『千思万考』

 漫画家の黒鉄ヒロシさんのエッセイ集『千思万考』を紹介してみる。

 この本は、歴史上の人物を何人か取り上げ、生い立ちや言行などから、その人の心理や考え、生き方、業績などを分析し、そこから現代を生きるヒントを学ぼうというという趣旨のエッセイ集である。
 各エッセイのはじめのページに、取り上げた人物を描いた黒鉄さんの絵(漫画)があり、その人の言葉などが書かれている。
 各人物の名前の後にあるエッセイのタイトルがなかなか面白い。
 ダジャレと言えるものが多いが、それぞれの内容を表してもいる。
 ちょっとこれだけでは、わかりにくいかもしれないが(^^ゞ。

 次のような歴史上の人物が取り上げられている。タイトルもいっしょに紹介する。

【織田信長】 OH!ダ!NO!武・名・我
        信長(パイオニア)のNO!力主義
【織田信忠】 世襲、世襲と人馬は進む
【斎藤道三】 成り上りの限界を教える梟雄(きょうゆう)
【豊臣秀吉】 戦国ダービー、勝馬ヒデヨシ号
【徳川家康】 イエヤース、or ノー
【明智光秀】 魔の、刻(とき)の刻(とき)
【松永弾正】 信長を二度も裏切った人生の演出家
【大谷吉継】 大谷、GO! GO!
【石田三成】 石田三成裁判
【武田信玄】 信玄勝負
【上杉謙信】 謙信的、美
【伊達政宗】 伊達正夢
【千利休】 ココロ、利休忌
【真田幸村】 秘薬「真田丸(がん)」
【源義経】 冗談は義経、源(みなもと)は普通の人
【楠木正成】 南の木の下の、武者
【坂本龍馬】 価値価値山(かちかちやま)の龍馬さん
        龍馬のいろは丸事故交渉術
【トーマス・ブレイク・グラバー】 斗枡(トーマス)・無礼苦(ブレイク)・愚裸婆(グラバー)
【西郷隆盛】 ズンダレたセゴドンは星ば成りもした
【大久保利通】 オークボ、僕も遠し道
【高杉晋作】 その晋作は、高杉る
【吉田松陰】 松陰とすれば、馬鹿を射よ
【井伊直弼】 井伊、自分で直弼
【東洲斎写楽】 月のシャラク
【田沼意次】 これで、ひとつ、田沼
【ジョン万次郎】 リトマス・ジョン万次郎
【中岡慎太郎】 なんか、おかしいんだろう
【伊藤博文】 博文、伊藤をかし
【松平容保】 会津はV
【伊能忠敬】 たかだか、五十歩百歩。忠敬、四千万歩
【森鷗外】 鷗外先に立たず
【新渡戸稲造】 値千金であったニトベ札
【秋山兄弟】 板の上の鯉
【福沢諭吉】 ならぬ咸臨(かんりん)、するが咸臨
【勝海舟】 回収・改修・海舟
【宮本武蔵】 剣豪現行原稿

 さて、ごく一部だが紹介してみる。

【織田信長】 世襲、世襲と人馬は進む
<信忠の愚直、信雄の愚鈍、信孝の愚昧(ぐまい)。
 世襲の弱点を百メートル競走に譬(たと)えてみると、一人途中からスタートするようなものだから、よくいえばおっとり、悪くいえば与太郎的体質に育ち易(やす)い。
 “総領の甚六”説の根拠であるが、とはいうものの、実の子と他の子に差をつけない親など少なかろう。
 「世襲」とは、あくまで願望であり、上手(うま)くいった例は少ないというのに懲りずに繰り返すのは、死の不安を断ち切って遺伝子に託そうとのヒトの悲鳴の一種である。
 信長もまた、悲鳴をあげた。>

【坂本龍馬】 価値価値山の龍馬さん
<二十七歳にして土佐藩を脱藩するや、龍馬は奇跡のように様々な人物との面会を果たしていく。
 幕末四賢侯の一人、松平春嶽(しゅんがく)――勝海舟――佐久間象山(しょうざん)――大久保一翁(いちおう)等々。
 ここに大きな人脈ができる。
 人脈は山脈ではないのだから眼前にいきなりに現われるモノではない。
 人脈づくりの天才である龍馬に倣う。
 人間的魅力だけでは漠然とし過ぎるから、龍馬の足跡から思いつくままに他者を惹きつけたポイントを並べてみる。
 予測性の強さ、度量の大きさ、アイデアマン、思考の柔軟さ、バランス感覚、私欲のなさ、生への執着の薄さ、人運――等々から人脈づくりのとり敢えずのコツは、どうやら自己犠牲であるようだ。>

【西郷隆盛】 ズンダレたセゴドンは星ば成りもした
<進行する改革には是非とも西郷の人気を必要とする新政府は天手力男神(あめのたぢからおのかみ)に化けて東京への引っ張り出しに成功する。
 上京した西郷が眼にした光景は、高給を取り豪邸に住む政府要人達の堕落した暮らし振りだった。
 「政(まつりごと)をする者の俸給は、低給で頑張って仕事をしているうちに、周りから可哀(かわい)そうだから上げてやれという声が出て、はじめてそうする性質のものである」
 政治家たる者すべからく滅私奉公の人たるべしという西郷の信条を述べた言葉である。
 美しく生きようとすると必ず醜い者が立ちはだかる。
 醜い者ほど美しき者を利用しようとする。>

【ジョン万次郎】 リトマス・ジョン万次郎
<最初にアメリカに渡った日本人であるにもかかわらず、最初の本格的な英語教育者であるにもかかわらず、最初に西洋の航海術を体得し、最初に汽車に乗り、最初のゴールドラッシュの体験者であるにもかかわらず、ウェブスター辞書とミシンを持ち帰ったにもかかわらず、坂本龍馬や岩崎弥太郎に開国思想を諭したにもかかわらず、インディ・ジョーンズも顔負けの冒険家であったにもかかわらず、しかもノンフィクションであるにもかかわらず、他にも、もっと、まだまだ、更にたくさんのチャーミングポイントがあるにもかかわらず、我が国に於けるジョン万次郎に対する評価は不当に低い位置に置き去りにされている。
 外の国に於いて成功した、或いは貴重な体験をした人々に対して日本人社会は冷ややかな反応を示す傾向があって、それ、国際化だ、やれ、グローバルだ、なんぞと騒ぐわりには実体が伴わず、現代にまでこの根っこは深部で繋がっている。>

【勝海舟】 回収・改修・海舟
<西郷をして「ひどく惚れ申した」と告白せしめ、龍馬をして「天下の人物というは、勝安房守(あわのかみ)――」と言わしめて、人たらしの如き感想を引き出すが、比較して勘に頼る秀吉の功利的なそれとは異なり、海舟はうちより滲(にじ)み出ていささかも軋むところがない。
 折に触れて、海舟は奥義を洩らしてくれる。
 「主義といい、道といい、必ずこれのみと断定することを、昔から好まなかった」
 型を持たない型、すなわち無刀取りの心境か。
 アイデアや奇抜な発想なら、固定観念を疑って少しズレたところを探せば見つかるが、政治の舞台で実践するとなると命懸けの覚悟が要求されて発明者の多くはそこで脱落する。
 絶大なる自信と共に、海舟は幕末の景色の中を直線で駆け抜けた。>

【宮本武蔵】 剣豪現行原稿
 少し前の時代の大多数の男の子は剣豪になりたいという夢を持った。
 約束がなくても二本の捧を持てば立ちどころに武蔵で、長めの一本を背負えば小次郎になれた時代があった。
 男の子達は何故に彼等に憧れたのだろう。
 深く考えての夢ではないからこそ、そこに種(しゅ)としてのオトコの秘密が隠されているように思う。
 剣豪の中にオトコとしての存在理由を発見するからであろうが、命を懸けなければならないという激烈な条件に、やがてほとんどの男の子達の夢は萎(な)える。
 剣豪にはなれず、いや、ならずとも、生涯を通じてオトコは自己存在の理由確認の為に進まざるを得ない。
 オトコをつくるY染色体の所為(せい)であるからどうにもならない。
 自己存在の理由確認の為に、何時(いつ)の時代にもオトコ達は他者に抜きん出て一芸に秀でた存在になろうと努力するのであった。
 むなしいことであるが、いまさらY染色体に文句を言ってみても致し方ない。
 自己存在の理由の確認を求める為に、剣豪を諦(あきら)めた男の子達は、権力、経済、理論、芸術、社会、宗教の分野へと進路を変更する。>


<今日のお薦め本>
『千思万考 ― 歴史で遊ぶ39のメッセージ』 黒金ヒロシ 著、幻冬舎 刊、1575円、11.03.20. 第4刷発行
 黒鉄さんはバカ親父より2歳年上ですが、バカ親父と違って歴史好きのようです(^^ゞ。

<後記>この本を新聞の広告で知って、面白そうだと思って本屋に行って探したのですが、なかなか見つかりませんでした。
 やっと見つけて奥付を見たら、2月25日が第1刷なのに、第4刷でした。売れてるらしい。
 学校での日本史も世界史も、物覚えの悪いバカ親父は、全般に苦手でした。
 もし学校で、この黒鉄さんの本のようなものがあったら、歴史も好きになっていたかもしれないと思うと、ちょっと残念です(^^ゞ。
 それぞれ取り上げられた歴史上の人物をひとりの人間として捉えていて、とても興味深く面白かったです。
 よかったら、お読みください。
 今日は、カミさんが朝から午後2時半ころまで出かけたので、一人で統一地方選の投票に行き、その足で桜を見に行きました。

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 ここは、以前に紹介した“菊屋敷”です。季節によって、植える花が違っていてきれいです。

 うちの向かいの尾根に上下2段の桜並木があります。お花見の人もいました。
 午後から晴れたのですが、雲が多いので桜の花の色がきれいに出ていませんが、写真を並べてみます。

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 夕方の散歩に行くと、2日ほど会えなかったチーちゃんがいました。
 SORAとチーちゃん、お互いに姿を見つけると駆け寄って、さっそくバトルが始まりました(~_~)。

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 公園の桜も満開です。

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 今日の夕空です。

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