〔今朝の快晴の空〕 ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)などの多くの人類が滅びていった中で、なぜ今の私たちホモ・サピエンスは生き残っているのかを、わかりやすく解説した本『絶滅の人類史 ― なぜ「私たち」が生き延びたのか』を紹介してみる。 著者は分子古生物学者の更科 功さんである。 著者は「はじめに」で、本書についてこんなことを書いている。 <(前略)類人猿は森林という宮殿に住んでいる。森林には食べ物が多く、肉食動物に襲われる危険も少ない。でも初期の人類は、木がまばらにしか生えていない疎林や草原で暮らしていた。森林に比べれば食べものも少ないし、肉食動物に襲われる危険もいっぱいだ。そこで生き残るためには、ぜいたくを言わずに何でも食べなければならないし、いろいろと工夫もしなければならない。では、どうして人類は森林から、こんな不便で危険なところに出てきたのだろうか。 (中略) きっと人類だって、ずっと森林に住んでいたかったのだ。でも、アフリカで乾燥化が進み、森林が減ってしまった。そのとき、力が弱くて木登りが下手だった人類の祖先は、類人猿に負けて森林から追い出されたのだろう。そして、追い出された私たちの祖先のほとんどは、おそらく死んでしまったに違いない。なにしろ疎林や草原は、不便で危険な場所なのだから。 でもその中で、生き残った者がいた。なんでも食べられてどこでも生きていける者が、かろうじて生き残った。私たちの祖先は弱かったけれど、いや弱かったがために、類人猿にはない特徴を進化させて、生き残った。その末裔(まつえい)が、私たちホモ・サピエンスだ。この本は、そんな私たちの祖先の物語である。 (後略)> 目次から内容を概観してみる。 はじめに 序章 私たちは本当に特別な存在なのか 人間は特別な存在か/人類は何種もいた/みんな絶滅してしまった 第1部 人類進化の謎に迫る 第1章 欠点だらけの進化 人類とチンパンジー類の違い/直立二足歩行をしていた類人猿がいた?/イースト・サイド・ストーリーは間違い/直立二足歩行の最大の欠点/難産と直立二足歩行 第2章 初期人類たちは何を語るか 4種の初期人類/四足歩行と直立二足歩行のあいだ/学名に込められた先人の思い/アルディピテクス・ラミダスの特徴/初期人類はどこに住んでいたか 第3章 人類は平和な生物 チンパンジーにあって人類にないもの/ウマに噛まれても死なない/大型類人猿の犬歯と社会形態/人類の犬歯はなぜ小さくなったか 第4章 森林から追い出されてどう生き延びたか 草原より森林の方が暮らしやすい/人類は森林から追い出された/仮説はスジが通っているだけではダメ/進化する場合としない場合/他の霊長類にはない特徴 第5章 こうして人類は誕生した 私たちの祖先はチンパンジーではない/人類の祖先も道具を使っていた/ニホンザルは食物を分け合わない/ナックル歩行の複雑な事情/同じ進化は別々に起こり得る 第2部 絶滅していった人類たち 第6章 食べられても産めばいい アウストラロピテクス対ピルトダウン人/原始形質と派生形質/直立二足歩行が上手くなる/重視すべきは下半身/どうやって身を守ったのか/なぜヒトはたくさん子供を産めるのか/レイ・ブラッドベリのびっくり箱/華奢型猿人と頑丈型猿人/頑丈型猿人は不味いものも食べた/アウストラロピテクスが絶滅させた? 第7章 人類に起きた奇跡とは オルドワンとアシューリアン/石器を最初に作った人類/混乱する初期ホモ属の分類/なぜライオンは人類より脳が大きくないのか/直立二足歩行の隠れていた利点/ウエストが細くて暇な人類の誕生/人類から体毛がなくなった理由/なぜ頑丈型猿人は絶滅したのか 第8章 ホモ属は仕方なく世界に広がった アフリカから出た人類/サーベルタイガーに襲われたドマニシ原人/地球は意外と狭い/貧しいものが生き残った/仕方なくアフリカから出ていった?/ホモ・エレクトゥスの地域集団 第9章 なぜ脳は大きくなり続けたのか 面倒なアシュール石器をなぜ作ったのか/火の使用が始まった/私たちにつながる人類の出現/世界一になったのは最近/脳が大きくなったもう1つの理由/恐竜が知的生命体に進化した可能性 第3部 ホモ・サピエンスはどこに行くのか 第10章 ネアンデルタール人の繁栄 もっとも有名な化石人類/ヨーロッパで唯一の人類となる/ネアンデルタール人が暮らした環境 第11章 ホモ・サピエンスの出現 30万年前の化石はホモ・サピエンスか/ミトコンドリア・イブはヒトの起源ではない/ミトコンドリア・イブはいつの時代にもいる 第12章 認知能力に差はあったのか 形が変われば機能も変わる/ネアンデルタール人の文化/象徴化行動の証拠/食人と埋葬/ネアンデルタール人は話せたのか 第13章 ネアンデルタール人との別れ 2種の人類の共存期間/ホモ・サピエンスの方が頭がよかった?/創造性だけでは文化は広がらない/燃費が悪いネアンデルタール人/8勝7敗でいい/脳は大きければよいのか 第14章 最近まで生きていた人類 フローレス島の小さな人類/なぜ小さくなったのか/ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの交雑/ホモ・サピエンスの高度な適応力の謎 終章 人類最後の1種 人類の血塗られた歴史/ホモ・サピエンスだけが生き残った おわりに およそ1500万年前に生きていた大型類人猿の共通祖先から、まずオランウータンの系統が分かれ、次にゴリラの系統が分かれた。 さらにそのあと約700万年前に、チンパンジーとヒトの系統が分かれた。 チンパンジー類には、今までに多くの種がいたと考えられるが、現在生きているチンパンジーとボノボが、チンパンジー類の最後に残った2種ということになる。 一方、現在わかっている最古の化石人類は、約700万年前のサヘラントロプス・チャデンシスだが、これも含めて化石人類は少なくとも25種ぐらい見つかっている。 これらの化石人類と現生のヒトをまとめて人類という。 現在生きているわれわれヒトは、25種いた人類の最後の種ホモ・サピエンスということである。 ヒトといちばん近縁な生物はチンパンジーとボノボであるが、この両者の間には大きな溝が横たわっている。 それは、かつてはヒトにとってチンパンジーより近縁な生物(人類)が25種もいたのに、それらがすべて絶滅したから、いくら近縁とはいえ700万年前に系統が分かれ、それぞれが別個に進化したヒトとチンパンジー(やボノボ)を比較すると大きく違うのである。 それに、ヒトというのは生物としてとても変わった特徴をもっているので、圧倒的に特別なのである。 たとえば、脳の大きさを見ると、ヒトが約1350ccなのに対して、チンパンジーは約390ccで、ヒトの脳はチンパンジーの脳より3倍以上も大きい。 それにヒトは、直立二足歩行するし、犬歯は小さいし、体毛がないし、何でもよく食べる雑食性だし、走るのは遅いが長く走れるし、言葉や道具を使うし、一夫一婦制かそれに近い社会に生活するし、決まった交尾季がなく(年中発情期で(^^ゞ)毎年のように子どもを産めるし……等々、チンパンジーと比べても他の生物と比べても、変わった特徴をもつ特別な生き物なのである。 そんなヒトという生物の変わった特徴がなぜ進化したのか? そして人類のなかで、なぜホモ・サピエンスというヒトだけが生き残ったのか? この2つの疑問は密接に絡み合っているのだが、それをわかりやすく解説しているのが、この本なのである。 人間ていったい何なのだろう? と思っている方に是非読んでいただきたい本である(^^ゞ。 <今日のお薦め本> 『絶滅の人類史 ― なぜ「私たち」が生き延びたのか』 更科 功 著、NHK出版新書、886円、18.02.20. 第3刷発行(18.01.10. 第1刷発行) 著者について、奥付から紹介しておきます。 <1961年、東京都生まれ。 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。 現東京大学総合研究博物館研究事業協力者。 専門は分子古生物学で、主なテーマは「動物の骨格の進化」 著書に『化石の分子生物学』(講談社現代新書、講談社科学出版賞受賞)、『爆発的進化論』(新潮新書)など。> <後記>われわれホモ・サピエンスが現れたのは約30万年前で、今まで生き延びています。 同時代に生きていた人類としては、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)や、ホモ・フロレシエンシス、ホモ・ハイデルベルゲンシス、ホモ・エレクトゥスなどがいましたが、生存期間の長短はあれど、みな死に絶えています。 それ以前にも、アウストラロピテクス属の人類が何種類かいましたが、これも滅びています。 ホモ・サピエンスだけが生き延びているのには、とても興味深いいろんな要因があるようです。これから先、滅びる可能性も十分考えられますけどね(^^)/。 この前記事にした『世界で一番美しいサルの図鑑』』で、パタスモンキーを紹介したのは、森林から抜け出し生きてきたヒトと似通っていると思ってでした。 パタスモンキーが将来ヒトになるわけはありませんが、そんな類人猿を研究することが、人間とは何か? に通じるんでしょうね。 バカ親父が若かったら、サルを研究したいと思ったのでした(^^ゞ。 今日(17日)は早朝から、カミさんは卒業式の着付けの仕事で出かけました。 7時半ころに散歩に出ました。 昨日と打って変わって快晴で、陽射しが強い。 公園に行き、原っぱに上っていきました。 左がレンギョウ、右がユキヤナギです。 原っぱから公園を回っていきました。 SORAの影が濃い(^^)/。 原っぱに戻ってウロウロしていきました。 コブシが咲き始めました(^^ゞ。 ドバトがたくさん何かをついばんでいます。 桜並木を下りて帰ってきました。 カミさんは9時半ころに帰ってきました。 日中はテレビを観たり本を読んでいました。 夕方の散歩は5時ちょっと過ぎに出ました。晴れているので富士山を見にいくことにします。 東京湾の方を眺めると、房総半島もよく見えました。 西から南にかけての低空に雲の帯が延びていました。富士山は見えないかもしれません。 と思っていましたが、かすかに見えました(^^)/。わかるでしょうか。 落日近くの夕日がだいぶ富士山に近づいています。丹沢山塊もかすかに見えました。 富士山の下は雲に隠れていました。 いつもの公園に行くことにしました。 原っぱに行くと、夕日はすでに沈んでいました。 ベンチでマッタリすることにしました。 SORAはベンチを下りて、白ラブが遊んでいるのを見ていました。 馴染みのワンコが来たので、ちょっと遊んでから帰ることにしました。 明日(18日)は薄雲が広がるものの、陽射しが届いて日中は春本番の陽気になるようです。朝は寒そうです。 |
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いつもご訪問くださってありがとうございます。とても励みになっています。 |
pupu 2018/03/18 15:25 |
☆ pupuさん、この本を手に入れましたか(^^ゞ。 |
遊哉 2018/03/18 19:45 |
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