『蓼(たで)食う人々』


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      〔原っぱの草の上でマッタリしたSORA(^^ゞ〕

 民俗学をテーマとして、人々の生活に入り込んで取材しているイラストレーターでもある遠藤ケイさんの、日本人が享受してきた自然の恵みとそれを取り巻く人たちを描いた本『蓼(たで)食う人々』を紹介する。
 次のような食材を取り上げている。

 野兎/鴉/トウゴロウ/岩茸/野鴨/鮎/鰍/山椒魚/スギゴケ/スガレ/ザザ虫/イナゴ/槌鯨/熊/海蛇(エラブウミヘビ)/海馬(トド)

 「まえがき」から、この本の内容を紹介してみる。

<「蓼(たで)食う人々」というこの本の書名は、周知のように「蓼食う虫も好き好き」という古い諺(ことわざ)に因(ちな)んでいる。「蓼食う虫、苦きを知らず」ともいう。蓼という植物の葉には強い苦みがあって、大抵の動物は嫌って口にはしない。だが、タデハムシやシロシタヨトウなど、ごく少数の虫は好んで食べる。通常、「人の好みはさまざま」という比喩に用いられる。
 ひとの食や嗜好や味覚は、地域性や民族性によってある程度大別できる。同時に、慣れ親しんだ味に対して保守的である。風土によって異なる食材、調味料、料理法、さらに風土の根源を成す水や空気も、そこに暮らす人間の体内を循環している。風土が、人間のDNAに密接に関わっている。食べ物の嗜好や味覚も固定化されてくる。また、日常に食べ慣れたものは安全で、安心感を得ることができる。保守的に成らざるを得ない。
 その反面、異質なものに対しては、生理的に排除しようとする。目(視覚)や指(触覚)、舌や歯(味覚)などの体のセンサーが過敏に反応し、胃や脳が〝異物〟を拒絶する。異物は〝ゲテモノ〟扱いされる。また、それを好む人間を、悪食、ゲテモノ食いと決めつけて締め出そうとする。「蓼食う虫」という一般通念の底意には、数を頼んだ強者の驕(おご)りと、弱者(マイノリティー)に対する差別意識が見え隠れする。
 だが、もしかしたら、不味で苦味の強い「蓼」を好んで食べる虫は、大多数の動植物の食の領域から、排斥された弱者だったのかもしれない。そうした現象は、自然界ではよく見られることで、強者が有利な生息域を独占し、締め出された弱者は劣悪な環境に順応して生き延びようとする。ほかの植物が自生できないような、地味の乏しい土地に根をつける花もあれば、毒のあるものを食べて生存している虫もいる。それも一つの進化の姿である。
(中略)
 この本では、通俗的な「悪食」や「ゲテモノ」を擁護し、復権を目論(もくろ)んでいるわけではない。取り上げた項目を見ていただいて分かるように、(中略)人によっては「ゲテモノ系」に貶(おとし)められそうなものもあるが、鮎(あゆ)や鰍(かじか)、野鴨、岩茸(いわたけ)など、日常的なものも取り上げている。なかでも鮎などは、悪食どころか〝美食〟の部類に入るかもしれない。>

 鮎を取り上げたのは、捕り方に常識外れのでリスクを伴うものがあり、そうして捕ると喜びも大きく、命に感謝して食べ方にも貪欲となり、無駄なく食べ尽くそうとする。
 それが大事だという。

<人間が慎み深く向き合えば、自然は豊かな恵みを保証してくれる。そこには、美食や悪食の概念はない。ましてや、食い散らかしの飽食文化の入り込む余地はない。>

 そして、

<そのどれもが、日本の風土と密接に繋がっている。その根底には、自然に対する深い感謝がある。採取法、料理法、食のしきたりや作法等々。悪食、ゲテモノ食いの「裏食文化」の背景に、日本人特有の情緒性が投影されていることに思い至る。
 しかし、いまはあえて、ここに登場する人たちを、「蓼食う人々」と呼ぶことにする。まずは、興味本位で読んでほしい。そして読後に、どう評価が変わるかを、書き手として楽しみにしたい。
 最後に、蓼は古く平安時代には、魚の食当たりを防ぐ植物として栽培されていた。歴(れっき)とした野菜であったが、何故か悪食に代名詞のごとくに陥れられている。その汚名返上をも秘(ひそ)かに企んでいる。>
 
 というような本である。
 さて、具体的な内容を紹介してみようと思うのだが、長くなりそうである(^^ゞ。
 ここでは、身近に見かけても食べることはないであろう「鴉(カラス)」についてのごく一部を引用・紹介してみる。

 著者の遠藤さんは昔、房総の山中で暮らすようになった。ところが、カラスがいろんな悪さや攻撃を仕掛けてくるようになった。
 パチンコをつくって、うまく当てたのだがカラスは死なずに悠然と飛んでいってしまった。
 そんなある日、知人の鉄砲打ちがハシブトガラスを持ってきてくれた。
 遠藤さんは以前にも信州の山村で食べたことがあるのだが、今度はそれを自分で解体し食べてみたのである。
 苦手な方は、読まないほうがいいかもしれない(^^ゞ。

<せっかく手に入った鴉を無駄にしたくないので、さっそく料理に取りかかる。ハシブトガラスは、クチバシが大きく、二本の脚が太くて恐竜の皮膚のように硬く角質化している。爪も鋭い。軀(からだ)がズシリと重い。
 まず包丁で首を落とし、逆さに吊るして血抜きをする。その間に頭の皮を剥(む)く。脳ミソは小さいだろうが、珍味の期待がある。頭蓋骨はコレクションに加えられる。以前、キジを解体したとき、頭から脚のさきまでの骨を集めておいて、骨格標本を作ったことがある。
 額から後頭部にナイフを入れて皮を剥(は)ぐ。頭の骨は石のように硬い。これではパチンコの弾丸が命中しても効き目がなかったかもしれない。
 頭を片付けたら、軀を解体する。羽根を抜こうとするが、太い風切羽なかなか抜けない。強引に引き抜くと皮膚が傷つき、血が滲(にじ)んでくる。熱湯をかけると抜きやすくなるかと思って触ってみると、皮膚がゴムのように厚くて硬い。皮ごと剥いでしまった方が調理がしやすいようなので、腹から胸にかけてナイフを入れる。
 下腹部から内臓を抜き出す。心臓、肺、肝臓、砂嚢(胃)、膵臓、小腸などがひと塊になって出てくる。胃を切り分けると、消化しかけた草やハゼの実がびっしり詰まっていた。山の鴉に違いない。晩秋の季節、山には餌がないのかもしれない。悪食の鴉が、かぶれることで嫌われるハゼの実で空腹を満たしている。自然界に生きとし生けるものすべてが、深遠な曼荼羅(まんだら)宇宙の因縁因果で結ばれている。その現実に、新鮮な感動を覚える。
 胸の下から肛門の近くまでナイフを入れたら、そこから両側に皮を剥がしていく。脚を切断し、翼の骨も関節から切り離す。鴉が黒い喪服を脱ぎ、赤い肉の塊になる。肉というより、強靭な筋肉が束になって張り巡らされているといった感じで、精巧な機械のようだ。この強力な筋肉のバネが、強風に逆らって飛ぶ力強い飛翔力の秘密だった。
 胸骨を真ん中から裂く。これもおそろしく硬い。鴉という鳥は、全身に鎧(よろい)を纏(まと)っている戦士だ。自分より軀が大きい鷹や鳶に戦いを挑み、人間も恐れない不敵な戦闘的本性は、この肉体的な構造に対する絶対的な信頼と自信の表れかもしれない。
 胸骨に包丁の刃を当て、峰を拳(こぶし)で叩いて割る。そこに指をかけて両側に開く。バリバリと骨が砕ける音がする。太い背骨や胸骨、頚骨などは肉を削ぎ落とし、細い骨は肉と一緒に鉈でよく叩いて潰す。
 硬い骨と肉がだんだん柔らかくなり、粘りが出てくる。骨のカケラが邪魔にならなくなったら、軽く塩コショウをし、小麦粉を少し混ぜて食べやすい大きさの団子に丸める。
 鍋に鶏ガラのダシ、醤油、酒、さらに味噌を隠し味に加える。ひと煮立てさせたら、鴉の肉団子、葱、白菜の具を入れる。アクがかなり出る。灰色の濁った泡を丁寧に掬(すく)い取る。
 ここまで用意して、鴉の頭を忘れていたので外に取りにいくと、野良猫が林の中に逃げ込むところだった。鴉の頭はどこにもなかった。鴉の死骸は、鳩除けにするくらいだからと油断していたら、思わぬ伏兵にやられてしまった。くやしいが諦めるしかない。
 だが、鴉の肉団子汁は美味かった。肉は赤身で歯ごたえがあり、咀嚼(そしゃく)するほどに味が滲み出てくる。鶏と違って多少アクが強いが、肉は臭みがない。汁と一緒に味わえるので、抵抗感なく食べられる。
 少し分けておいた肉を竹に巻いて「ロウソク焼き」にした。肉や血の味が凝縮している。濃密な野生の味がする。
 鴉の生前の雄姿を思い描きながら、鴉肉を味わう。情景を食すことが、食の極意である。情景が見えない料理は、隠し味が一味足りない。そこには、感情的な遺恨はもうない。生命の力強さ、逞しさへの羨望と、生命あるものの哀れみ、そして素朴な感謝があるのみだ。
 生者必滅会者定離(しょうじゃひつめつえしゃじょうり)。野を肥やせ骨の形見の芒(すすき)かな。手向けの句を諳(そら)んじながら、ありがたく鴉肉を胃に納める。野を肥やす前に、自分の腹を肥やした。美味であった。満足であった。>

 中国では、カラスの目をえぐって飲むと目がよくなり、鬼や幽霊が見えるようになるという伝承があるという。
 遠藤さんが、カラスの頭を野良猫に持っていかれて残念がったのは、鬼や幽霊など見たくはないが目はよくなりたいから、その真偽を試したかったからだということだった(^^)/。


<今日のお薦め本>
『蓼(たで)食う人々』 遠藤ケイ 著、山と溪谷社 刊、1650円、20.05.20. 初版第1刷発行
 著者について、奥付から紹介しておきます。
<1944年新潟県生まれ。長年、自然の中で手作り生活を実践しながら、民俗学をライフワークとして、日本各地や世界各国を旅して、人々の生活や労働習俗を取材している。主な著書に、『男の民俗学』(山と溪谷社、小学館文庫)、『熊を殺すと雨が降る』『鉄に聴け・鍛冶屋列伝』(ちくま文庫)、『こども遊び大全』(新宿書房)など多数。>

蓼食う人々 - 遠藤ケイ
蓼食う人々 - 遠藤ケイ

<後記>遠藤ケイさんの本が好きで、本屋で久しぶりに遠藤さんの名前を見て、迷わず手に入れてしまいました。やはり、興味深くて面白かったです(^^ゞ。
 彼はイラストレーターでもあり、独特のモノクロの絵で、この本では各項目の扉にそれぞれの食材の絵が描かれています。
 各項目(食材)の最後には、それぞれの “民俗学的考察と独断的私見” という著者の考え方や思いが綴られていますが、それも味わいがあります。 
 紹介した「鴉」では、古事記の八咫烏(やたがらす)から説き起こし、日本や世界各国でのカラスという鳥の捉え方とか、カラスという言葉の語源などにも言及していて興味深いです。
 ここに出てくる食材で食べたことがないのがあるので、一度食べてみたくなりました(^^)/。
 この本はもちろんですが、著者紹介に出てくる本も面白いので、興味のある方は是非読んでみてください(^^ゞ。

 今日(4日)は朝方までは雨が降っていましたが、すぐに止んで曇りが続きました。
 日中はダラダラと過ごしました(^^ゞ。
 夕方の散歩は5時ちょっと前に出ました。
 公園を斜めに上っていきます。

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 空全体が雲に覆われていましたが、低空を黒雲の塊が南西の強い風にいくつも流れていました。
 原っぱに出ました。

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 テニスコート脇を回っていきます。

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 エゴノキに実が生っています(^^ゞ。

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 原っぱに出てウロウロしていきました。

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 SORAがクネクネスリスリをしまくってから、マッタリしました(^^ゞ。
 ベンチに行きました。

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 真正面の北の空を見ると、左(西)から右(東)方向へ、雲が飛びように流れていきます。

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 SORAはマッタリし始めました(^^)/。

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 空が流れてきたどんより雲に覆われてきました。

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 SORAはベンチを下りてマッタリ(^^ゞ。
 しばらくしてから帰ることにしました。今にも雨が降り出しそうです。

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 原っぱを下りて帰ってきました。

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 明日(5日)の横浜の南の端っこの天気は、昼ごろから雨が降り出し、強雨や強風の恐れがあるようです。夜には止んできそうです。
 南寄りの風が強く、蒸し暑くなるようです。
 九州で大雨による大きな災害が起きましたが、まだまだ雨が続くようです。雨の通り道になるところでは、十分お気をつけください。

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この記事へのコメント

2020年07月06日 23:30
面白そうな本ですね。ぜひ読んでみたいです。
カラスの肉を食べるのって、以前バラエティ番組でも
やっていたのですが。
肉は血の味が勝っている、って言ってました。鉄分が
豊富らしいです。貧血に良いかも(笑)
遊哉
2020年07月07日 00:04
☆ キーブーさん、この本はとても面白いです(^^ゞ。
 血の味が勝っているというのは、血抜きが不十分だったのかもしれませんが、鉄分が多いとすれば貧血にはいいでしょうね(^^)/。
 昔の信州の上田地方では、カラスの肉団子が峠の名物だったところがあるようです。
 それに山間の集落では、カラスの肉はごちそうだったということです。ただし、そのカラスは山のカラスで、町場のカラスはゴミを漁っているので、食べる気はしなかったそうです(^^)/。