プルート
プルートの話である。プルート(Pluto)はミッキーマウスの飼い犬で、ペットである。ディズニーのアニメやマンガの中に登場しているが、最近はあまり見かけないようだ。ディズニーランドにでも行けば、見られるんだろうが、ディズニーランドに行ったことがないので、わからない。
プルートが最初に登場したのは1930年である。この名前の由来は、ごく最近話題になったプルートからつけられた。
大きく報道されたし、他のブログにも書かれているのでご存知かと思うが、冥王星(Pluto)がこのプルートという犬の名前の由来となった。
冥王星は1930年、米国の天文学者 クライド・トンボー氏が、太陽系の9番目の惑星として発見した。米国の人々は喜んだ。ディズニーも喜んだのだろう。ミッキーマウスのペットの名前に、この冥王星の名前をつけたというわけである。
残念なことに、国際天文学連合(IAU)が決めた惑星の新定義に冥王星が該当しない、ということで8月24日の総会で「冥王星は惑星ではない」と決議され、長年続いていた論争に終止符を打ったのである。
冥王星は従来の9惑星のなかで唯一、米国人が発見した惑星だったということもあり、米国は強い愛着を持っていたようである。
それで、「冥王星の降格に、米国が強く反対した」という見方が報道されたようだが、実際の議論の過程では、米国と他の国々との対立はあまりなかったようである。でも、一般の米国人にとっては落胆はあっただろうねえ。
トンボー氏の妻のパトリシアさんは、次のようなことを話したらしい。
「彼は科学者だから、近くに同じような天体が見つかってきたことが問題だと、理解したでしょう。落胆するに決まっていますが、今回は受け入れたに違いない」と。
科学者たちは、この結論を冷静に受け止めているようである。
ところが現在、この惑星の定義に批判が出ているという(朝日新聞・8月29日夕刊)。
太陽系の惑星の定義は、簡単に言うと次の3条件を満たすものと定義されている。
① 太陽を回る天体
② 自己重力で球形になっている。
③ 自分の軌道の周囲から、他の天体をきれいになくしてしまっている(他の天体を吸収しつくすか、はじきとばして、自分の軌道を独り占めしている状態を指す)。
冥王星は、この①と②は満たしているが、③は満たしていない。そこで、惑星からはずされたのである。
だが、米航空宇宙局のアラン・スターン博士は「地球、火星、木星、海王星も軌道の近くに天体がある。木星の軌道には5万個の小惑星がある」と批判しているという。地球もこの惑星の定義には適合しない、ということなのである。
問題は、冥王星があまりにも小さい、ということなんだろう。
国立天文台天文情報センターの縣(あがた)秀彦助教授によれば、
「地球の軌道周辺にも微小な天体があり、あの定義では惑星と確定しないから、わざわざ注で8個を列記し、別の条項で冥王星は矮(わい)惑星だと断っているのだろう」ということである。
ということで、③の条件に、次のような手直しが必要なようである。
「自分の軌道から他の天体をほとんどなくし、軌道上で圧倒的な重さを持つ(それだけが際立って目立つ)」と。
こうすれば、はじめて8惑星と冥王星の区別がつく、ということらしい。
面倒なこっちゃ。
<後記>「面倒なこっちゃ」と最後に書きましたが、科学というものは、こんな面倒なことの積み重ねで発展していくんでしょうね。
「科学」といえば、一般的には「客観的で正しい」というイメージがありますが、科学は実は人間が考えつくりだしたものですから、「科学的だから、あるいは科学的に証明されたから正しい」などという表現には、眉に唾をつけたほうがいいかもしれません。
決して科学を馬鹿にしてはいけないと思いますが、「科学」という言葉の前には「現時点の」をつけたほうがいい、と頭の隅っこに思っていたほうがよさそうです。
<追記>06.09.12
国際天文学連合(IAU)は、8月の総会で惑星から除くことが決まった冥王星に対し、小惑星と共通で使う通し番号「134340番」を割り振ったと発表したそうです。
なじんだ「冥王星」が「134340番」という番号だけになるというのは、ちょっと切ないですねえ。
07.01.11
米方言学会は、「プルート」を「06年の言葉」に選んだそうです。冥王星が矮惑星となって以来、「プルート」は「降格させる」「価値を減らす」、受動態にした「プルーテッド」が「降格させられる」という、新たな意味で使われているということです。
この学会は、1889年の創設で、言語学者、辞書編集者、歴史学者、作家ら、北米大陸の英語や方言の研究者が会員。1990年から、その年を象徴する新語や造語の中から「今年の言葉」を選んでいる、ということです。
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