ツボカビ症

その中で、カエルなどの両生類に感染し、絶滅も招くツボカビについても少し書いた。このツボカビ(症)がとうとう日本にも上陸したと、昨日の新聞やテレビで報道されていた。
昨日の朝日新聞の記事から、その概要を記してみる。
ツボカビ症が見つかったのは、東京都内で個人がペットとして飼っていた中南米産のカエルである。昨年の11~12月に、11種35匹中14匹が次々と死んだという。
12月25日に麻布大学での検査で、ツボカビ症と確認された。10月末に購入したカエルから感染した可能性が高いらしい。今年に入って、関東地方のペット小売店でも、中南米産のカエルが陽性とわかった。アジアでは初の確認である。
ツボカビ症は、90年代にオーストラリアでカエル激減を招いた病気として、98年にはじめて報告された。以後、米国や中南米、アフリカ、欧州などで相次いで確認された。
人間などには感染しないが、ツボカビ症でカエルが減れば、カエルの食べる昆虫が増えて農業被害を招いたり、カエルを捕食するヘビや鳥類の減少で生態系のバランスが崩れるなど、深刻な影響を及ぼす恐れがある。
中米パナマでは、両生類48種が感染し、個体数が9割減ったという惨状を呈しているという。95年に侵入し年平均28kmの速さで西から東に広がり、2か月で野生のカエルが絶滅した地域もあり、二十数種類のカエルを動物園などで保護する「両生類箱船計画」が始まった、ということである。
国際自然保護連合(IUCN)の保護増殖専門家グループは昨年の夏に、両生類の絶滅対策を最優先課題とした。世界の両生類5743種のうち、120種が80年以降に絶滅し、1856種(32%)に絶滅の恐れがあるという。危機にある種の割合は、鳥類や哺乳類より高いのだ。
ツボカビは水の中で数週間生き続け、野外へ広がってしまうと根絶は不可能で、渓流が多い日本では繁殖しやすいとも指摘されている。また、ペット飼育で感染が広がる可能性も高い。
ペット輸入大国の日本は、ツボカビ症の侵入は必至とみられていた。だが、カエルなどには検疫がなく、希少動物の取引を禁じるワシントン条約の対象種以外は、輸入チェックもない。動物愛護管理法にも該当せず、感染症予防法も対象外である。
日本野生動物医学会、日本爬虫両棲類学会、世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどは、今日13日に検疫強化や販売・流通の監視などを訴える緊急事態宣言を共同で出す予定である。
この宣言では、「死んだカエルを飼育していた水を野外に排水することは禁物」と訴え、輸入・販売業者にも「カエルが感染していないことを確認してほしい」と呼びかけるという。
宇根有美・麻布大学助教授(獣医学)によれば、「少しでも異常を感じたら、獣医師に相談してほしい。消毒法や治療法があり、人にはうつらない。屋外に放すことだけはしないで」ということである。
ツボカビ症の特徴と簡単な診断テストの例は次のとおりである。
○ カエル・ツボカビ症の特徴
・ 無気力に足を動かす(特に後肢)
・ 夜行性または木で暮らすカエルが一日中座っている
・ 触ってもわずかに動くか、まったく動かない
○ 診断テストの例
① 指で触ってもまばたきをしない
② ひっくり返しても、元に戻らない
③ 口をつまんでも反応しない
オーストラリアでは、検疫を強化し、国を挙げて対策に取り組んでいるという。日本でも生物多様性国家戦略を担当する環境省などを中心に、対策を早急に立てる必要があるようだ。
<後記>ツボカビ症がペットのカエルや両生類だけにとどまればいいですが、野生のカエルなどに感染したら、生態系を崩す恐ろしいことになります。なんとか押しとどめてほしいものです。
*獣医師らの組織「爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会」では、電子メール(v-path@azabu-u.ac.jp)で、ツボカビ症に関する相談を受け付ける、ということです。
<追記>07.01.14
ツボカビ症について、世界自然保護基金ジャパンと麻布大学がホームページに、詳しい解説を公開しました。赤字をクリックしてご覧ください。
*07.01.17
日本獣医病理学会/日本獣医病理学専門家協会のHPにも、詳しい解説があります。
*07.02.06
侵入生物データベースにも、緊急情報として「カエルツボカビ症関連情報」が載っています。
*07.06.12
「ツボカビ、国内野生種も ― ウシガエルから確認 ― 」(朝日新聞6/11夕刊)より
カエルツボカビ症が、国内で野生のウシガエルなどにも感染していることがわかった。国内にいる野生のカエルで感染が確認されたのは初めて。仮にツボカビ症でカエルが減れば、カエルを捕食するヘビや鳥類の減少で生態系のバランスの崩壊につながる恐れもある。環境省は今夏から全国調査を始めるという。
宇根有美・麻布大准教授らの研究グループは、今回、国内にいる132匹を対象に予備調査をしたところ、イモリやアマガエルなど42匹でカエル・ツボカビ症に感染していることがわかった。うち38匹は売買目的で捕獲されるなどして人間の手を経ているが、残る4匹はすべて、人間の手を経ていない野生のウシガエルだったという。ウシガエルは日本在来のカエルではないが、日本で野生化している。宇根さんによると、海外の例では、ウシガエルは感染しても死なないとされる。しかし、生存したまま感染の発見が遅れた場合は、感染が拡大する恐れもある。
宇根さんは「予備調査なので、どれくらい感染が広がっているか正確な状況を把握しているわけではない。感染していたのは純粋な国内種ではないウシガエルだったが、今後、純国産種への感染を防ぐ対策を早急に考えなければならない」と話している。
この情報は「カエルツボカビフォーラム2007」(6/10・WWF)で発表されたものです。
この記事へのコメント
鯉ヘルペス、鳥インフルエンザ、ノロウイルス、そしてツボカビ…嫌だなぁ。
野生のカエルが感染したら絶滅するかもしれません。なんとか食い止めなきゃね。
おかしな病気がいっぱい出てくるよね。鳥インフルエンザも人間が罹るようになっちゃったからねえ。薬にもすぐ耐性をもっちゃうからコワいね。嫌だねえ。
このごろ、今まで知らなかった病気が増えていますね。SARSもそうでした。今は鳥インフルエンザで騒動が起きていますが、ツボカビ症っていうのも、日本にはなかったのでしょ。なんだか、ヒタヒタと色々なものが忍び寄ってくる恐怖を感じます。人間が地球を征服しているという驕りに、今、復讐が始まっているように感じるこのごろです。
世界の人口はまだ当分増えるから、いままで人が行かなかったところにも人が行くようになって、新しい病原菌が出てくる可能性は大です。自然を征服できると思っている人間の驕りへの復讐かもしれませんね。自然の一部、生態系の一部である人が、それを忘れるとしっぺ返しが来るでしょう。昆虫だけが生き残るってことも、大いにありうることですね。どうしたらいいんだろう(^^ゞ。
たかがカエルと思ってたけど、そうなの?こんなに深刻なの?大体カビって聞いただけで気持ち悪いけど、カエルってのも好きじゃないんだけど。でも、じゃあどうすればいいの?ペットにすることは先ず、無いけど・・・。遊哉さん、何とかしてよぅ。
もしこのツボカビが日本の野生のカエルや両生類が感染して死んでいくようになったら、生態系にとても大きなダメージを与えることになるんですね。検疫を強化して入ってこないようにするとともに、今水族館やペットとして飼育しているカエルやサンショウウオなどが感染しないように、感染したらしっかりと処置して、外にこのカビを出さないようにすることが対策の基本だと思います。バカ親父は、こんなブログを書くしかない(^^ゞ。
特別措置法とか作って両生類の検疫と輸入制限したりしないのかな
蛙がいなくなると昆虫だらけになって西ナイル熱やマラリアや新しい病気が蔓延しそうですね
温暖化の影響もあって、マラリアなどが北上しているようですね。日本でも蔓延する怖れは大だと思います。そのためにも、日本の野生のカエルや両生類を守る必要があると思います。