『チェットと消えたゾウの謎』

 第1作『ぼくの名はチェット』、第2作『チェット、大丈夫か?』に続く、《名犬チェットと探偵バーニー》 シリーズの第3作『チェットと消えたゾウの謎』の紹介である。
 このシリーズは4部作の予定だったが、米国ではすでに5作品が刊行されているという人気シリーズである。

 主人公はチェットという体重は40キロを超すような雑種の大型犬。リトル探偵事務所を営んでいるバーニー・リトルという探偵の仕事の相棒で、プロの探偵犬としての自覚をしっかりもっている。この物語の語り手でもある(^^ゞ。
 舞台は、米国西部でラスヴェガスに近いヴァレー(渓谷)と呼ばれる町。

 バーニーは陸軍士官学校卒で従軍経験もある優秀な男だが離婚しており、愛息チャーリーは前妻レダの元で暮らしている。現在は、スージー・サンチェスという新聞記者の恋人がいる。
 探偵事務所は浮気調査の他にはあまり仕事がなく、経営は苦しいのに、レダから養育費や学費を請求され懐具合はいつも苦しい。
 バーニーとチェットはいつも一緒である。出かける時はバーニーの中古のポルシェに乗るのだが、チェットは助手席に座り疾走感を楽しんでいる(^^ゞ。
 その他のお馴染みの登場人物には、リック・トーレスという失踪人捜査班の巡査部長がいる。

 さて、今回の事件は、バーニーが浮気調査の依頼人からサーカスのチケットをもらい、6歳の息子チャーリーとチェットを連れてサーカスに行ったところで起きる。
 サーカス会場では「本日休演」の貼り紙があり、警察が来ていて物々しい雰囲気になっている。
 なんと、巨大なアフリカゾウのピーナッツと、ゾウ遣いのユーリという男が失踪したというのである。
 バーニーはリックとともにサーカスの団員から話を聞いていくのだが、なかなか判然としない。
 バーニーは、ユーリの長年のパートナーであるピエロのポポから調査を依頼され、チェットともに聞き込みを開始した。
 やがて、失踪の裏に、悪辣な企みがあることを嗅ぎつけていく。
 悪漢を追って国境を越えメキシコに入った彼らは、そこで死体を発見する。

 はたして、バーニーとチェットは犯人をとらえることができるのか? そして、ピーナッツを無事に取り戻すことができるのだろうか?
 彼らは悪漢に襲われたり、離れ離れになったりしながらも、真相の解明に突っ走るのである。
 それに、この事件と並行して、浮気調査からも思いもかけない結果が出てきて、バーニーを苦しめるのである(^^ゞ。

 さてさて、この物語は、なにせ犬のチェットが語り手だから、犬の考え方というか感じ方や、その行動様式(習性・特性)が、あるいはチェットという犬の個性がよくわかる。
 それに、相棒としてのバーニーとチェットとの関係のあり様とか、人間のバーニーとの感じ方の相違などが垣間見られて面白いのである。
 そんなところをいくつか引用してみる。前後を省略するので、話の流れはわかりにくいと思うが(^^ゞ。


おおっ、バーニー。彼が吐くなんて、初めて見た。すかさず、ぼくも吐き気に襲われた。なんとなくバーニーに見られたくなかったので、大岩の背後に入り込んだ。喉の奥からこみ上げてきたものは、チートスのにおいがした。吐いたとたんに、食べてしまいたい衝動に駆られたが、やはりやめておいた。>[注:チートス……1948年に米国で発売されたスティック状のスナック菓子。Chee(チーズ)+tos(小さい)を合わせチートス(Cheetos)となった]


<バーニーは手近な椅子を引き寄せて腰をおろし、「そんな、とんでもない」と言った。ぼくはその横に座った。テーブルの下に、ビーチサンダルを履いたフィリッポフの足が見えた。彼の足は興味深いにおいがした……革と汗と垢だ。なんだか彼を好きになれそうな気がしてきた。>


<なんだか急に、ぼくの頭に一つの考えがひらめいた。わが家の前には木が三本生えていて、昼寝にもってこいの木陰をつくっているのだが、その反対側の根元は地面が柔らかくて物を埋めるのに最適な場所なのだ。そこへ走り寄って、埋めておいたラクロスのボールを掘り出した。ラクロスのボールはあまり見かけないだろうが、なんと言っても噛み心地が抜群だ。
 掘り出したボールを運んで、バーニーの足元に落とした。最初、彼は見ようともしなかった。視線がぼうっと曇っている。ぼくはボールをくわえ上げて、もう一度彼の足元に落としてみた。彼の目つきがはっきりした。
 「ボール投げがしたいのか?」バーニーが言った。
 そうだとも。>


<つぎの瞬間、ぼくらはポルシェに乗っていて、バーニーはハンドルを握り、ぼくは助手席に座っていた。低くなった太陽が大きくオレンジ色に輝き、ぼくらはそれに飛び込むように進んだ。バーニーが日よけからサングラスを取り出して、顔にかけた。
 「チェット! おまえはいつもそれだ」
 なにかした? 吠えたのか? あの声はぼくだったのか?
 「ただのサングラスじゃないか、まったくもう」
 そうだ、ただのサングラスだが、バーニーがそれをかけるといやなのだからしかたがない。>


<長い時間が過ぎ、四方八方にどこまでも広がっているヴァレーを過ぎて、広い平野へ出た。空は暗いピンクから黒に変化して、星が出てきた。「銀河の星の数は千億、いや二千億かもしれない。そして、宇宙には千億の銀河がある。なのに、ここで僕らはなにをしているんだろう?」バーニーが言った。
 ぼくらがなにをしているかって? 野球のバットで襲いかかってきた悪党を追跡して、捕まえようとしているに決まっているじゃないか。バーニーはそこのところをちゃんとわかっているんだろうな?>


<「ひどい有り様だな」リック・トーレスがバーニーに言った。「だけど、チェットは元気そうだ」
 もちろん、体も心も元気いっぱいだ。ぼくは耳の先から尻尾の先まで、全身をぶるぶるっと気持ちよく震わせた。これがどれほど気持ちいいかは、とても表現できない。車のなかでずっと眠っていたから、みごとに充電完了だ。>


<ぼくらはポルシェでサーカス会場を離れた。バーニーの両目の下の隈はいっそう濃くなっていた。彼は何本か電話をした。ぼくは前方を走る車をじっと観察していた。リアウインドウのところに猫が乗っている車が時々あるのだが、そういう車は特別に注意深く見た。助手席に乗っていて悪いか? 目の前の車のリアウインドウの向こう側から、猫が憎たらしい高慢ちきな目つきでぼくを見ていた。
 「チェット! 静かにしろ(ノック・イット・オフ)」
 ぼくは猫をやっつけよう(ノック・イット・オフ)とした。
 「チェット! なにしてる?」
 バーニーは猫に気づいてなかったのか? すぐ目の前で、あくびしたり、体をくねらせたり、じつにいまいましい……。>


<キッチンへ行って、また水を少し飲んだ。暴走族がホイールキャップに入れてくれたビールだとか、いろいろなものを試してみたが、やはり水こそがぼくの飲み物だ。それにしても、あの暴走族はいいやつらだった! しばらくのあいだ、暴走族と一緒に過ごした楽しい思い出にひたってから、テーブルの下を嗅ぎまわってパンくずを少し見つけ、それから、玄関ホールに戻ってドアの横にある縦長の窓から外を見た。わおっ。リスが一匹、すぐそこの前庭の芝生に立っているじゃないか! ぼくはうなった。それが聞こえたらしく、リスはあわてて逃げ去った。けれど、逃げ足はぼくが期待していたほど必死ではなかった。あわてふためいて一目散に逃げるところが見たかったのに。>


<ポルシェで走り出すとバーニーが言った。「さっきのは当てずっぽう(ショット・イン・ザ・ダーク)だ、チェット。酒飲みはつるみやすい……たがいに引き寄せ合うんだな」
 銃声(ショット)か? 聞こえなかったぞ。墓地でも聞こえなかったし、それどころか、チャンの事件以来耳にしていない。チャンの事件はまるで悪夢だったが、食べ物はすばらしかった! それもまたいつか話すとしよう。ぼくは大きなあくびをした。あんまり大きく口を開いたせいで唇が歯にひっかかってしまった。それをやっと元通りに戻したら、もう考え事はきれいさっぱり忘れていた。なにも心配なんかする必要はない。バーニーと一緒なのだから。>


<この仕事をしていると、トレーラーパークにはけっこう縁がある。トレーラーパークは人里離れた場所にもある。石油掘削機とかいうものの盗難の件で調査をしたときに行った、ヌーディストのトレーラーパークがそうだった。あのとき、一つだけ学んだのは、人間は服を着ているほうが見栄えがいいということだ。悪く思わないでくれよ。>


<セニョールという言葉も知っている。男という意味だ。ポルシェが走りだしてから振り返ると、制服の男が電話の受話器を手にしているのが見えた。ちょうどそのとき、バーニーがギアをチェンジしたので、エンジン音が轟き、ぼくらは国境の南、メキシコの道を飛ばした。バーニーが歌を口ずさみはじめた。ぼくもウォウウォウ吠えて合唱した。>


<オレンジ色の大きな月が低く昇った。月は大好きだが、いろいろに変化することについてはよくわからない。経験からして、月はもっと高く昇るし、もっと小さくて白いはずだ。いったい、どうなっているんだろう? それに、一部分が欠けたり、すごく細くなったり、完全に消えてしまったりすることもある。つまり、月のない夜だ。一つだけ確かなのは ―― バーニーが何度も言うから知っているのだが――ぼくらは銀河系(ミルキーウェイ)にいるということだ。ミルクを飲むのは好きじゃないけれど、ミルキーウェイにいると思うといい気分だ。猫はミルクが好きだ。やつらがミルクを飲むところを見たことがあるかい? ほんの少しずつ、きっちりなめるように飲んで、絶対にこぼさない。猫のすることを見ていると、どうもいらいらしてしまう。>


<女はまた首を振りかけて、途中でやめ、それからまた一、二度振った。彼女の視線がぼくに落ちた。「犬も一緒なら、もう五十ペソよ」
 「さっきはそんなこと言わなかったじゃないか」バーニーが言った。
 「うっかり忘れていたのよ」
 バーニーは残りの金を払って、おやすみを言った。ぼくらは受付から外へ出て、自分たちの部屋へ向かった。気づくと、尻尾がだらりと垂れてしまっていたので、力を込めて高くかかげた。ぼくは五十ペソなのか? いったい、なんの話だ?>


<ウェイターが差し出したトレイには、コーヒーが一杯と、タバコを数本のせた皿があった。
 バーニーはコーヒーを取ってからウェイターをちらっと見た。「ああ、一本貰うよ」さっとタバコを一本取って、ドル紙幣を一枚渡した。
 「タバコ一本とコーヒー一杯で二十ペソです。小銭はありますか?」ウェイターが言った。
 「釣りはいらないよ」バーニーが言った。
 ウェイターは確かめるように一度だけうなずいた。バーニーが口にタバコを押し込んだ。ウェイターはライターを出して、タバコの先に火をつけた。バーニーの両頬がくぼんで、タバコの先が赤く燃えた。いつ見てもいい光景だ。ぼくもタバコが吸えたらなあ、ひたすらそう願った。>


<わからなかった。そこから先を考えるのはバーニーの仕事だ。バーニー、どこにいる? ぼくはしだいに早く走っていた。止まれ、ビッグガイ。頭のなかでバーニーの声が響いた。いい声だ。ぼくは走るのをやめて、その場に座り、空気のにおいを嗅いだ。においは一つひとつ区別して、それぞれをたどることができる。それはまるで……まるでなんのようなのかは考えつかなかったが、バーニーのにおいを選び取ってたどると、丘の裾部分に戻った。> 

 犬を飼っていた方や今飼っている方には、「そうそう、そんなことがあるある」と思われるのではないだろうか(^^ゞ。
 飼ったことのない方には、犬ってそんなことをするの? とかそんなふうに考えたり感じたりしてるの? と面白く読めるのではないだろうか(~_~)。
 ゆる~いサスペンスでミステリーでハードボイルド小説と言えるかもしれない(^^ゞ。


<今日のお薦め本>
『チェットと消えたゾウの謎 TO FETCH A THIEF』 スペンサー・クイン 著、古草秀子 訳、東京創元社 刊、1890円、132.12.20. 初版
 2011年9月に刊行された第4作“The Dog Who Knew Too Much”は、サマーキャンプで姿を消した少年の事件、2012年9月に出た第5作“A Fistful Of Collars”はハリウッド俳優をめぐる物語だそうです。
 邦訳が待たれます(^^ゞ。

<後記>犬好きには堪らない物語であり、シリーズです(^^ゞ。
 気楽に楽しめるので、よかったらお読みください。

 昨日(21日)の朝の散歩の時は、雨が降っていました。

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 原っぱにも水溜りがあって遊べないので、すぐに帰ってきました。

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 夕方には雨が止んでいましたが、雲が多かったです。

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 SORAは、原っぱにスズメがたくさんいて、じーっと見ていました。

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 桜の新緑が大きくなってます。

 今日(22日)はカミさんの誕生日でした。
 昼は回転ずしに行ってから、アウトレットに行きました。
 日が射していましたが、雲が多かったです。

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 アウトレットではカミさんが靴がほしいと言うので手に入れて、それをプレゼントにしました(^^ゞ。

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 帰るころには雲が多くなって曇っていました。雲間から光芒が出ていました。

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 夕方の散歩に出ると、肌寒くなっています。

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 原っぱに来ていたワンコたち。少し遊びました。
 SORAは少しボール遊びをしてから、クンクンしながら帰ってきました。

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