団塊バカ親父の散歩話

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zoom RSS 『その犬の歩むところ』

<<   作成日時 : 2017/06/11 23:02   >>

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            〔夕方の散歩に行く途中で見つけたアジサイ〕


 『神は銃弾』や『音もなく少女は』で、日本のミステリーファンの心をつかんだ作家ボストン・テランの『その犬の歩むところ』を紹介してみる。
 ミステリーとかサスペンスとかいう範疇に収まり切れない物語である。でも、ドキドキしながら一気に読める(^^ゞ。
 ある犬とその犬とかかわっていく人間たちの物語で、人間と犬への賛歌といってもいいかもしれない。


 この物語の性格や背景など、どういうものかよくわかるプロローグを紹介しておく。
 ちょっと長くなるが、次のようなものである。


<ぼくの名前はディーン・ヒコック、元アメリカ海兵隊員。そして、この物語の語り手だ。といっても、この物語に登場する人々も物語そのものもぼくが創作したものではない。すぐにみなさんにもわかるはずだが、これはぼくが創り出したものではなく、受け継いだものだ。
 この物語と物語に登場する人々をぼくが知るようになったのは、暴風雨のある夜、車でケンタッキーの裏道を走っていたときのこと、危うく犬を轢(ひ)きそうになったのがきっかけだった。
 あとからわかることだが、その犬は虐待されていた。大きなプラスティックのケースに入れて放置され、そのプラスティックのケースからは抜け出られたものの、死にかけていた。しかし、彼には生きたいという強い意志があった。人が彼に何度も示した残虐さから、身も心も自由になろうとする固い決意があった。のちになってさえ片時も彼から消えることがなく、衰えもしなかった究極の善良さがあった。この三つこそぼくの名が出てくるこの物語の一番の存在理由だ。
 ケンタッキーの暗闇を走っていたその夜、ぼくは心に深い傷を負い、目的をなくしていた。イラクから帰ったばかりで、ぼくは分隊のただひとりの生き残りだった。そんなぼくがその夜、横なぐりの雨の中、車を走らせていると、ヘッドライトが、よろめいて倒れる犬の姿を前方にとらえた。
 その夜、その裏道にぼくとその犬が居合わせたのはただの偶然ではない。それは詩のような運命の為(な)せる業(わざ)だった。なぜなら、ぼくがその犬の命を救ったのと同じように、その犬もまたぼくの命を救ってくれたからだ。その犬はあとで小さな男の子の命も救うことになる。それは、しかし、また別の話だ。
 さきにここで断っておくと、この物語は伝統的なやり方では語られない。ギヴという名の犬の旅を追うことがこの物語の核となる。ギヴは9・11とハリケーン・カトリーナとイラクを体験したアメリカを旅した。音楽と映画のアメリカを旅した。犯罪と美、愛と悲哀、神と善意、さらに永遠なる人間の贖罪(しょくざい)と癒しのアメリカを旅した。これはギヴがその旅で出会った人々の物語だ。ギヴが触れた人生、それらの人生が互いに与え合い、さらにギヴにも与えたものについて書かれた物語だ。
 そんなギヴの旅の途上、ぼくとギヴは出会い、存在そのものが生む単純な奇蹟がぼくたちの身に起こり、ぼくのほうはひとつの善行を試みたことで、ここに現われる人々の人生の物語を綴(つづ)る機会に恵まれた。なくした夢を叶(かな)える機会にも恵まれ、気づいたときにはもう、ぼくは傷ついた心を抱える者でもなければ、目的をなくした者でもなくなっていた。

                 ――ディーン・ヒコック>


 偶然出会ったギヴという名の犬に命を救われ飼い主となったディーン・ヒコックが、そのギヴの過去の旅を探り辿りながら綴った物語である。

 物語は数年前の雨の中、ある疲れ切った老犬がモーテルを経営する女性アンナ・ペレナと出会うところから始まる。
 彼女は遺棄されたり虐待された犬たちを助け、家を与え、看取ってきた。現在いっしょに生活しているのは盲目のエンジェルという犬だった。
 モーテルにやってきた老犬は、首輪から「ギヴ」という名前だとわかる。アンナに看護され元気になり、やがてエンジェルはギヴの子どもを産んだ。そして、ギヴは老衰で安らかに亡くなる。
 生まれた子どもたちは知り合いにもらわれていったが、一匹だけは手元に残し、父親の名前を受け継がせギヴと名づけられた。
 父親はギヴ・シニア、子どもはギヴ・ジュニアということである。
 ところが、思いもかけない事件が起こり、ギヴ・ジュニアはアンナとの別離を迎えることになった。 

 このあとのあらすじは、あえて書かないことにしておく。
 プロットがとてもよくできていて、先の読めない物語なので、実際にドキドキしながら読んで味わっていただきたいからである(^^ゞ。

 実は、今日(11日)の朝日新聞朝刊の書評欄を見ていたら、「文庫 この新刊!」に池上冬樹さんがこの本を取り上げていた。
 紹介してみる。

<人間の善意と愛をもっともよく理解する犬が、様々な人々の魂を生き返らせる物語。孤独の闇の中にいて気づかずにいた他者の思いにふれ、忘れていた夢・新たな夢を抱かせてくれる。犬と悲しみとさよならの川≠遡(さかのぼ)りながらも、それでも生きる喜びがあることをたっぷりと教えてくれる。相変わらずテランの文章は詩的で力強く、読む者の心を何度も揺さぶる。必読の傑作!>

 そんなテランの文章のごく一部だが、何か所か引用・紹介してみる。


<人とちがって、犬は感じることしかしない。犬は当て推量や蓋然性(がいぜんせい)にいつまでも拘泥(こうでい)しない。賢明になりすぎて無為に終わることなど犬にはありえない。これが人間なら、現状維持の哲学を捨てきれず、同じ道を歩きつづけていたかもしれない。が、この犬はそんなことはしなかった。>

<ふたりはともに歴史の暗い道を歩いたことのある者たちだった。そして、恥知らずなほど感情に生きることを恥とは思わない男女だった。そんなふたりはロバータ・フラックの『愛は面影の中に』のヒットとともに結婚する。そのとき彼の母親がふたりにこんなシンプルな教訓を授ける。困難のときには、今は春で、ふたりは出会ったばかりだと思うことね=B>

<その犬は、しかし、そうしたストイシズムを超えて、欠点となるほどやさしい犬だった。同時に闘いの試練に耐え、どこまでも油断なく、比べようがないほど用心深い犬でもあった。自分の居場所を求め、そこになじむことに全力を尽くしながら、なんの理由もなくどこかで息絶えることを当然のこととして受け入れていた。彼女にはそうとしか思えなかった。>

<だしぬけに彼が言った。「本と時計のちがいがわかるかね?」
「いいえ」とアンナは言った。
「時計は時間を思い出させてくれて、本は時間を忘れさせてくれる」>

<説明しようのないやり方で人に触れてくる犬がいる。そういう犬は人の心の中にある、見えざる泉と原始の森までたどり着く。そのような場所に犬に触れられると、人の心のまわりで時間が際限なく崩れ去る。それはその犬のそばにいることが許される数ヵ月、あるいは数年のあいだ続く。エンジェル同様、アンナにとってギヴはそんな犬だった。二匹はどのような残忍さを人から示されようと、善良さを決して失わない犬だった。>

<犬というのは善意と愛を理解する生きものだ。だから人間にそれを求める。善意も愛も純粋な感情であり、創造の荘厳(そうごん)な産物だからだ。さらに善意と愛は消え果てたいくつもの魂を生き返らせる無限の夢だからだ。>

<彼女自身は少女の頃にジャマイカからアメリカにやってきていた。「背中には服、心には魂をもってね」と彼女はよく言った。「服はいつかはなくなっても、でも、魂は……」>

<「きみもわかってるよね、きみといるときとおれといるときじゃ、ギヴの様子がちがうのが。それってどうしてなのか、おれにはわかる。自分が何をされたのかギヴにはちゃんとわかってるんだよ。ひどい仕打ちを受けたことが。なのに、こいつは今でもクールだ。おれにも愛情を示してくれる。ほんと、こいつって心の強いやつだよ。それで、おれはなんか赦してもらえたみたいな気持ちになってたんだ。でも、きみが現われて、きみと一緒にいるこいつを見てわかったんだ。人間としてどこからやってきたのか。それがちがうんだよ。それってきみの肌からにじみ出てる。きみがまとってる肌から。そのちがいは、きみの愛は正しい愛で……おれの愛はほとんど正しい愛だってことだよ。でも、そのちがいっていうのは……そのちがいっていうのは」彼は上体をまえに倒すと、考えながら両手を広く広げた。「正しい愛とほとんど正しい愛のちがいっていうのは……そう……完璧な和音(コード)と……ゴミみたいな音とのちがいだよ」>

<若さというものを一度でも手に入れたことがある者なら、誰でもそういう最初のキスを知っている。自分の人生の歴史と心が否応なく結びつけられることが感じられる相手とのキスだ。それは若さの恵みのひとつであり、重力の力で体のあらゆる部分を盗む。体の中身をすべて外に抜き出して、それをどこかに消し去ってしまう。>

<ルーシーの気持ちはどこまでも沈んだ。数日のあいだ、ギヴと公園で過ごしても、十七丁目運河通りを散歩し、ポンチャートレイン湖畔まで足を伸ばして、そこでギヴにサギを追わせても、彼女自身は囚われた心の横暴なルールに従わなければならなかった。夢が壊されそうなとき、人の心は青ざめた孤島になる。>

<ギヴが牙を剝き、吠えだした。ミズ・エルに咬みつこうとさえしたのをルーシーがなだめた。ミズ・エルにはよくわかった。ギヴは誰が相手でもルーシーを守ろうとするだろう。必要とあらば、宇宙のあらゆるものを敵にまわしても。なぜなら、ギヴにとってルーシーは自分が生きることそのものだからだ。そして、ギヴは混じりけなしの愛の塊だからだ。ギヴは守護者として、友として、同輩として、兵士として、倒れるまで一歩も譲らないだろう。>

<「小中学校も大学も図書館も博物館もみんな知識と美を伝えるためにあるのよ。わたしが先輩に言われたことばを引くわね」と彼女は言った。「知識と美は魂の測り知れない夢だ。それらはすべての根源だ=v>

<ギヴはディーンを見た。人が苦しんでいるときや、傷ついているときや、恐れているときや、危険を感じているときに犬がそれを察知することについては、これまで何度本に書かれてきただろう? 何度話されてきたことだろう? 何度事実として記録されてきたことだろう? ギヴは眼のまえにいる人間の善良さを感知したのだった。ミズ・エルに感じたように。アンナ・ペレナに感じたように。それに、もちろんルーシー・ルースに感じたように。ギヴは少しまえに身を乗り出すと、ディーンの頬を舐めた。それだけだった。それが彼のことばになっていた。ぼくはここにいるよ、ということばに。>

<店の戸口でディーンはギヴをつかまえなければならなかった。ギヴはつけられた引き綱をひっきりなしに引っぱった。犬は忘れない。犬というのはただ耐えて死んでいくだけの生きものではない。つまるところ、彼らもまた同じ川の一部ということだ。われわれ全員に影響を与える悲しみとさよならの川の。>



<今日のお薦め本>
『その犬の歩むところ Giv』 ボストン・テラン 著、田口俊樹 訳、文春文庫、886円、17.06.10. 第1刷
 著者のボストン・テランは覆面作家で、本名も生年も性別もわからないらしい。
 一応、カバー裏から紹介しておきます。
<アメリカ、サウスブロンクスのイタリア系一家に生まれ育つ。1999年、『神は銃弾』でデビュー、イギリス推理作家協会新人賞を受賞、「このミステリーがすごい!」第1位、日本冒険小説協会大賞の3冠に輝く。第4長編『音もなく少女は』は「このミステリーがすごい!」第2位となる。他の邦訳作品に、『死者を侮るなかれ』『凶器の貴公子』『暴力の教義』がある。>
 ちなみに、訳者の田口さんによれば、テランは現在六十代の女流作家ではないだろうか? ということです(^^ゞ。

その犬の歩むところ (文春文庫)
文藝春秋
2017-06-08
ボストン テラン

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<後記>とても悲しく切ない出来事も起きるのですが、心が温まるすがすがしい物語です。
 犬を変に擬人化せず、犬を犬として人間と心を通わせることのできるものとして描いています。
 犬好きには是非、そうでない方にも是非読んでいただきたい傑作です(^^ゞ。

 今日(11日)は陽射しもありましたが曇りがちの一日で、気温も適度で過ごしやすかったです。
 昼前にカミさんと買い物に出た以外は、家でのんびりテレビを観たり本を読んでいました。
 夕方の散歩に出たのは5時半ころでした。雲が多かったです。

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 夕日は雲に隠れたり出たりしていました。
 公園を回って原っぱに行きウロウロしていきました。

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 夕日は雲に隠れていきました。
 SORAと軟式テニスのボールで遊びました。

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 SORAは疲れて草の上に伏せをしました。
 そしてすぐに……

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 ボールを肩の下に敷いてスリスリしましたが、フニャフニャボールだから刺激はなかったと思います(^^ゞ。
 ベンチに行ってマッタリすることにしました。

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 空の様子を並べてみます。雲間から夕日の光芒が射したり、それがいくつもに分かれたりしていきました。

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 SORAはずーっとこんな感じでした(^^ゞ。

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 帰ることにしました。

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 明日(12日)は陽射しも射しますが曇りがちで、午後はにわか雨や雷雨があるかもしれません。気温はそれほど上がらず過ごしやすそうです。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
このところ 気温 落ち着いていて 助かります
なんたって すぐ ハーハー言い出す 年頃なんでーー
seizi05
2017/06/12 09:36
☆ seizi05さん、今日などちょっと肌寒いくらいですね。でも、楽でいいです。
 少しずつ暑さに慣れていきましょう(^^ゞ。
遊哉
2017/06/12 10:21

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