『念入りに殺された男』


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          〔実もできていたランタナ(^^ゞ〕

 フランスの女性作家エルザ・マルポによる、とても独創的な設定のサスペンス小説『念入りに殺された男』を紹介する。
 次のような4部構成で、それぞれに章立てされている。
  第一部 大きな赤い狼
  第二部 カメレオン
  第三部 切り傷
  第四部 邪悪な分身

 第一部のプロローグは、次のように始まる。


<   第一章 思いがけない宿泊客

二〇一八年八月一日

 アレックスはカーテン越しに八月の陽の光を感じた。太陽はすでに高くのぼっている。隣りに寝ている裸のアントワーヌにぶつからないようにしながら伸びをした。夢の余韻が薄れていく。親しかった男友だちに久しぶりに再会する夢だった。友人は自宅の屋根裏部屋の床に座っていて、その背中はなぜか蜘蛛の巣に覆われていた。アレックスは一本ずつ、蜘蛛の銀色の糸をとり除いてやった。そしてふと、蜘蛛ではなくヒキガエルだったことに気がついた。ヒキガエルが、すっかり記憶の彼方にあったこの友人の素肌に糸を繰り出したのだ。
 アントワーヌは片腕を頭の下に折り入れて仰向けで寝ていた。かすかにいびきをかいている。いつものようにその端整な顔に見とれた。年齢(とし)のせいで目鼻立ちがぼやけはじめてはきたが、それでもやはり整っている。アントワーヌを愛するようになって二十一年。彼はその時々に応じてアレックスの愛人であり、親友であり、相談相手であり、そして彼女にはいない男兄弟だった。
 出会ったとき、アレックスは十九歳だった。それがあと数日で四十になる。アントワーヌがいなかったらどんな人生を生きたのか、そもそも生きつづけることができたのか、想像もつかない。
 アレックスは日常の繰り返し、そのなかに潜むささやかな幸せ、そして習慣が不安を消し去ってくれる一瞬一瞬を愛していた。そうしたものを慈しむことをあきらめのひとつのかたちとみなす人はそれが誰であれ、人生の本質を見失っているのだと彼女は思う。それに、アントワーヌを狂おしいほど激しく愛する日もあった。
(後略)>


 主人公はアレックス・マルサンという女性で、フランスはナントの片田舎で高校教師の夫アントワーヌとふたりの娘タイスとアガトと暮らしながら、ペンションを営んでいる。
 彼女は若いころに小説家を志したものの夢破れたが、今でも細々と執筆を続けていた。でも、社会不安障害を抱え、精神的に不安定なところがある内気な女性である。
 慎ましく穏やかな暮らしを送っていたのだが……

 ある日、宿泊客としてゴンクール賞を受賞している大物作家シャルル・ベリエが、執筆をするためにお忍びでやってきた。
 ベリエは豪放磊落で気さくで話も面白く、聞き上手でもあり、一家は打ち解けていった。それに、アレックスは彼の旺盛な創作エネルギーに圧倒されつつも、奇妙で危うい友情を築いていった。
 ところが、夫と娘たちが留守のある夜、アレックスはベリエに草むらに押し倒されてレイプされそうになり、抵抗したときに思わず手につかんだ石を彼の頭や顔に叩きつけて殺してしまった。

 過去に傷害事件を起こし、精神病院にも収容されたことのあるアレックスは、警察に正当防衛を主張しても信じてはもらえないと思い、自分と家族を守るために思いもかけない奇策に打って出ることにした。
 堆肥の山のそばに穴を掘り、死体を隠した翌日、夫には、ベリエは急に気まぐれでパリに帰ったと告げた。
 そして夫に「わたしのこと、待っててちょうだい。必ず戻ってくるから、お願い」と言い残してパリに旅立った。

 彼女の奇策とは……別人として、ベリエのアシスタントになりすますと、彼のの妻イザベルや愛人ソラヤ・サラム、そして出版業界に潜り込んで、編集者やイザベルの父親で出版エージェントのイヴ・デルマンらに近づいた。
 その中から、ベリエを殺す動機をもち、罪を被せられそうな人物を探し当てる潜入捜査に乗り出したのだ。
 同時に、ベリエのスマートフォンを使って、SNSやメールを駆使するなどの工作を行い、彼が生きていると見せかけたあと、彼に「もうひとつの死」(本作の原題となっている)を与えようとしたのだった。

 アレックスの計略は、はたして成就するのだろうか? 彼女の運命は如何に?
 ノワール小説だが、スリル満点のサスペンスに一気読みは必至である(^^)/。


 最後に、池上冬樹さんが先週発行の『週刊文春』(6月25日号)・「ミステリーレビュー」で、本作を取り上げていたので紹介しておく。

<エルザ・マルポの『念入りに殺された男』のヒロインはひたすら積極的に打って出る。ゴンクール賞作家にレイプされそうになり、弾みで相手を殺した人妻が、その犯罪を誰かに着せるべく〝犯人〟探しに奔走する異色の設定だ。
 死んでいる作家の生存を偽装しなくてはならない。書きかけの原稿をどうするのか、妻や娘や愛人にどのように言葉を発するのか、姿を見せないことをどのように正当化するのか、そもそも誰を犯人に仕立て上げるのか、もっとも適切な動機をもつ犯人はいないのか。この設定が素晴らしく面白く、実に考え抜かれていて、スリルとサスペンスがあり、わくわくしてしまう。皮肉なのは、人妻が挫折した作家であり、小説をうまく書けなかったのに、作家になりすまして小説を書いていくうちに邪悪な分身を見いだし、小説と自分の実力に目覚める点だ。
 しかしもちろん彼女を追いつめようとする探偵も現れてきて後半は二転三転。時間的・精神的にも追い詰められて、物語は予想外のクライマックスを迎える。意表をつく設定、大胆な展開、ふてぶてしい反モラル、黒い笑いにみちた何とも不思議なカタルシス。続編が待ち遠しくてならない。採点は甘く★★★★1/2。>


<今日のお薦め本>
『念入りに殺された男 SON AUTRE MORT』 エルザ・マルポ 著、加藤かおり 訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ、1870円、20.06.15. 発行
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<1975年フランス・アンスニ生まれ、ナント育ち。パリ高等師範学校卒業後、文学教授資格を取得。2003年 Recherche au sang でデビューし、同作でカルフール・サヴォワール新人賞を受賞。本作は7作目の小説。>

念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ) - エルザ・マルポ, 加藤かおり
念入りに殺された男 (ハヤカワ・ミステリ) - エルザ・マルポ, 加藤かおり

<後記>独創性を重視するのがフランスのミステリーの特徴のようですが、なかでも本作はアイディアが奇抜な物語です。
 罪を犯したアレックスの視点で書かれていくわけですが、克明に描かれるその不安や恐怖や焦りがサスペンスをかき立て、彼女の危なっかしい捜査の行方を固唾をのんで見守ることになります(^^ゞ。
 いろんな社会問題や現代の風潮を反映していて面白いのですが、人間の二面性を描いている点が興味深いです。
 作家シャルル・ベリエをはじめ、その妻や愛人や義父などの二面性が暴かれていきます。
 語り手のアレックス自身も、他人に成りすますなかで今まで気がつかなかった新しい自分に気づいていきます。
 彼女は、はたして元のアレックスに戻れるのだろうか? とちょっと心配にもなりました(^^ゞ。
 本作は多様なテーマを内包して、奥行きの深い物語に仕上がっています。
 著者は続篇に取り組んでいるということなので、その邦訳を早く読んでみたいです(^^ゞ。


 今朝(24日)は7時ころに、カミさんが仕事に行くことになっていました。
 どういうわけか早く目が覚めたので、6時ちょっと過ぎに散歩に出ました。

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 空はどんより雲に覆われ、朝日は見えません。
 公園の斜面を上っていきました。

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 原っぱに出てウロウロしました。

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 ぐるっと回って、端っこのベンチに行きましたが、SORAはなんだか眠そうでした(^^)/。
 しばらく休んでから、桜並木を下りて帰ってきました。

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 このカラスたちは夫婦か親子か?……わかりません(^^ゞ。
 今日は一日雲が多かったですが、昼ころから午後4時ころまで、わりと陽射しが届いていました。

 夕方の散歩は5時20分ころに出ました。
 公園を斜めに上っていきました。

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 雲が増えていて、夕日はまったく見えません。

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 原っぱに出ました。

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 公園を回ることにしました。

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 野球場が子どもたちに開放されていました。

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 原っぱに戻ってウロウロしていきます。

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 風は南のほうから吹いていました。雲が形を変えながら北の方に流れています。

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 SORAがクネクネスリスリをしました。
 そのあと、落ちていた青いボールを見つけると、肩口に置いてクネクネスリスリをしました(^^)/。

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 何度もそんなことを繰り返しました。

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 ボールがお尻の方にずれていることもありました(^^ゞ。

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 最後は疲れて、しばらく休んでいました(^^ゞ。
 ベンチに行きました。

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 SORAはあちこちのワンコを眺めていました。
 しばらくすると、ベンチを下りました。

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 こちらを見ます。
 無視(^^ゞ。

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 そのうちに立ち上がってこちらを見るので……帰ることにしました(^^)/。

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 原っぱを下りて、帰ってきました。

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 明日(25日)の横浜の南の端っこの天気は、朝までは雨が降りやすく、雲の多い昼間も雨が降ることがありそうです。
 気温は24℃くらいまでしか上がりませんが、ムシ暑くなるようです。

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この記事へのコメント

2020年06月25日 08:52
遊哉さん、おはようございます。

トップ画面のピンクのランタナ可愛いですね。
こちらでも、咲き始めていますが、
まだ、緑の実まで出来ていません(>_<)
とても素晴らしい。

いつもお立ち寄り頂きありがとうございます。
遊哉
2020年06月25日 19:33
☆ アイリスさん、こんにちは♪
 ランタナはかわいいですね。色もいろんなのがあって、面白いです(^^ゞ。
 花が咲いているのと同時に、実が生っているというのも面白いですね(^^)/。