、気合を入れようと思ってはいますがね。
 何時もの夕日に青い空、ワンちゃんも元気でお気に入りのベンチでワンショット、その上考えさせられる記事やご意見に感じております。
まだまだ暑い時が有りますので御体充分に御留意されご活躍ください。
失礼します。
遊哉
2019年09月17日 20:34
☆ ゆらり人さん、こんにちは♪
 お金はないですが、時間だけはたっぷりあるので、まあヒマつぶしでブログ記事を書いてます(^^ゞ。
 ゆらり人さんの面白い話やなかなかのモノづくりを楽しませていただいてます。涼しくなっていくので、どんどん記事をアップしていってください(^^ゞ。
 毎度同じような記事ですが、空の様子は毎回違うので面白いです。SORAはだいぶ老体になってますが、元気で過ごしています。
 まだ蒸し暑い残暑があるようですが、お互いにノタノタ元気で行きましょう!(^^ゞ。