『ローンガール・ハードボイルド』
〔室内に射し込んだ朝日の光〕
カナダ在住の女性作家コートニー・サマーズの、ひとりの少女が理不尽な状況に抗い、自分だけでなく他の少女たちの尊厳を守るために立ち上がる物語『ローンガール・ハードボイルド』を紹介する。
構成がちょっと変わっていて、失踪した少女セイディ・リラ・ハンターの行動と、その足跡を追うラジオのプロデューサーであるウェスト・マクレイの語りやその放送内容という、二つの話が併行して描かれていく。
プロローグを紹介しようと思うのだが……
物語はマクレイの方の放送内容から始まる。
最初は、彼の上司ダニー・ギルクライストの新しい企画〈ザ・ガールズ〉開始の挨拶なので、そのあとから紹介してみる。
< ザ・ガールズ エピソード1
(〈ザ・ガールズ〉のテーマ曲)
ウェスト・マクレイ:コロラド・クリークへようこそ。人口は八百です。
グーグルで画像検索をしてもらえると、メインストリートを見ることができます。メインストリートはこの小さな世界の心臓部ですが、ほとんど鼓動しておらず、大部分の建物が空き家になっているか、板を打ちつけてあるのが目につくでしょう。コールド・クリークで最も幸運な――有給の――仕事は、地元の食料品店やガソリンスタンドでの勤務と、商業地での生活必需品の販売です。ほかの人々は、自分のため、子供のために、一つか二つ離れた町まで幸運を探しにいくしかありません。最寄りの学校はパークデールにあり、車で四十分かかります。パークデールの学校では、ほかの三つの町からも生徒を受けいれています。
(後略)>
失踪した19歳の少女セイディ・リラ・ハンターが生活していたコロラド州コールド・クリークの描写から、放送が始まっている。
一方のセイディの話は、次のように始まる。
< セイディ
車はクレイグズリストで探す。
車種は問題じゃない、と思う。だがちゃんと動く以上のことを求めるなら、箱型で、ミッドナイトブラックがいい。ほかの車と並んだときに存在が消えるような色だ。後部座席には眠るのに充分な広さがほしい。これは大急ぎで書かれた広告の大海のなかの大急ぎで書かれた広告の一滴だったが、スペルミスがたくさんあったので、とくに必死な感じがした。〝付値(つけね)をおねがいします〟が、あたしにとっては決定打だった。それは〝いますぐお金が必要〟という意味で、つまり何かトラブルに巻きこまれているか、おなかを空(す)かせているか、クスリを買わずにいられないということだ。だからこっちが有利になる。これに決める以外、何ができる?
(後略)>
失踪したセイディは、まず車を調達することにしたようだ。
意志が強く、なかなか頭のいい目先の利く少女のようである。
ニューヨークのラジオの人気パーソナリティであるウェスト・マクレイに、コロラドの田舎町コールド・クリークで暮らすメイ・ベス・フォスターという60代の女性から「助けてほしい」という電話がかかった。
彼女が祖母代わりに見守ってきた19歳の少女セイディが、貸していたトレーラーハウスを出ていったまま帰ってこない。ついては、警察は当てにならないので行方探しに協力してほしい、と言うのである。
マクレイは、少女の行方不明など家出であることが多く珍しくもないので、最初はラジオの特集として取り上げるのに乗り気ではなかった。
しかし上司ダニー・ギルクライストの強い要請があり、その失踪を調べることにした。
するとすぐに、セイディが家を出る前、彼女の13歳で最愛の妹マティ・サザンが無残に殺害されるという事件があったことがわかった。
セイディの失踪とマティの殺害事件には、何か関係があるのだろうか?
マクレイはセイディの足跡を追いながら、この番組にしだいに真剣に取り組んでいく。
実は、姉妹の母親クレア・サザンは行方をくらましているのだが、マティを殺害したのは彼女の元恋人キースで、どうもセイディはその男を追っているらしいと、しだいにわかってくる。
それに、姉妹はキースから虐待を受け、その虐待は今でも他の少女たちに行われているようだ、ということもわかってくる。
セイディの復讐行とマクレイの調査が交わるとき、真実が明らかになる。
はたして、セイディは復讐を果たすことができたのだろうか?
思わずセイディを応援したくなるのである(^^ゞ。
<今日のお薦め本>
『ローンガール・ハードボイルド SADIE』 コートニー・サマーズ 著、高山真由美 訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、1408円、20.11.25. 発行
著者について、カバー裏から紹介しておきます。
<2008年、22歳のとき、Cracked Up to Be でデビュー。第8作である本作(原題 Sadie)は2018年に刊行され、《ニューヨーク・タイムズ》ベストセラーとなったほか、エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀YA部門をはじめ6つの文学賞を受賞、《カーカス》誌や《パブリッシャーズウィークリー》誌など30以上のメディアでベストブックに選出されている。>

ローンガール・ハードボイルド (ハヤカワ・ミステリ文庫 サ 9-1) - コートニー・サマーズ, 高山真由美
<後記>この本の帯の惹句に、担当編集者が次のようなことを書いています。
<少女が理不尽な状況に抗い、自分や他の誰かの尊厳を守るために立ち上がる物語。ハードボイルドの潮流の最先端に立っているのは、タフな探偵やクールな悪党ではなく、しみったれた世界で少しでもマシに生きてやろうと銃やナイフや拳を構える、燃える眼の少女たちだ。『音もなく少女は』『拳銃使いの娘』『ブラックバード』……続々と生み出されるそれらの物語群を、何と呼ぼう。私はこう名付けたい。
ローンガール・ハードボイルド、と。>
ということで、原題は “SADIE(セイディ)”ですが、こんな邦題がつけられたようです。
このほかにも、以前に紹介した『沼の王の娘』や『パーキングエリア』も、このジャンルに入ると思います。
最近は本当に少女たちのハードボイルド的な存在感のある物語が多いのですが、本書はタフさではそれほどでもないものの、詩的なラストもあり感動的で、とても強い印象が残りました。
実はセイディは吃音で、そんな状態で犯人を追う絶望的な探索が胸に響いてきます。
また、彼女を取り囲む家族や関係者たちの人物像が鮮やかに描き出されていて、やるせなく悲痛な感情が醸し出されてきます。
どうもバカ親父は、こんな少女たちのハードボイルド物語が大好きなようです(^^ゞ。
今日(18日)は雲が多めでしたが、陽射しも届いていました。
朝の気温は低めで寒かったものの、しだいに上がり9℃くらいになったようですが寒かったです(^^ゞ。
日中はテレビを観たり、この記事を書いていました。
夕方の散歩は4時過ぎに出ました。
西空の上空には青空が広がっていたものの、下には厚い雲がありました。
その上に光芒が出ています。
公園を斜めに上っていきました。
北東の空は青空が広がっています。
夕日はやっぱり雲に隠れて見えません。
SORAは草つき斜面に行き、そのままドンドン進んでいきました(^^ゞ。
原っぱに出ました。
黒雲は西の空にはありますが、南にはありません。
北の空の方も青空が広がっています。
テニスコート脇を回っていきました。
西空の下に小さな雲間ができました。
原っぱに戻ってベンチに向かいました。
ベンチに座りました。
SORAはあちこちのワンコを見ていました(^^ゞ。
見えないと思っていた夕日がチラッと見えました(^^ゞ。
夕日は沈んでいきました。
帰ることにしました。
夕日が沈んだところとその上が、だいぶ明るくなりました。
草つき斜面を下りて帰ってきました。
南西の空に、今日も細い月が見えました。
明日(19日)の横浜の南の端っこの天気は、よく晴れますが、北の風が吹いて寒く、夜になるにつれますます冷えてくるようです。
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