『わが母なるロージー』



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         〔南の薄雲の中に見えた月〕

 フランスの作家ピエール・ルメートルが描くカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの番外編『わが母なるロージー』を紹介する。
 このシリーズは、第1作『悲しみのイレーヌ』、第2作『その女アレックス』、第3作『傷だらけのカミーユ』と大人気を博した3部作である。
 本作はその番外編として、第2作と第3作の間に起きた事件として書かれた中篇の新作である。
 作者の「序文」によれば、このシリーズは3冊半で完結ということになるようだ(^^ゞ。


 プロローグは、次のように始まる。


<  十七時

 人生を変える思いかげない出会い、道が凍っていると知らずに踏み出す一歩、深く考えずに投げる返事……。決定的なものごとというのは、起こるのに一秒もかからない。
 たとえばこの八歳の少年を見てやってほしい。いまや彼が一歩踏み誤るだけで、取り返しのつかないことになりかねない。どういうことかというと、少し前に母親がタロット占いで、今年中に未亡人になるでしょうと言われ、それを息子に話したのだ。これ見よがしに涙を流し、胸元で両手を握りしめ、声を詰まらせながら。「誰かに話さずにはいられないもの、わかるでしょ?」と。少年のほうは父親を不滅の存在だと思っていて、死ぬことなど想像もしていなかったから、青天の霹靂(へきれき)だった。そしてそれ以来、恐怖にとりつかれている。信じがたいことだが、世のなかにはこういう母親もいる。三十歳なのに中学生並みの分別しか持ち合わせていない。さらに困ったことに、自分で言っておきながらそのことをとっくに忘れている(無分別なうえにひどく忘れっぽく、同時にふたつの考えを頭に入れておくことができない。ひとつ入れたら、前のひとつは時に嘆かわしいほどの速さで押し出される)。だが八歳の息子のほうは忘れるどころではない。彼の空想の領域は丸ごと占い師の話に占領されてしまい、やたらと怖い夢を見るのに、そのことを誰にも話せない。父親が死ぬという恐怖にとりつかれ、吐き気がする日もある。かと思うと、呪文が効いたかのように恐怖が消え、数週間そのままということもある。だがそういうとき、ふたたび戻ってくる恐怖は十倍くらい強くなっていて、文字どおり足が震えてしまい、なにかにつかまってへたり込むしかない。
 だから恐怖が復活するたびに、少年は次々と厄払いの方法を考えて父親の命をつなごうとする。そして自分がそれにしくじったら父親が死ぬ、と思い込んでいる。
 今日考えた厄払いは、「ぼくが歩道の継ぎ目を踏まなければ、パパは死なない」というものだった。ただし家からずっとではなく、パン屋から先だけと、少し範囲を絞った。
(後略)>


 さて、いったい何の話なんだろう? と思わされる(^^ゞ。
 この少年がジョゼフ=メルラン通りを音楽教室に向かって歩いていると、歩道の先に父親が現われ、こちらに向かってくる。
 その時、とんでもないことが起きた。
 強烈な爆発で界隈全体が振動し、地震のような揺れと同時に、100メートル離れたところまで爆風が届いた。
 少年の目の前で父親は宙を飛び、少年自身も爆風で飛ばされた。

 幸いなことに、負傷者は28人出たが、死者はいなかった。
 パリ警視庁中央研究所の爆発物のプロであるバザンが現場を調べると、その爆発は第一次世界大戦の140ミリ砲弾の不発弾を利用して仕掛けたものだとわかる。

 その直後、ジャン(ジョン)・ガルニエという27歳の男が警察に出頭し、その爆破事件は自分がやったもので、カミーユ・ヴェルーヴェン警部としか話さないと言うのである。
 カミーユが会いにいくと、ジャンはとんでもないことを要求した。
 7か所に同じ爆弾を仕掛け、1日に1個ずつ爆発するようにしてある。あと6か所残っている。
 母親のロージーが衝動殺人で未決拘留されているが、その母と警察留置になることが確実な自分を釈放し、“証人保護プログラム”みたいなやり方で新しいIDと500万ユーロを用意し、オーストラリアで暮らせるようにしてほしい、と言うのである。
 そして出国できれば、残り6か所の爆弾の在りかは教える、と言う。

 カミーユは、
「そんなのはアメリカの制度であって、ここじゃやってない! テレビドラマの見すぎじゃないか? ここはフランスであって――」というのだが、ジャンは取り合わない。
 カミーユらはジャンを説得しつつ、爆弾の在りかを必死で探っていく。
 翌日の朝9時に幼稚園で次の爆弾が爆発するとジャンは言っていたが、それは起きなかった。
 ホッとしたのもつかの間、別の場所で爆弾がみつかる。
 そして夜の9時になると、郊外の幼稚園で仕掛けてあった爆弾が爆発した。
 ジャンが仕掛けた時間をまちがえたのだろうか?
 カミーユは、ジャンの真の狙いは他にあるのではないかとにらむのだが……

 残った4つの爆弾を求めて、国を挙げての捜索が行われていく。
 はたしてカミーユはジャンを説得するか爆弾を発見し、未然にそれらの爆発を防ぐことができるのだろうか?
 それとも、これまでは死者が出なかったが、次は多くの死者が出る大災害になってしまうのだろうか?

 ラストは、残酷にして意外、壮絶にして美しい終幕を迎えるのだった(^^ゞ。


 あら筋はここまでとしておくが、主人公カミーユ・ヴェルーヴェン警部について、本文から少し引用・紹介しておこう(^^ゞ。
 こんな男である。

<カミーユ・ヴェルーヴェンという男は百四十五センチの怒りの塊だ。百四十五センチは男性にとっては小さすぎるが、鬱屈した怒りにとっては大きすぎる。さらに警官という職業にとっては、たとえ抑制されたものであっても、怒りが四徳のひとつに入ることなどありえない。報道向けの思わぬサービスになるのがせいぜいで(注目を浴びた事件で、カミーユの辛口の応答がもてはやされたこともある)、それ以外の場面では、彼の怒りは警察上層部、聴取される目撃者、同僚、判事等々、ほぼすべての人にとって厄介な問題でしかない。
 だがカミーユは、時にかっとなって声を荒げはするものの、そういう自分を十分すぎるほどに警戒している。つまり、どちらかというと爆発寸前でとどまれるタイプで、すぐに拳が出るようなことはめったにない。その点は日頃からうまくコントロールしていて、というのも、身長のせいで手だけで運転する車に乗っているので、指の置き場所ひとつにも神経を使わなければならず、常に冷静であることを強いられるからだ。ひとつでも操作を誤れば車が道路脇に突っこんでしまう。>

 こんな男である(^^ゞ。
 彼は画家の母を亡くし、妻イレーヌは誘拐され殺され、父も亡くし、子どももいない。猫のドゥドゥーシュと暮らす寂しい男である。妻が殺害されて意気消沈してしばらく仕事を離れていたが復帰したという過去を持っている。
 現在の彼には知り合って間もないアンヌという恋人ができて、なかなかいい関係である。
 この事件が起きる前にアンヌから、「戻るのがそんなに遅くないなら、食事しに来る?」という留守電へのメッセージで誘いを受けていた。
 でも、行こうとするたびに事件に関する急用ができて、行けないという連絡をしていた。
 そんなときの、アンヌとの電話のやり取りがある場面である。

<街はすでにがらんとしていて、車も気持ちよく走る。カミーユは青信号を通過しながらポケットから携帯を取り出した。次の赤信号でアンヌに《招待はまだ有効?》と打ち、その次の赤信号で《昨日からドアは開いたまま》という返信を読む。そのあとアンヌのところまで信号はない。にもかかわらず、カミーユはブレーキをかけざるをえなかった。携帯に新たな着信。判事からだ。《すぐ首相官邸(マティニョン)に来てください。迎えが要りますか?》
《アンヌ、ごめんよ、首相に呼び出された》
《それっていままでで最低の言い訳!》
《ほんとなんだ。いまマティニョンに向かってる》
《首相と一晩過ごすってわけ?》
《そうはならんだろう。でも頼まれたら断れないな。なんてったって首相だぞ》
《だったらわたしのために公営住宅を頼んでくれない? 七区がいいな》
《わかった。で、もし泊まれと言われたら、おれはどうすりゃいい?》
《五区か六区か七区のを約束してくれたら、泊まる。そうじゃなかったら、あなたは戻ってきて、うちに泊まる》
《よし、そうしよう》>

 カミーユというのは、なかなか洒落っ気というかユーモアもある男なのである(^^ゞ。
 彼とアンヌの関係も洒落ている(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『わが母なるロージー ROSY & JOHN』 ピエール・ルメートル 著、橘 明美 訳、文春文庫、756円、19/09.10. 第1刷

わが母なるロージー (文春文庫)
わが母なるロージー (文春文庫)

<後記>本作は、大きくは「一日目」「二日目」「三日目」という三部構成で、そのなかに「十七時」「十七時一分」「十七時十分」……というふうに細かい時系列の章立てとなっています。
 それが、物語の展開を緊張感のある張りつめたものにしています。
 と同時に、容赦のない暴力場面はあるものの、決して残酷さは感じられず、反対にユーモアのある描写が多くて、楽しくて面白いのです。
 中篇ですが、このシリーズのよさや面白さが凝縮されていて読み応えがあります。
 このシリーズがお好きな方はもちろんですが、そうでない方も是非お読みいただきたい一篇です(^^ゞ。

 今日(10日)は朝からギラギラした陽射しがあって、猛暑日になって蒸し暑かったです。
 昼ころにカミさんと買い物に行った以外は、家でノタノタと過ごしました(^^ゞ。
 夕方の散歩は5時10分ころに出ました。
 公園を斜めに上っていきました。

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 上空には青空が広がっていましたが、西空の低空には黒雲があり夕日は隠されていました。
 原っぱに出てウロウロしていきます。

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 SORAはさっそくクネクネスリスリをしまくりました(^^ゞ。

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 南西の上空には薄雲が舞っています。

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 北東の空に小さな入道雲(?)が出ていました(^^ゞ。
 上に行き、テニスコート脇を回っていきました。

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 原っぱに戻って、またウロウロしていきました。

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 西空には黒雲がより広がっていましたが、その下の方に窓のような明るいところがありました。

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 ベンチに行きました。

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 SORAは気になるワンコが来たので、ベンチには上がらずに、いなくなるまでずーっと見ていました(^^ゞ。

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 そのワンコがいなくなると、SORAはベンチに上がってのんびりあちこち眺めていました。

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 SORAは草の上に下りてマッタリしました(^^ゞ。

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 しだいに暗くなってきました。

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 帰ることにしました。

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 上空が薄っすらと染まりました。
 桜並木を下りて帰ってきました。

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 明日(11日)の横浜の南の端っこの天気は、雲が多い空で、南寄りの風が吹き、厳しい蒸し暑さが続くようです。
 にわか雨が降るかもしれません。

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この記事へのコメント

2019年09月12日 21:03
ワ~イ、待ってました!
ようやく、カミーユ警部と再会できるのですね。
これは、是非とも購入して、読まなくては!
でも、「傷だらけ」後のカミーユ警部を知りたかったのに、
完結って! 
う~、残念無念。
遊哉
2019年09月12日 22:06
☆ 毎日ばらいろ さん、待ってましたか(^^)/
 このシリーズは読みごたえがあって面白いですね。あの魅力あるカミーユ警部に再開できますよ(^^ゞ。
 作者によると、このシリーズはこれ以上は書かないそうです。
 残念ですが、心残りぐらいのほうがいいのかもしれません。
 楽しんでください(^^ゞ。