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われわれの世代にとって「舶来品」は憧れの的だったが、本書ではフランス人に愛された品々をめぐるとっておきのエピソードやその歴史などを語る薀蓄話を主に、魅惑のパリの今昔、フランス文学・語学に関するエッセイが収録されている。 鹿島 茂という人は文章もうまいし、読書家でいろんな本を書いている。以前にも確かこの方の本を紹介したはずだと思って、調べてみたらあった。『セーラー服とエッフェル塔』という本である。これも変な本だが面白いのである。 まず、著者について、カバー裏から簡単に紹介しておく。 1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、共立女子大学文芸学部教授。専門は、十九世紀のフランスの社会生活と文学。91年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、また2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞した。 他の著書に『パリの秘密』『悪党が行く』『ドーダの近代史』『鹿島茂の書評大全 洋物篇』『同 和書篇』等がある。 本書の目次は、次のようになっている。 i ア・プロポ フランスパン/カフェ・オ・レ/ハンカチ/石鹸/産着/ベレー帽/ジャム/クレヨン/メリヤス/マーガリン/リボン/サクランボ/ブラジャー/コック帽/シロップ/ランプ・シェード/紅茶/メリーゴーラウンド/スリッパ/ポテトフライ/乳母車/ソフト帽/トランク/毛糸/人台/クロワッサン/雨傘/公園の椅子とベンチ/四つ葉のクローバー/菊/見繕いセット/ボジョレ・ヌーヴォー/ゲートル/リュックサック/炭酸水/手袋/サンタクロース/ヤドリギ/砂糖/タバコ屋/ガレット・デ・ロワ/湯たんぽ/ヘアー・ブラシ/チョコレート/セーラー服/エスプレッソ/マッチ/絵葉書/フランス人形/チーズ A 遠い昔と近い昔 遠い昔/元旦のパリなら十九世紀/十九世紀フランスの商売/イギリスの五カ国?/テーブルマナーの発祥/舞踏会の香りの記憶/去年の雪いずくにありや 近い昔/百円ラーメン対五フラン定食/パリの素人参加プロレス/あんたが悪い。/パリの「和式」トイレ/パリの(スー紅屋)/宅配の新聞という名の友人/イギリスかぶれ そして今/グラスの輝き/砂糖の行方/Un Evian, s'il vous plait!/セピア色の午後/忘却の大河 パリとは何か/石畳と古本屋/時間の使い方/コレクター向きの町/パリ ミュゼ・カルナヴァレ/だれのものでもないパリ/パリの次なら、プラハ/南米のプチ・パリ B 仏文顔 仏文顔/顔で決まった仏文専攻/ナンパのフランス語教科書/語学上達の条件は、気質と環境の問題/フランス語上達の「秘法」/語学の恥はかきすて さて、なにか1、2紹介してみようと思うのだが、まずはタイトルに入っている「ベレー帽」について。 フランス人といえばベレー帽というイメージがあるが、ベレーは元はといえばフランスとスペイン国境にまたがるバスク地方とベアルネ地方の農民の被り物にすぎない、という。 <ベレーという名は綿糸を編んで作る綿帽 bonnet を、ベアルネ方言で berret と呼んだところからきている。頂きのつまみは、最後に綿糸のはしをよじって作ったものである。 では、なぜこのベレーが、少なくとも外国人の目にはフランス人の象徴と映るようになったのか。その原因は二つ考えられる。 一つは、鉄道の普及により、十九世紀の後半に、貧しいバスク・ベアルネ地方から出稼ぎにやってきた人々がパリに多数定住し、ベレーを一般に広めた時期が、万国博覧会(1855年、1867年、1878年、1889年)の開催と重なっていたことである。万博見物にやってきた外国人はフランスの民衆はみんなベレーをかぶっていると思いこんだのだろう。 もう一つは、第二のベレー流行期ともいえる1930年代から40年代にかけて、フランスの名画が世界中に配給されたことである。ベレーは、ジャン・ギャバンのようなジャガイモ顔にも、ダニエル・ダリューのようなエレガントな貴婦人にも、また可愛い子供にも、気取った芸術家にも等しく似合っていたので、フランス映画ファンのあいだで、フランス人はベレー好きという神話が生まれたのである。> ということなのだが、このあと、ベレー帽といっても、そのクラウン(帽子の山)の形とかぶり方により、何種類かに分けられると書かれている。 大黒頭巾のような大きなクラウンを左耳の上に垂らすのがアルプス猟歩兵のスタイル。小さなクラウンのベレーを少しあみだにしてかぶるのはパラシュート部隊スタイル。ボンボンという玉房を横にして、まっすぐに頭に載せるのが水兵スタイル。フランス人がよくやる両耳のところまで深くかぶるのは、個性派の名優ブールヴィルにちなんでブールヴィル・スタイルと呼ぶらしい。 もう一つ、目先を変えて「グラスの輝き」というところから。 フランス人は、ガラスやグラスをピカピカに磨くことがとても好きなのだそうだ。なぜなら、 <おそらくそれは、かつてフランスが貴族社会だった時代の名残なのだろう。つまり、貴族社会のころ、裕福さの度合は、所有しているモノの高価さよりむしろ、その高価なものを維持していくためにかける人件費によって計られたのである。 たとえば、バカラのような高価なクリスタル・グラスを所有していても、それを日常的に使用していることを示さなければ、本当に裕福とはいえない。しかも、そのクリスタル・グラスが購入時と同じ輝きをもって使用されていなければならないのだ。 しかし、そのためには大変な人件費がかかる。なぜなら、ブルゴーニュ・ワインなどを味わうための金魚鉢のような大きなクリスタル・グラスは専門の使用人が細心の注意を払って磨き続けなければピカピカにはならないからだ。いいかえれば、維持費がかかるモノを持っていればいるほど、その人は金持ちということになるのだ。 この評価の基準が、貴族社会がなくなってしまった今でも、フランスには生きている。だから、自分のプレステージを保ちたかったら、バカラのグラスを持っているだけでなく、それをピカピカにしていなければならない。この見栄社会は緊張を必要とするが、その分、自己のコントロールを要求するので、互いの馴れ合いを拒否した社会ができあがる。そして、それはある意味では、決して悪いことではないのである。> こんな感じで著者の専門分野からの考察が書かれたところもある。ヨーロッパの歴史的・地理的複雑さとか、そこにおけるフランスの位置とか、フランス文化とはどういうものかなどが、モノを通していろいろわかって、とても興味深い内容である。 <今日のお薦め本> 『クロワッサンとベレー帽 ― ふらんすモノ語り ―』 鹿島 茂 著、中公文庫、680円(税込)、07.10.25初版発行 本書は『上等舶来・ふらんすモノ語り』(1999年3月、ネスコ刊)を改題したものだそうです。 「解説」を俵万智さんが書いていてなかなか楽しい文章なのですが、その中でこんなことを書いています。 <ページをめくるごとに「へぇ!」という楽しい驚きがある。これから会う人に「ねえ、ねえ、知ってた?」と話しかけたくなる。今度パリに行ったら、カフェ・オ・レも公園の椅子も、タバコ屋の看板も、なにもかもが新鮮で、親しみの表情を持って見えてくるだろう。道ゆく女性のリボン使いにも、注目してみたい。> <後記>パリという街はとても魅力的なところらしい。実は、仕事で2度ほど行ったことがあるのですが、それぞれ3日間ずつで観光はほとんどできず、街のよさを味わうまでの余裕はなかったのです。 俵万智さんが、解説の最後でこんなことを書いています。 <本書は、一度パリに行ったことのある人なら「また」と、一度も行ったことのない人なら「ぜひ」と、必ず思わせてくれる一冊だ。私もまた、パリに行きたい。> バカ親父も、いつの日かまた、パリに行きたい。そして、ゆっくり絵や彫刻を観たり、骨董店とか古本屋を巡ったり、カフェで街ゆく人を眺めながらコーヒーを味わいたい、と思っています。 クロワッサンとベレー帽―ふらんすモノ語り (中公文庫 か 56-8)
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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ベレー帽 気になっているが ついに かぶることなく 今日まで来ちゃった なんか すごくハードルが 高い 舶来品 その気が強すぎるのかな? |
seizi05 2007/11/18 18:08 |
なんか今更に二年前に逃したフランス行きが無念に思えてきちゃいました。 |
urara 2007/11/18 18:32 |
昨夜はありがとうございました。URLの記事、読ませていただきました。私も仕事とは別に、なにかライフワークになるものを持てるよう、頑張ってみます。 |
キーブー 2007/11/18 19:16 |
☆ seiziさん、思い切って被っちゃいなさい。そうすれば似合うようになるもんです(~_~)。ところで、ベレー帽って高いんですか。バカ親父も被りたいんだけど……。 |
遊哉 2007/11/18 20:49 |
☆ uraraさん、是非、ご主人とフランスへいらしてください。その前に、こんな本でいろいろ勉強するのもいいかもしれませんよ。いろいろ知っていると、同じものを見ても、やはり感興が違うような気がします。面白いことが書いてありますよ(^^♪。 |
遊哉 2007/11/18 20:52 |
☆ キーブーさん、お金につながるかどうかは別として、なにかライフワークをもつということが、大切な気がします。バカ親父も模索中です(~_~)。 |
遊哉 2007/11/18 21:02 |
女性誌でよくパリの街角のお洒落な女性特集をしてますが、本当に色の組み合わせや着こなしがステキ!若い人はブランドなんか着てなくても自分なりに工夫してお洒落にしてるし・・小さい時から培われたセンスなんでしょうね。 |
リサ 2007/11/18 21:34 |
☆ リサさん、パリの朝、かわいい若い女性がフランスパンを小脇に抱えて、少しちぎってかじりながら歩いてるのを見たことがあります。小粋でしたよ(^^♪。決して贅沢なものを身につけているわけじゃないんですけどね。あのセンスは小さい時から培われるんでしょうね。普段から、見ているものが違うからでしょうかねえ。 |
遊哉 2007/11/18 22:36 |
フランスで思い浮かぶのはワインとフランスパンにチーズ |
みいママ 2007/11/18 23:25 |
☆ みいママさん、バカ親父もフランスに行ったといっても、パリに行って仕事をしただけで、日本のどこかの都市に出張にいったのと変わりないんです。もう一度行けるかどうか、わかりません。みいママさんも、もし、行きたいという気持ちがあるなら、その気持ちを持ち続けた方がいいと思います。夢は持ってるだけでもいいんです。 |
遊哉 2007/11/19 00:33 |
ベレー帽といえば…鉄腕アトムの作者 手塚治虫さん!^m^ |
キョン 2007/11/19 13:25 |
鹿島さんという方、まったく知りませんでした。 |
のんびり猫 2007/11/19 18:26 |
☆ キョンさんも、ベレー帽といえば、手塚治虫ですか〜。やっぱり歳がわかります(^^ゞ。手塚さん自身の漫画もちゃんとベレー帽を被ってるものねえ(~_~)。 |
遊哉 2007/11/19 19:29 |
☆ のんびり猫さん、鹿島さんは団塊世代のおじさんですが、エッセイなどはわかりやすい文章で面白いことを書いています。この本でもいいし、他のでもいいので是非読んでみてください。 |
遊哉 2007/11/19 19:35 |
>裕福さの度合は、所有しているモノの高価さよりむしろ、その高価なものを維持していくためにかける人件費によって計られたのである。 |
Fチェスカ 2007/11/19 21:28 |
☆ Fチェスカさん、そうなんですよね。壊れたものでも工夫して修理していくのは、意外と面白くて楽しいし、そうして使っていくと愛着も湧きます(^^♪。いま流行の“もったいない”精神にも合います。 |
遊哉 2007/11/19 22:01 |
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