『パリのアパルトマン』



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            〔石垣を這う蔦の紅葉〕

 以前に紹介した『ブルックリンの少女』の作者、ギヨーム・ミュッソの新作ミステリー『パリのアパルトマン』を紹介する。
 『ブルックリンの少女』はバカ親父の性に合っていてとても面白かった。本作も重いテーマを描いているものの、ユーモアもあり洒落ている(^^ゞ。

 プロローグは、次のように始まった。


< ロンドン、土曜の昼前
 まだ知らないだろうけれど、あなたはこれから三分以内に今までの人生で最も辛いことのひとつに出会うことになる。想像していなかった試練、肌に焼きごてを当てられるような苦しみに。
 今のところ、あなたはローマ時代の庭園を模したショッピングアーケードのなかをのんきにぶらついている。十日間も雨が続いたあと、空が深みのある青空をとりもどし、外は晴れわたっていた。日差しの当たるアーケードのガラス張り天井が輝き、あなたの心を弾ませる。春だからという口実で、あなたは二週間前から目をつけていた赤地に白い水玉模様のワンピースも買ってしまった。気分も軽く、はしゃぎたいほど。楽しい一日になるはずで、親友のジュルと昼食をとってネイルサロンに行き、おそらくチェルシーのフラワーサロンにも出かけ、夜はブリクストンであるPJハーヴェイのライブに行く予定だ。
 緩やかに蛇行する人生を穏やかに航行中といったところ。
 ふいにあなたの視界にそれが飛びこんでこなければ。

          ★

 それというのは、デニムのオーバーオールと濃紺のダッフルコートを着た金髪の男の子の姿だった。二歳くらい、もう少し上かもしれない。カラーフレームのメガネを透し、笑みをたたえた明るい色の目が光っていた。小さな頭を覆う短い巻き毛は夏の陽に輝く麦わら色、その下に繊細な顔立ちが見えていた。だいぶ離れていたけれど、あなたはその子を見つめ、近づいていくほどに魅了されてしまった。悪も恐怖もまだ汚していない未開の領分、輝かんばかりの顔。そこには可能性だけが見えていた。生きる喜び、無垢な幸せ。
 そして今、その子もあなたを見ていた。以心伝心、無邪気な微笑みが男の子の顔に広がる。見せびらかすように、子供はぽってりした手でおもちゃの飛行機を頭上にかざした。
「ブーン……」
(後略)>


 どうしてこの無邪気な男の子が、“あなた”にとって“今までの人生で最もつらいことのひとつ”なのだろうか?
 それは……ここでは書けない(^^)/。

 この本は千葉の旅行に行っている間に読み終わったのだが、その翌日に発売された『週刊文春』(12月5日号)の「ミステリーレビュー」に池上冬樹さんが採り上げていた。
 「フランス・ミステリの味わい」と題され、2冊紹介されていたうちの一冊である。
 次のようなものだった。

<まずはギヨーム・ミュッソの『パリのアパルトマン』。『ブルックリンの少女』で話題を攫った作者の新作である。元刑事のマデリンと人気劇作家のガスパールが急死した天才画家の家に偶然一緒に住むことになり、未発見の遺作三点を一緒に探すはめに。やがて画家を襲った悲劇を追及することになる。
 謎が解かれるプロセスも面白いが、力強いのは、事件調査がそのまま男女それぞれの再生のドラマへと収斂されていく点だろう。二人の人生上の苦難と絶望と不安を顕在化させることで事件に深く関わる動機を強め、クライマックスへと突き進む。そのあとの温かなエピローグが印象深い。フランスではピエール・ルメートル以上の人気をもちベストセラーを記録している理由もわかる。重いテーマでも軽快に話を運び、飽きることなく頁を繰らせて、静かな感動を与えるからだ。>

 ちなみに、紹介されているもう一冊は、フランス・ミステリーの女王フレッド・ヴァルガスの『ネプチューンの影』(創元推理文庫)で、採点は二冊とも★★★★だった。
 池上さんのあらすじではあまりにも短いので、もうちょっと書いておく(^^ゞ。

 クリスマス間近のパリが舞台で、ある男女の出会いが物語の始まりになる。
 2016年12月20日の朝、三十代後半のイギリス人女性マデリン・グリーンがロンドンからユーロスターでパリへとやってきた。
 プロローグの“あなた”とは彼女のことである。
 “今までの人生で最もつらいことのひとつ”に出会ってしまった彼女だが、警察官時代にもつらい体験をしていてどん底にまで落ちたことがある。その際、4年間パリで過ごし自らを再生・再構築することができた。
 そこでまた、パリを再訪したのである。この街にはそれだけの魔法があると期待していた。
 パリは土砂降りで、しかも交通ストに巻き込まれ、彼女は借りることになったアパルトマンにやっとの思いで着いたのだった。

 一方、厭世的で人間嫌いでアル中気味の国際的な人気劇作家ガスパール・クタンスは、四十代前半のアメリカ人である。
 毎年新作を書くためにこの時期にわざわざ大嫌いなパリに来て、エージェントが手配してくれたアパルトマン(貸家)に籠り、自分を逆境に追い込んで執筆に専念していた。
 マデリンが着いた同じ朝、シアトルから飛行機でパリにやって来た彼は、やはり土砂降りと交通ストでほうほうの体でアパルトマンにやって来た。

 ガスパールがアパルトマンに入っていくと、
<目のまえにひとりの女が立っていた。大きなバスタオルで胸から太腿までを覆っているほかは裸だった。
「だれだ、あなたは? うちで何をしている?」彼は詰問した。
 女は怒りに満ちた視線を向けた。
「まったく同じ質問をしようとわたしも思ってるけど」女は応じた。>

 なんとなんと、ガスパールとマデリンが借りたアパルトマンは、不動産レンタルサイトの不手際から、ダブルブッキングとなった同じ家だった。
 パリ六区で時の流れから取り残されたような場所に建っており、急死した天才画家ショーン・ローレンツが残したアトリエだった。
 ふたりとも、その慣れ親しんだような癒しを感じさせてくれる空間にすっかり魅了されてしまった。
 反発し合うふたりだったが、すぐには事態解決の見通しが立たず、とりあえず同居することになった(^^)/。

 まるでロマンティック・コメディで、映画「ノッティングヒルの恋人」を彷彿とさせるような出だしである(^^ゞ。
 あの映画では、冴えない書店主(ヒュー・グラント)と有名なハリウッド女優(ジュリア・ロバーツ)が街角で衝突するというのがきっかけで恋に落ちる物語だった。
 あちらはいろんな障害は出てくるものの比較的明るい展開だったが、こちらは鬱屈した過去を持つ男女の出会いで、このあと大変な展開となる(^^ゞ。

 アパルトマンを貸し出したのは美術商兼画廊オーナーのベルナール・ベネディックで、画家ショーン・ローレンツと長いつき合いのあった彼はローレンツから遺産を譲り受けていたのである。
 マデリンが元警察官であると知ったベネディックは、ローレンツの数奇な一生を語るとともに、奇妙なことを頼んできた。
 それは、一年前のクリスマス・イヴの前日に心臓麻痺で急逝したローレンツが、その直前に仕上げたものの行方不明になっている幻の3枚の絵を見つけ出してほしいというものだった。

 実は、2年前のクリスマスの時期に、ニューヨークに滞在していたローレンツ一家をある惨事が襲い、打ちのめされた彼は一切の創作活動を止めていた。
 だが、1年前の死亡する前夜、マンハッタンからベネディックに電話をかけてきて、最高傑作となる3枚の新作を仕上げたが、それはパリにあると告げたというのである。
 手がかりは、アパルトマンの金庫に遺されていた、ローレンツが生前贔屓にしていたブラッスリーのマッチの箱のみ。そこには彼の手で「星たちを輝かせるときがやっと来たぞ」というアポリネールの有名な詩句が書きつけられていた。
 はたして本当に絵は完成したのか? あるとすればどこに? そしてなぜ、ローレンツは忌まわしい思いでの地であるニューヨークに行っていたのか?

 ローレンツの独創的で人の心を揺り動かし鷲掴みにするすばらしい絵と、彼の芸術家としての抗しがたい魅力にからめとられてしまったマデリンとガスパールは、失われた遺作を求めてパリ市内を奔走する。
<二人とも口には出さぬものの、今や自分たちがまるで想定外の捜査コンビを組んでいる事実を自覚せざるをえなかった。>
 しかし、それは始まりに過ぎなかった。
 その捜索はやがて、ローレンツを襲った悲劇の謎を探る波瀾万丈の旅へと変容していく。
 絵に隠された秘密に導かれて突き進むふたりを待ち受けていた、予想外の真相とは!?
 その謎を探る旅は、マデリンとガスパールが自らが心のなかに押し込めていた秘密と向き合い、欠落していたものを追い求めるものでもあった。

 重いテーマを扱っているが、愛とユーモアそれにエスプリに富み、ハラハラドキドキさせてくれ、ラストは感動を呼び起こすエンターテインメントである(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『パリのアパルトマン UN APPARTEMENT Ā PARIS』 ギヨーム・ミュッソ 著、吉田恒雄 訳、集英社文庫、1265円、19.11.25. 第1刷
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<1974年フランスのアンティーブ生まれ。高校卒業後にニューヨークに渡りアイスクリーム売りのアルバイトなどを経験。ニースとモンペリエの大学で経済学と社会学を学んだのち、2003年まで高校教師を務める。04年に発表された『Et aprēs…』が大ヒットし、ベストセラー作家に。以降、毎年話題作を発表し、これまでに刊行した作品は42の言語に翻訳され、その総売上は3000万部を超える。現在フランスでもっとも売れている作家。>

パリのアパルトマン (集英社文庫)
パリのアパルトマン (集英社文庫)

<後記>どうもフランス・ミステリーがバカ親父の性に合っているようで、惹き込まれてしまいました。
 『ブルックリンの少女』もそうでしたが、登場人物たちの愛を描き、ユーモアやエスプリがあり、ハラハラドキドキさせると同時に温かいものを感じさせてくれて、洒落ています。
 最初は反発し合っていたマデリンとガスパールですが、しだいに惹かれ合っていきます。その成り行きはいかに!?(^^ゞ。
 またこの物語は父性や母性の深さ、切なさ、悲しさなども描いています。
 なかなか深いもののある面白い作品です(^^ゞ。

 今朝(9日)はカミさんが着付けの仕事に行ったので、7時10分ころに散歩に出ました。寒い!(^^)/。

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 朝日は雲に隠れています。
 公園の斜面を上っていきました。

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 上空には青空が広がっています。

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 原っぱに出てから、公園を回ることにしました。

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 朝日が射してきました。
 原っぱに戻ってウロウロしていきます。

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 朝日はまた雲に隠れました。

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 桜並木を下りていきます。

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 SORAは途中から草つき斜面に行きました。

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 SORAは滑り落ちながらクネクネスリスリをしました(^^ゞ。

 昼ころに買い物に出た以外は、家に籠ってダラダラと過ごしました。
 夕方の散歩は4時ちょっと過ぎに出ました。寒い!(^^ゞ。

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 もうじきクリスマスだね(^^ゞ。
 公園を斜めに上っていきました。

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 空はどんよりとした雲に覆われています。
 街灯にカラス(^^ゞ。
 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 ベンチに座りました。

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 SORAはすぐに下に降りて、ジャックラッセルが遊んでいるのを見ていました。
 しばらくすると……

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 「ねえ、帰ろうよ!」というような顔をしたので、帰ることにしました(^^ゞ。

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 原っぱから下りていきました。

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 明日(10日)の横浜の南の端っこの天気は、陽射しが届くことがあるものの、雲が多くスッキリしない天気で、午前中はにわか雨が降るかもしれません。
 北寄りの風で、肌寒そうです。

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