『堕落刑事』



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      〔夕方の散歩帰りに見たどんより空〕

 英国はマンチェスター市警の刑事、エイダン・ウェイツ(エイド)を主人公とするシリーズの第一作『堕落刑事』を紹介する。
 作者は英国の作家ジョセフ・ノックスで、一躍注目を浴びた衝撃のデビュー作である。

 次のような6章から構成されている。

Ⅰ アンノウン・プレジャーズ Unknown Pleasures
Ⅱ サブスタンス Substance
Ⅲ クローサー Closer
Ⅳ スティル Still
Ⅴ コントロール Control
Ⅵ パーマネント Permanent


 プロローグは、次のように始まる。

<あのあと、俺は夜勤に戻された。俺を日の当たる場所には二度と出せない。俺は午前四時の緊急通報に応じ、動かないエスカレーターを上り、下った。何も考えないようにした。以前なら造作ないことだった。数カ月が過ぎ、吐いた息が白くなるのを見て、愕然(がくぜん)とした。また十一月が巡ってきたことが信じられない。
「俺は休憩中だ」サティは意地でも車を降りようとしなかった。雹(ひょう)の降る夜もあれば、みぞれの夜もあった。今夜は土砂降りで、雨は街灯の光を撒(ま)き散らしながら路面を洗っている。こういう日がなければ路面はずっと汚れたままだ。サティが新聞をよこし、俺はそれを傘代わりに広げて車を降りた。
 チャリティ・ショップからの通報だった。俺は店長の唇が動くのを見つめた。戸口で雨宿りしているホームレスを追い払ってくれという。腑(ふ)に落ちない話だったが、俺も真剣に聞いたわけじゃない。店長の真っ黒な鼻毛はもつれて固まり、そのままヒトラーの口ひげに育ちそうだった。俺は戸口で眠りこんでいる男や女を見やり、警察の時間を無駄にするなと言い置くと、雨のなか車に戻った。
 車に乗りこみ、濡(ぬ)れた新聞をサティに返した。一緒に来なかった罰だ。サティはむっとして俺を見たあと、小さく折りたたんだずぶ濡れの新聞に視線を向けた。
「これ見たか」サティは新聞をこっちに向けて俺の反応をうかがった。「こんな死に方はしたくないよなあ」
(中略)
「話せよ。あれはいったい何だったんだ」
「俺はサティをまっすぐに見た。「訊く相手を間違ってる」
 俺が知っているのは始まりだけ、一年前の始まりだけだ。俺が食らったスリーストライク、そしてノーと言えなくなった理由だけ。俺の人生をかすめて去った女たちのことは、とうてい説明できない。俺の人生をほんの一時(いっとき)だけ変えた女たち。話したところで伝わらないだろう。彼女たちの笑い声、屈辱感、そして秘密。その夜の残りの時間、俺の視線は通りを行く人々、少女たち、女たちの上をさまよい続けた。あの三人が生きられなかった人生がそこに重なって見えた。
 朝早く部屋に帰り、グラスに酒を注いで腰を落ち着けた。ラジオをあちこちの局に合わせてみたものの、先延ばしにも限界が来た。記事をもう一度読み、何カ月かぶりかであの記憶と正面から向き合った。
「あなた私まで殺すのね」と彼女は言った。
 俺が知りたい。あれはいったい何だったのか。>


 物語はプロローグの1年前に始まる。
 酒を浴びるように飲み、薬物(スピード)を摂取するようなエイダン・ウェイツは、マンチェスター市警の刑事だった。
 市警の保管室から証拠品のドラッグをくすねて停職処分となり、裁判と解雇を待つ身となったウェイツは、警視のパーズに呼び出された。
 麻薬密売組織“フランチャイズ”に潜入し、組織に君臨する若き帝王ゼイン・カーヴァーの懐に入り込めという任務を与えられが、それはパーズの個人的で秘密裏の指令だった。
 捜査は、“フランチャイズ”壊滅の証拠を握ると同時に、カーヴァ―と内通する市警内の裏切り者を特定しろというものだ。
 それだけでなく、有力政治家で司法大臣のデヴィッド・ロシターの十代の娘で、家出をしてカーヴァ―のもとにいるイザベルを、ドラッグに染まる前に救い出し家族の元に帰すという任務まで追加された。
 堕落した刑事であるウェイツは、ただの“捨て駒”として使われようとしていたのだ。

 警察のスパイであることがカーヴァーに知れたら消されるに決まっている。危険極まりない任務である。
 だが、この任務をうまくこなすことができれば……という儚い思いから、ウェイツはこの申し出を引き受けた。唯一の選択肢だったのだ。
 彼は、麻薬密売の集金係キャサリンに近づき、カーヴァ―の屋敷で週末ごとに開かれる華やかなパーティーに潜り込み、少しずつ核心に迫っていった。
 その潜入捜査に手応えを感じ始めたころ、イザベルが無残な死体となって発見された。
 いったい誰がイザベルを殺したのか?
 この事件をきっかけに事態は思ってもみない方向に展開していく。

 10年前にカーヴァーの元から失踪したジョアナ・グリーンローの行方も追うことになったり、フランチャイズに敵対する麻薬密売組織“バーンサイダーズ”が反撃を始めたり、イザベラの家出原因が性的虐待であることがわかってきたり、警察内部の腐敗ぶりがわかってきたりと、事態はなんとも複雑な様相を呈してくる。
 はたして、ウェイツはドラッグ世界の闇のなかで、こんな状況をうまく乗り切ることができるのだろうか?


<今日のお薦め本>
『堕落刑事 ― マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ SIRENS』 ジョセフ・ノックス 著、池田真紀子 訳、新潮文庫、1015円、19.09.01. 発行
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<英国のストークとマンチェスター周辺で生れ育ち、書店やバーで働く。ロンドンに移って執筆活動を開始し、『堕落刑事』で作家デビュー、一躍注目を浴びる。シリーズ第2弾 “The Smiling Man” も好評を博し、2019年夏に第3弾 “The Sleepwalker” を発表。>

堕落刑事: マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ (新潮文庫)
堕落刑事: マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ (新潮文庫)

<後記>ウェイツは一時行方知れずとなり、マスコミの脚色で「汚職刑事エイダン・ウェイツ」という新聞やテレビで報道されたりもします。
 麻薬密売組織に潜入している身としては、それを甘んじて受け入れつつ任務を遂行していくウェイツでしたが、ラストはなんとも切ないものになります。
 警察小説とはいえ、一匹狼の刑事の物語であり、ノワールでハードボイルドのちょっと変わったサスペンス・ミステリーになっています。
 ウェイツはなんとか首がつながりますが、プロローグでわかるように巡査に格下げされてしまいます。
 第3作目まで発表されているようで、彼がこの先どんな活躍(?)をしていくのか興味津々です。
 このシリーズの邦訳が続くことを期待してます(^^ゞ。

 今日(4日)も昨日に引き続き雲の多い一日でした。気温が26℃くらいまでしか上がらず、過ごしやすかったです。
 昼間はダラダラとテレビを観たり本を読んでいました。
 夕方の散歩に出たのは5時ちょっと過ぎでした。

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 空はどんよりとした雨雲に覆われ、霧雨がほんの少し降っていたので傘を持って行きました。
 公園を斜めに上っていきました。

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 もちろん夕日はまったく見えません(^^)/。
 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 SORAがクネクネスリスリを始めました(^^ゞ。

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 だいぶ暗めなので、ブレブレ写真になっています(^^ゞ。

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 原っぱをぐるっと回ってから、端っこのベンチに座りました。

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 しばらくのんびりしました。SORAはあちこち眺めていました(^^ゞ。
 桜並木を下りて帰ってきました。

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 明日(5日)の横浜の南の端っこの天気は、わずかに陽射しが届くことがあっても、雲の多い一日になりそうです。
 午後はにわか雨が降るかもしれません。

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