『その手を離すのは、私』


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           〔夕方見た面白い形の小雲〕

 英国の女性作家クレア・マッキントッシュのミステリーでサスペンスでサイコロジカル・スリラーでもある『その手を離すのは、私』を紹介する。
 警察小説であり、主人公は英国ブリストル警察犯罪捜査課(CID)の警部補レイ・スティーヴンスだが、その部下の巡査ケイト・エヴァンスや巡査部長スタンピー(ジェイク・オーウェンの愛称)なども活躍する。

 構成は、序章、第一章、第二章、終章と4つに分かれている。
 序章のプロローグは、次のように始まる。


<  序章

 風が濡(ぬ)れた髪の毛を顔に打ちつける。彼女は雨がはいらないように目を細める。こんな天気の日は、だれもが足を速める。だれもがコートの襟に顎をうずめて、滑りやすい歩道を早足で過ぎていく。通り過ぎる車がふたりの靴に水しぶきをかける。道路からの騒音のせいで、学校の門が開いた瞬間から始まった今日の出来事の報告は、二言三言しか聞き取ることができない。言葉は途切れることなく彼の口から飛び出し、これから彼が成長することになるこの新しい世界に対する興奮で、話が入り乱れたり、後先になったりしている。親友、宇宙のプロジェクト、新しい先生、そんな言葉が聞こえてくる。彼女は視線を落とし、マフラーをすり抜けてくる冷気を気にも留めず、彼の興奮した様子に顔をほころばせる。少年はにっこりと笑い返すと、雨を口に入れようと頭を後ろに傾ける。濡れたまつ毛が目の周りに黒い塊を作っている。
「それからね、自分の名前も書けるんだよ、ママ!」
「なんて賢い子なの」彼女はそう言うと立ち止まり、少年の雨に濡れた額にしっかりとキスをする。「おうちに着いたら、書いて見せてくれない?」
 ふたりは五歳児の足が出せる限り速いスピードで歩く。彼女の空いているほうの手には少年のバッグが握られていて、足を出すたびに両膝を激しく打つ。
 もうすぐ家に着く。
(後略)>


 このあと、とんでもないことが起きてしまう。
 11月の冷たい雨の降る夕刻のブリストルの住宅街で、家の近くまで来たことに安堵した母親が一瞬息子ジャイコブの手を離すと、少年はわが家に向かって駆け出した。
 そのとき、どこからともなく一台の車が現れ、ドスンという音とともに5歳の小さな体は宙を舞って道路に叩きつけられた。

<彼女は少年を追いかけて、動きつづける車のまえに走り出ようとする。滑って激しく転倒し、伸ばした両手を地面について体を支える。その衝撃に息が止まる。
 それは一瞬のうちに終わった。>

 母親は、激しく動くワイパー越しに、顔の見えない運転手に助けを求めるが、車はバックして狭い道路で方向転換をし、街路樹のセイヨウカジカエデの一本に車体を擦って走り去った。
 犯罪捜査課のレイ・スティーヴンスは事件の指揮を執って捜査を進めるが、目撃者も見つからず、車を特定することもできず、犯人を見つけることができないまま時は過ぎていく。
 物語は、犯罪捜査課の面々の活躍や人間模様の話と、痛ましい事故の記憶からウェールズの海辺の村に逃げ込んできた “逃げる女” の話が交互に描かれていく。
 “逃げる女” とはいったい誰なのか?

 レイは捜査に邁進するのだが、一方で家庭内に悩みを抱えていた。
 同期のマグスと結婚して15年、中等学校1年生のトムと9歳の娘ルーシーの父親だが、最近トムが一夜にして反抗的な暗い目をしたティーンエイジャーに変わってしまったのだ。
 いじめに遭っているのではないかと学校に調査を依頼しているが、学校側の返事は煮え切らない。
 そんなトムの異変で、仕事中心のレイと、退職して専業主婦になったマグスとの仲に隙間風が吹き始めていた。

 そんな悩みをつい話してしまうのが、犯罪捜査課にやってきたばかりのケイトだった。
 彼女は能力も高くやる気満々で、彼女にとってこのひき逃げ事件は許しがたいものだった。
 だが捜査は一向に進まない。
 そんなとき、警視監がレイに捜査打ち切りの命を下したが、ケイトは諦めきれず私的な時間を使って捜査を続けていた。
 そのことを上司であるレイだけに打ち明け、ふたりで秘密裏に捜査を続けることになった。
 そして1年後、ふたりの粘りが突破口を開いた。

 一方 “逃げる女” の「私」は、夏の間はバカンス客で賑わうが、冬の間は寂しい寒村となるウェールズのペンファッチ村に行きついた。
 キャラバンパークを経営する世話好きだが節度を心得た鷹揚な女性ベッサンと出会い、彼女の紹介で地元の無口な男イエスティンから石造りのコテージを借りた。
 そこは海辺の道からかなり上がったところにあり不便で観光客は来ない。悪夢から逃れるにはふさわしい隠れ里のようなところだった。
 やがて彼女は地域に馴染み、アーティストとして生計を立てるまでになり、捨てられていた犬を助けたことから獣医師パトリックと惹かれ合っていく。

 やがて第一章のラストで、この二つの話がついにクロスして劇的な幕を下ろすことになるのだが……。
 作者の巧妙なプロットに、まんまといっぱい食わされた(^^)/。

 第二章では、この事件の裏に隠れていた邪悪な怪物が姿を現す。
 この悪党の視点が加わり、事件の闇の真相はますます深まる謎に包まれていく。

 “逃げる女” の正体は?
 真の犯人は誰なのか?
 レイとケイトは、事件の謎を解き真実を暴いていくことができるのか?

 警察小説であり、恋愛小説であり、家族小説でもあり友情小説でもある、ミステリーでサスペンスでスリラーでもある複雑で面白い小説である(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『その手を離すのは、私 I LET YOU GO』 クレア・マッキントッシュ 著、高橋尚子 訳、小学館文庫、1210円、20.06.10. 初版第一刷発行
 著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<英国ブリストル出身。ロイヤル・ホロウェイ大学でフランス語と経営の学位を取得。十二年間の警察勤務を経て、二〇一四年に本作でデビュー。一六年のニューヨークタイムズ・ブックレビューのベストクライムノベル10のひとつに選ばれ、国内外の文学賞を多数受賞。他の著書に、『I See You』『Let Me Lie』『After the End』などがある。三児の母。>

その手を離すのは、私 (小学館文庫) - Mackintosh,Clare, マッキントッシュ,クレア, 尚子, 高橋
その手を離すのは、私 (小学館文庫) - Mackintosh,Clare, マッキントッシュ,クレア, 尚子, 高橋

<後記>少しだけネタバレをしてしまうと、ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)の暴力の支配下にある状況からの脱却がテーマになっています。
 女性作家ならではの視点から描かれた、女性の生き方や悩みが活き活きと描かれています。
 単なるミステリーやサスペンスではない、味わいのある文芸作品になっていると思います。
 是非、お読みください(^^ゞ。

 今日(10日)も朝からカンカン照りになり、気温は34℃くらいまで上がったようで、暑かったです。
 日中はどこへも出かけず、ダラダラと過ごしました(^^ゞ。
 夕方の散歩は5時半ちょっと過ぎに出ました。だいぶ雲が増えていました。

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 南の空の白雲です。今日はこんな感じの動きのある白雲を多く見かけました。
 公園を斜めに上っていきました。

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 北東の空の白雲。

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 夕日は雲に隠れがちでした。

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 原っぱに出てすぐに、テニスコート脇を回っていきました。

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 原っぱに戻って、うろうろしていきます。

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 SORAがさっそくクネクネスリスリしました(^^ゞ。

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 上にある雲はVサインみたいでした(^^)/。

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 SORAがまたクネクネスリスリ、そして、

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 ちょっと歩いてから、またクネクネスリスリをしました(^^)/。
 ベンチに行きました。

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 SORAはハアハアしていました(^^ゞ。

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 夕日は雲に沈んでいきそうです。右の方に、淡い幻日が見えるようです(^^ゞ。

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 SORAはベンチを下りて、草の上でのんびりしました。

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 北東の空にもいろんな白雲が浮かんでいます。

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 北の空にもいろんな雲があります。

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 夕日が雲に沈み始めました。

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 真上を航空機が北西に飛んでいきます。

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 SORAはあちこち眺めていました。

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 SORAがベンチに上ってきました(^^ゞ。

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 夕日は雲の中に隠れてしまいました。

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 SORAはまた、地面の上でマッタリ(^^ゞ。

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 帰ることにしました。

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 原っぱを下りて帰ってきました。

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 帰り道では、小焼けになってきました。

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 家の近くまで来ると、こんな雲になっていました(^^ゞ。

 明日(11日)の横浜の南の端っこの天気は、夏の陽射しが降り注ぎ、昼間は外出が危険な暑さになるようです。
 南南西の風が吹き猛暑日になって、熱中症に厳重な警戒が必要になりそうです。

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この記事へのコメント

山田まゆみ
2020年08月11日 10:35
注文しました!この前のが、面白かったので、これからもよろしくお願いします。
カラス
2020年08月11日 13:54
こんにちは。
いつもありがとうございます。

10日の空から、雷神、風塵、龍、蜘蛛など、様々なものが流れているように見えます。
お盆が近いからか、仏も神もいっしょになって、世の混乱を視察しに来たのでしょうか。
遊哉
2020年08月11日 14:54
☆ 山田まゆみ さん、第一章のラストではびっくりすると思います(^^ゞ。
 なかなか味わいがあります。楽しんでください(^^)/。
遊哉
2020年08月11日 14:56
☆ カラスさん、いろんな雲の形が面白いでしょ(^^ゞ。
 この2、3日は夕方になると、こんな雲が出てきてます。空を見上げて楽しんでます。
 神でも仏でもいいから、世の混乱を何とかしてほしいものです(^^ゞ。