『希望の記憶』




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                 〔今日の月〕


 ミネソタ州の保安官コーク(コークラン)・オコナーが活躍するシリーズの一冊『希望の記憶』を読んだので紹介してみる。
 以前に『血の咆哮』を紹介したが、これはその前作となる。

 プロローグは、次のように始まる。


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 オジブワ族の老まじない師(ミデ)であるヘンリー・メルーなら、こんなふうに語るだろう。
 大地は生きている、そこにあるすべてのものには――水、空気、草、岩、枯木にさえ――魂がある、と語りはじめるだろう。風がなくても、草はやはり震える。雲が灰色の毛織物のように垂れこめている日でも、花は太陽のある方角に顔を向ける。木々はしなりながらたがいに囁きあう。このような魂の共同体では、なにものも気づかれずに過ぎることはない。だから、子どもが死のうとしているというのに森がそれを知らないということがあろうか?
 その少女は、十四歳九ヵ月と二十七日。月経はまだ一度もなく、ボーイフレンドも一人もおらず、ほんもののデートをしたことすらない。〈マクドナルド〉よりちゃんとしたレストランには、一度も行ったことがない。ミシガン州マーケットより大きな街を見たことがない。
 悪夢で目をさまさない夜は一日もなく、いくつかは夢でも、ほとんどは恐ろしい現実だ。幸せだと思った日は一日もないが、いつかは幸せが見つかるかもしれない、足もとの砂の中からダイヤモンドが出てくるように、とずっと希望を抱いてきた。ひどい人生だったにもかかわらず、少女は奇跡的にその希望を捨てずにいた。
 いままでは。
 いま、たった十四歳なのに少女は死のうとしている。そして、それを自分で知っている。
 下の木立のどこかに、少女がスコルピオと呼ぶ男が迫っている。
(後略)>


 ひとりの少女が死のうとしている。たった14歳なのに。悪夢のような人生でも、希望だけは捨てずにいたのに。
 この少女はいったい誰なのか? そしてスコルピオとは何者なのか?

 舞台は、ミネソタ州のとなりのミシガン州はボディンという町である。スペリオル湖岸のマーケットから湖沿いに北西に伸びる50キロほどの管理の悪い郡道の終点近くにある寂しいところで、南と西には樹木の生い茂ったヒューロン山地がある。
 
 コーク・オコナーは、ルー・ジャコビという悪党に彼の息子を殺したとみなされ、ルーに差し向けられた殺し屋に命を狙われ、逃げていた。
 だが脚を撃たれ、長年会っていなかった従姉妹で獣医のジュエル・デュボイスのところに身を寄せ、傷を癒しているのである。
 ジュエルは夫を亡くし、今は14歳の息子レンとの二人暮らしである。

 このレンと彼のガールフレンドのチャーリー・ミラーの行動を中心に物語は進んでいく。
 チャーリーは本当の名はシャーリーンだが、チャーリーと呼ばれる方が好きだという、次のような女の子らしくない変わった子である。

<男の子のような外見、男の子のような服装、そしてボディン地区中学校八年生の中でいちばん速い足。髪は坊主刈りで、遠くからだと炭の粉をまぶしたようにしか見えない。鼻の左側と下唇にピアスの穴を開けて、小さな銀色の輪をつけている。レンより背が高くやせており、その動きには森の動物のようなすばしこさとなめらかさがある。そして、用心深さも。>

 チャーリーは酒浸りの父親と二人、トレーラーハウスで貧乏暮らしをしている。父親が酒を飲んで荒れる時は、街の児童保護施設に避難したりしていた。

 そんなある日、レンとチャーリーは友達のスタッシュとコパー川の河口近くにある、今は使われていない小屋に遊びに行く。普段は真面目なレンだったが、そこではスタッシュが隠しているマリファナタバコを3にんで吸うのである。
 ちょっとハイになった3人が外に出ていた時、スタッシュが死体が流れていくのを見たと言う。レンとチャーリーは信じることができないのだったが……

 その夜、レンとチャーリーは、スタッシュが見たという死体を探しに再び川へ行ってみる……そこに小型船が現れサーチライトで照らされ、ふたりに向かって突進してきた。
 ふたりは小屋に逃げたのだが、重いブーツの音がして何者かが追ってきた。
 ふたりは急いで逃げ出した。

 翌朝、コークを支援しようとセキュリティ・コンサルタントのダイナ・ウィルナーがやってくる。レンはふたりのために朝食を買いに街へ行くが、食事をしていないだろうチャーリーにも食べ物を届けに行った。
 ところが、チャーリーの住んでいるトレーラーハウスでレンが見たものは……無残に殴り殺されたチャーリーの父親の死体だった。
 姿を見せないチャーリーは容疑者として追われる身となった。

 チャーリーの無実を信じるレンは、コークやダイナとともに、その殺人事件を追っていく。
 やがて、別の殺人事件が起きる。
 コークも殺し屋に狙われる。

 20年前に起きた子ども殺しの謎ともからんで、小さな町を揺るがす大事件になっていくのである。
 プロローグで亡くなった少女も、物語に大きく絡んでくる。
 はたして事件の謎は解けるのだろうか? 銃創から回復途中のコークは、殺し屋との戦いに勝てるのだろうか? コークと悪党ルー・ジャコビとの因縁は解決するのだろうか?
 レンとチャーリーの行動や、コークやダイナの活躍にハラハラドキドキしながら惹き込まれていく、とても面白いハードボイルド・サスペンスである。


<今日のお薦め本>
『希望の記憶 COPPER RIVER』 ウィリアム・K・クルーガー 著、野口百合子 訳、講談社文庫、977円、11.11.15. 第1刷発行

希望の記憶 (講談社文庫)
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<後記>このシリーズの主人公はコーク・オコナーですが、今回はレンとチャーリーが主人公の青春物語と言えるかもしれません。
 レンとチャーリーがとても魅力的です。それはレンの母親やダイナなどとともに、それぞれの人物描写が巧みだからだと思います。

 もうひとつ物語に絡んでくる出来事があります。
 このあたりではほぼ絶滅したと言われているクーガー(ピューマ)の足跡を、レンが発見したことです。最後に物語の重要なポイントともなります。
 豊かな自然を背景に描かれるサスペンスは、面白いです。
 このシリーズは全部読んでみたいです(^^ゞ。

 今日(28日)の午前中は、眼科の定期検診に行きました。
 晴れ一時曇りという予報でしたが、黒い雲が広がっていました。

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 帰ってきてからすぐに、SORAのエサを買いに行きましたが、その時も同じような空模様でした。

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 でも、しだいに陽が射すようになってきて、夕方の散歩の時は強い光が射していました。

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 ひょっとして富士山が見えるかもしれないと、尾根に上っていきました。

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 途中で東京湾の方を見ると、大きな客船が見えました。

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 飛鳥Ⅱじゃないかと思いましたが、帰ってきて横浜港入港予定を調べると、飛鳥Ⅱが18:00着岸となっていたので、まちがいないと思います(^^ゞ。
 尾根への道の途中で、西空の地平線が黒雲に覆われているのが見えたので富士山は無理。ということで、いつもの公園に行きました。

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 ちょうど落日になりました。今日も飛行機雲がわりと見られます。

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 北風が吹いて寒いので、帰ることにしました(^^;)。

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 明日(29日)は朝から陽が射すようですが、寒気に覆われて寒そうです。

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